#673 レビュー 『第2回 ローマもオリエント?』-3か月でマスターする世界史 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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4月から始まった『3か月でマスターする世界史 - NHK』の「第2回 ローマもオリエント? - 3か月でマスターする世界史 - NHK」についてのレビュー

中国史の岡本隆司先生と古代ローマ史の井上文則先生のローマがオリエントか否か議論が楽しむポイントの第2回

 

(NHKの『第2回 ローマもオリエント? - 3か月でマスターする世界史 - NHK』(C)NHK)

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  ローマはオリエント?

第2回もナビゲーターは中国史学の第一人者の岡本隆司先生で、ゲストとして古代ローマ史専攻の井上文則先生という体制です。

 

楽しむポイントは何と言っても、中国史の第一人者でアジアの視点から歴史を見るを掲げる岡本隆司先生が、ローマ帝国が東に広がったではなく、東の世界がローマに入って来たからローマもオリエントというかなり尖がった主張をするのを受けて、古代ローマ史専攻の井上文則先生が、少なくとも東ローマ帝国については、中国と同じく宦官制度があったことなどからオリエントと言えなくもないが、ローマはローマであるとお互いがその市長の根拠を示すところでした。

 

岡本隆司先生の主張はとんがりすぎていますが、これまでの欧米視点に偏り過ぎている歴史観を、もっとフラットに見るようになるには、あえて極に振り切るのもありなんでしょうね。

 

前753年建国されたローマ、着実に国土を広げてついに地中海統一を果たします。その統一を果たし、繁栄する上で大きかったのが、第1回に引き続きの”交易”です。

 

2世紀前半は、地中海世界にはローマ帝国、その東のペルシアの世界にはパルティア王国、アフガニスタンからインド北部にはクシャーナ朝、そして中国の後漢王朝と大国がつながるように存在し、それぞれがしっかりと統治を行うことで交易路シルクロードが機能する。ローマはこの交易に関税をかけ、その関税が国家予算の4割にも及ぶ莫大なもので、これで常備軍の軍備を賄うなどで繁栄します。

 

”交易”をカギにしているので、繁栄が崩れるのもこの交易路の崩壊という手中の流れになっています。2世紀末の中国では、疫病・干ばつ・洪水で社会が一気に不安定化し、184年の黄巾の乱で倒れてしまい、シルクロードの東の端が壊れます。

 

一方の西の端のローマでは、「アントニウスの疫病」といった疾病の大流行、あいつぐ戦争で疲弊していき、軍人皇帝時代へと不安定な時代に入ります。395年には東西ローマ帝国に分裂することになります。

 

交易で東西がつながり、交易の破綻で東西の大国が不安定化するという関連を伝えています。

 

ローマがオリエントという主張について、ローマのオリエントとの類似性を挙げています。

 一つ目は、国内に街道を張り巡らしたこと(第1回のアケメネス朝ペルシアの王の道)

 二つ目は、宗教や被征服民への寛容な政策(こちらもアケメネス朝ペルシア)

と、特に、寛容な政策に関しては、井上文則先生が、ヨーロッパの基礎となったギリシアとローマとの大きな違いとして、”市民権”を挙げていました。

 

ローマは、25年兵役を務めれば市民権をゲットできます。一方のギリシアのアテナイは民主政で有名ですが、市民権については、両親がアテナイ生まれでないといけないそうです。この部分は、ギリシア悲劇のエウリピデスの『イオーン』でも描かれていて、確かにそうだと思い出しました。

 

もともとローマは神話によると狼に育てられたロムルスとレムス兄弟が建国に際して外から人に集まってくれと集めて建国したことから、市民権に対する考え方がアテナイとは大きく異なっているんだということでここは面白い比較でした。

 

395年にローマは東西に分裂し、476年には西ローマ帝国がゲルマン人の大移動から滅びます。その理由としては、200年から500年あたりまで続く、夏の平均気温の下降で、寒冷、乾燥により、まずは東のフン人が移動し、圧迫されたゲルマン人が西ローマ帝国に流れ込んで、西ローマ帝国を崩壊させ、今日のイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペインの国家の源流となるようなものを建国していくことが説明されますが、私が学生の頃は、フン人ではなくフン族、ゲルマン人の大移動ではなく「ゲルマン民族大移動」なんて習った記憶がありますが、今は、”〇〇人”と表現するんだなと知りました。

 

同じころ、後漢から三国時代、晋を経て、北方民族が中華世界に流れ込み、南部の東晋と、北部の五胡十六国時代の分裂事態を迎えます。

 

シルクロードの東西端で、交易をカギにして繁栄と衰退が連動し、寒冷期の影響で人の大移動と国家の大分裂と同じような流れを描く歴史の連関性を知ることのできる第2回でした。

 

ちなみにムックも発売されています。

 

 

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