#671 レビュー 中宮定子の栄光と悲しみを描く『悲愁中宮』 安西篤子 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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大河ドラマ『光る君へ』で一条天皇と仲の良い姿を見せる明るい雰囲気の中宮定子、その定子を主人公にした『悲愁中宮【電子書籍】[ 安西篤子 ] 』を読みました。

道長がえぐい!藤氏長者と政権首班のため、謀略を駆使して中宮定子と一条天皇の中に疑いの芽を植えるなど中宮定子をいじめぬく

そんな悲しみと愁いに満ちた中宮定子の栄光と転落の生涯

 

  レビュー

大河ドラマ『光る君へ』では、ついにききょうが念願の内裏での女房勤めを果たすことができ、中宮定子清少納言と名付けられます。私などは定子と清少納言の二人で明るく知的な定子サロンというセットで考えてしまいます。恐らくそういう方もおおいのではないでしょうか。

 

本書の特徴は、その清少納言がほぼ現れないということです。

 

本作品は、中宮定子藤原道長、表の扇のかなめとして一条天皇と裏の扇のかなめとして女房の左京で展開します。

 

藤原道長は、兄、藤原道隆政権のもとでも、道隆も外戚になれていないことから、虎視眈々と藤氏本流になろうと画策して動きます。それが道長が愛人とした左京という女性で、間に生まれた女の子をしっかりと面倒を見るという条件を付けて、一条天皇に入内した道隆の娘の中宮定子のもとに女房として送り込み、スパイをさせます。

 

藤原道隆や伊周らは、自分の家を本流とするためには父兼家と同じく天皇と自ら娘の間に皇子が必要で、定子と一条天皇にそれを期待しますが、なかなかできないことに焦りを感じ、一条天皇にプレッシャーをかけることになります。そんな焦りの中で道隆が亡くなり、次の道兼が七日関白という異名の通り、疫病であっという間になくなってしまい、藤氏本流の争いが本格化することになります。

 

藤原道長は送り込んだ左京に、中宮定子の様子、一条天皇との関係、妊娠したのかしないのかなどいろいろ探らせ、そして猶子にしていた源成信を中宮定子とあたかも関係があるように一条天皇に誤解させる策をも実行させるという非情な謀略家ぶりを発揮し、その謀略家ぶりで、次の藤原氏本流争いをしていた故道隆の子の伊周・隆家兄弟を左遷に追い込み、藤氏本流と政権を勝ち取りとるとともに、娘の彰子を一条天皇に入内させます。

 

そのような状況でも、一条天皇の寵愛を受ける中宮定子がじゃまなので、とにかく嫌がらせをし続けます。

 

その嫌がらせを受ける中、中宮定子は父の道隆が死に、伊周・隆家らは左遷されと後ろ盾を失った中、一条天皇との関係でどうにかと思いながらも、その一条天皇とは女房左京によって打ち込まれた源成信との不倫関係ではという疑いで、仲睦まじいとはいえない関係が続く中で、出産の末に亡くなることになります。

 

そんな悲しみと愁いに満ち溢れた中宮定子にも幼き頃に相思相愛な人として設定されているのが藤原重家で、源成信は激しい恋の炎で熱く迫ろうとするのに対して、藤原重家も定子への恋心を持ちながらも遠慮がちにと対照的な男性となっています。

 

この二人は、源成信は“照る中将”、藤原重家は”光る少将”と並び称される次代を嘱望されるイケメンな二人で親友でした。二人は連れ立って出家してしまうという事件を起こします。はっきりとした理由は分からないようですが、朝廷では大事件でした。

 

本書では、この事件を、親友の二人がそれぞれに思いを寄せた中宮定子の死に対しての出家として描くのは、ずっと悲しみと愁いに満ち満ちていた中宮定子を作者として鎮魂したかったんだろうと思います。

 

〈書籍データ〉

『悲愁中宮』

著 者:安西 篤子

発 行:株式会社集英社

価 格:571円+税

 1987年8月25日 第1刷

 1999年10月12日 第6刷

 集英社文庫 あ74

 
 
 
 

 

 

 

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