#698 レビュー 『第6回 モンゴルの拡大 東西の統一』-3か月でマスターする世界 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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第6回『第6回 モンゴル拡大 東西の統一 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』について

遊牧国家の歴史、中華王朝を組みわせた大帝国のモンゴルのその拡大方法と統治方法について

(NHKの『第6回 モンゴル拡大 東西の統一 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』のタイトル画面(C)NHK)

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  モンゴルの拡大 東西の統一

第6回も引き続き中国各王朝と遊牧国家の歴史についてで、ゲストも引き続きの京大の東洋史の古松崇志教授です。

 

今回はユーラシア大陸の東西を広く治めたモンゴル帝国のその拡大と統治についてです。

 

ナビゲーターの岡本隆司先生のよると今回のポイントは、以下の2点。

    

   ①空前の大帝国の実現の理由

   ②武力だけに頼らない驚きの戦略

 

モンゴルが、ユーラシア大陸の東西を統一するような大帝国をどうして創り上げることができたのかを、5つのポイントで見ていくものです。

<大帝国実現の5つのポイント>

  1. 強力な指導者
  2. 中央集権体制
  3. 情報戦に長けていた
  4. 適材適所の人材活用
  5. 相手の心をつかむ戦略

12世紀の状況です。西方世界も中東、東方世界も様々な国に分裂している状況です。

(NHKの『第6回 モンゴル拡大 東西の統一 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』12世紀のユーラシア大陸等の状況(C)NHK)

 

モンゴル帝国を生み出す。モンゴル族はその北側のモンゴル高原の遊牧民族です。この当時はこのモンゴル高原で諸部族が争い合っている状況でした。

(NHKの『第6回 モンゴル拡大 東西の統一 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』より(C)NHK)

 

●ポイント1:強力な指導者

(NHKの『第6回 モンゴル拡大 東西の統一 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』より即位したチンギス・カン(C)NHK)

テムジン(のちのチンギス・カン)は、父が死に、長く苦しい生活が続く中、勇猛で寛大な心で皆の心をつかみ、主君も倒して、1206年にチンギス・カン(※)として即位し、大モンゴル国を打ち立てます。

※当時の発音だと、ハーンではなく、カンの方が近いそうです。したがってチンギス・ハーンではなく、チンギス・カンとして表示されています。

 

このテムジンという優秀な指導者としての存在が大モンゴル帝国の出発として大きな存在という評価です。

 

●ポイント2:中央集権体制

チンギス・カンの統率の仕組みとして、10戸を一組として、それを10組で100戸隊を結成し、それを10隊用意して千戸集団を形成、千戸長には遊牧地を与え、その子弟らをチンギス・カンのもとで人材育成することで、チンギス・カンの指示が各千戸長、その下の10の百戸長、その下の10の十戸長に伝わる中央集権体制を敷いたことを要素として挙げています。

 

チンギス・カンはこの千戸集団を100近く従えていたということです。

 

この中央集権体制の武力を生かして、中国北部の金王朝の一部を切り取った後、草原地帯を西に向かって広がっていきます。

 

●ポイント3:情報戦に長けていた

西に向かう中、シルクロード交易を担っているウイグル商人が、その保護と商業権益を求め、大モンゴル国に近づき、チンギス・カンも資金と各地の情報を求めて彼らと手を結びます。

 

ウイグル商人は、交易の行く先々で、モンゴルの強さを宣伝したり、威嚇したりで大モンゴル国拡大に役立ちます。

(NHKの『第6回 モンゴル拡大 東西の統一 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』のチンギス・カンによる拡大(C)NHK)

 

古松崇志先生によると、人も土地も財産と考えたチンギス・カンは、征服地の社会の組織と宗教をそのまま温存し、ウイグル文字からモンゴル文字を生み出したように知識人や職人を大事にして、彼らからいろいろな知恵を教えてもらったとのことで、岡本隆司先生も、地域のメイン宗教はその地域にかなり広くいきわたっているものなので、こういったものを温存することの意味を説いておられました。

 

●ポイント4:適材適所の人材活用

世界遺産にもなっているオルホン渓谷は、モンゴル族だけに限らない様々な時代の有望民族の拠点になったところともいえるそうで、2代皇帝のオゴデイ・カン(チンギスの3男)がカラコルムを建設します。

 

モンゴル族の移動式住居ゲルもある中、多彩な人々を歓迎する工夫もなされている国際都市で、イスラム教のモスク、キリスト教の教会などが設置され、ジャムチという駅伝制度も整備され、一大交易地として栄えます。

 

このカラコルムは、中国の中原(農耕地域)の城郭都市をまねて、四角形の都市でした。

 

オゴデイ・カンは、政権中枢に、カラコルムのつくり方と同様に、財務官僚には交易商人として経済に明るいウイグル人やムスリムを登用するなど、多様な人材を政権中枢に登用して、遊牧地域と農耕地域の両方の支配を実現します。

(NHKの『第6回 モンゴル拡大 東西の統一 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』より(C)NHK)

 

●ポイント5:相手の心をつかむ戦略

西へは、草原を進み南ロシアに、東欧のハンガリーやポーランドまで拡大していく中、東では南宋の攻略に苦戦します。

草原地帯とは異なる気候や、中国では南船北馬という言葉がある通り、騎馬隊を用いにくい地理性などから苦戦します。

 

第6代皇帝クビライ・カン(元王朝初代)は、ここで思い切った行動をとります。それがこのポイントの相手の心をつかむ戦略として説明されます。

(NHKの『第6回 モンゴル拡大 東西の統一 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』のクビライの南宋攻め(C)NHK)

 

カラコルムから大都(今の北京)に移すことでした。

(NHKの『第6回 モンゴル拡大 東西の統一 - 3か月でマスターする世界史 - NHKK』の大元ウルス(C)NHK)

 

都も中国風、そして国号も中国古典「易経」に基づき”元”と制定することで、中華王朝としての装いを整え、中原・江南地域の心をつかもうとします。

 

ついに南宋を倒し、1279年モンゴル帝国が完成します。

(NHKの『第6回 モンゴル拡大 東西の統一 - 3か月でマスターする世界史 - NHKK』の1279年のモンゴル帝国完成(C)NHK)

 

古松崇志先生によると、遊牧国家のモンゴル国が、生態環境の異なる江南に踏み込み、支配したことは、遊牧国家として革新的と評価しています。

 

岡本隆司先生によると、カラコルムは遊牧地帯の都でしたが、この大都(のちの北京)は濃厚と遊牧の境界地帯に位置し、ここに遷都したことにより遊牧世界・農耕世界の両方を見ることができるようになったとの評価です。

(NHKの『第6回 モンゴル拡大 東西の統一 - 3か月でマスターする世界史 - NHKK』の大都の意味(C)NHK)

 

そのモンゴルですが、古松崇志先生によると、モンゴル族としての生活も彼らは大事にしたそうで、中華王朝風の都の大都の北の遊牧地帯に、上都というのを築き、季節で両方を行き来していたそうで、ユーラシア大陸東西にまたがる大帝国を支配すべき統治者としての存在と、自ら発祥の遊牧民族としてのスピリットの両方を大事にする民族なのではという思いがしました。

 

次回は、この遊牧世界と農耕世界を統一したモンゴルのその後の影響などが放送されるそうです。


 

ちなみにムックも発売されています。

 

 

 

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