4月から始まった『3か月でマスターする世界史 - NHK』の「第1回 古代文明のはじまり カギは“遊牧” - 3か月でマスターする世界史 - NHK」についてのレビュー
学生時代、大河の近くにある濃厚四大文明で習ったはずですが、今は中国は黄河・長江文明で五大文明なんだそうです・・・
(NHKの『第1回 古代文明のはじまり カギは“遊牧” - 3か月でマスターする世界史 - NHK』(C)NHK)
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農耕と遊牧、そこから交易が生まれ、文明が生まれ広がる
ナビゲーターに中国史学の第一人者の岡本隆司先生を据え、西洋側からではなく”アジアの視点で歴史をみる”で3か月全12回で世界史の大きな流れをマスターできる番組として始まったようです。
その第1回は、古代文明でカギは”遊牧”
ゲストには、古代ギリシア・ローマ史の井上文則先生
古代文明というと、私が学生時代は四大文明として
メソポタミア文明ーチグリス・ユーフラテス川
エジプト文明 ーナイル川
インダス文明 ーインダス川
黄河文明 ー黄河
と覚えましたが、今では、長江流域にも文明があったとして長江文明も入って、五代文明なんだそうです。自分の知識をアップデートできました。
アジアからという意味では、五大文明すべてが西洋世界ではないです。西洋から見た東方(オリエント)にあることが分かります。このメソポタミア文明はとても肥沃な場所で、その肥沃さを測るものとして”大麦の収穫倍率”というものがあります。これは大麦一粒まけば、収穫時にそこから何粒の大麦が獲れるのかというものです。
井上文則先生によると、この大麦収穫倍率が
メソポタミアは、1粒まいて30~80粒の30~80倍
ヨーロッパでは、1粒まいて2粒の2倍
と圧倒的です。
そんな肥沃な大地をもつメソポタミア文明、食料は豊富ですが、逆に足りないものが木材や金属で、そういったものを手に入れるには、遊牧民らとの交易が欠かせない。遊牧民がいて初めてメソポタミアであまり手に入らない木材・金属をゲットできることになります。
その一例として、イラク南部のウルで発掘された「牡山羊の像」で、これに使われている青いのはラピスラズリで、アフガニスタンの方から遊牧民が交易で運んできたものとして挙げられていました。古代ギリシアでも青の染料としてラピスラズリを同じくアフガニスタンから交易でもたらされている話もあり、ラピスラズリの歴史をたどるのも面白いのではと興味がわきました。
メソポタミア文明は、肥沃な大地から算出される食料に、遊牧民の交易と拠点となるところに人が集まるようになり、市ができ、富がさらに集積される中、それを守るための城壁ができるようになり、これがのちの世界各地の都市を城壁で囲う形になったということです(日本では城はむしろ軍事的に特化して整備されているので異なる)。
交易などで人の交流が進む中、文明地で様々なイノベーションが起こり、記録をつけるための文字の発明、多様な人たちが交わることからの明文化されたルール=法律の制定、鉄器武器の発明などが行われ、ローカルな支配から広域支配へと広がり、前7世紀後半にはオリエントを統一した世界帝国アッシリアが成立。ただアッシリアは被征服民に弾圧的政策を行ったので、地方で反乱が相次ぎ、すぐに倒れ、つづいて、ギリシア悲劇でも題材にされる前6世紀にアケメネス朝ペルシアが世界帝国として成立し、被征服者に対する寛容な政策と帝国中に「王の道」という幹線道路を敷きます。ここら辺の政策は、井上文則先生によるとのちに大帝国を築くローマもしっかりと学んでいただろうとのことです。
アケメネス朝ペルシアの都ペルセポリスにある巨大な石碑には、偉大なる王ダレイオス王の姿に加え、リディア人、スキタイ人、エチオピア人なども描かれています。
中国の方では、マンガ『キングダム』の春秋戦国時代から、ついには統一国家の秦が登場しますが、こちらも厳しい国内政策で短命に終わり、次の漢王朝が成立して秦を反面教師にして長期王朝を実現します。
中近東にしろ、東アジアにしろ、せっかく統一したのに強権的・弾圧的な政策をする帝国は短命で、そのあとを受けて再統一した帝国が前の帝国を反面教師にして長期政権を樹立するという共通点が良く分かりました。
食料生産のためには、水と肥沃な土地ということで、大河流域で文明が発生するのですが、それが成長して、文字や武器などのイノベーションを起こして、広域支配のような帝国になっていくには、遊牧民らとの交流・交易によってもたらされる人間関係やモノが重要であるということが分かる第1回でした。
ちなみにムックも発売されています。