小説を楽しみたくて『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法 (角川文庫) [ 三宅 香帆 ] 』を読んでみました。
話題の書評家の三宅香帆さんによる名作小説を面白く読む読み方を実際の小説を通して学ぶことのできる1冊
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あらすじとレビュー
歴史や読書に関するブログを書くようになると、書評を書いている方の事が気になるようになりました。昨年あたりからこの三宅香帆さんについてネットやラジオなどで知るようになり、若き書評家さんということでいろいろ注目されている方のようなので一度読んでみようと思い、手に取ったのが本書です。
歴史の本は好きで、小学生の頃からいろいろ読んできましたが、小説はそれほど読んでおらず、作家と作品は、受験での歴史の知識や就職活動で新聞社を受験したことなどから暗記物的に覚える程度でしたが。そんな中、いまさらながらですが小説を楽しみたいと思い、その指針として三宅香帆さん流の読み方を学びました。
本書は、タイトルの通り洋の東西を問わず、小説を読む方ならほぼ知っているといわれるビッグネームな作家の名作小説をもとに、どのように楽しむのかという心構えやテクニックなどが説かれています。実際の作品で展開してくれるので実践的に分かるのがありがたいところです。
まず、印象に残ったのが、「小説の読み方基礎講座」の1.ぶっちゃけ、なんで小説って分かりづらいんだろう?にて展開されていたことです。自己啓発本・ビジネス書・実用書などは、基本的にはタイトルから中身が分かり、その中身が自分にとって悩んでいることに明確な回答を与えてくれたり、知りたいことを知ることができるものですが、小説は、タイトルから中身が分かるとは限らず、むしろ分からないことが多く、中身もズバッと回答を与えるものではなく、読者自身の解釈に委ねられているというところでした。
回答が欲しい、知りたいことを知るというのが自分の読書スタイルだったからこそ、小説のように必ずしも明確な答えがあるものではないものを読んでこなかったんだなと腑に落ちました。
名作小説については、あのドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』から、文豪夏目漱石の『吾輩は猫である』、大河ドラマ『光る君へ』の主人公紫式部の『源氏物語』や大変話題となった劉慈欣の『三体』や綿矢りさ『亜美ちゃんは美人』に、太宰、龍之介、ヘミングウェイ、カフカなど幅広く取り上げられ、それぞれの作品で”読む技術”やコツを示してくれます。
たとえば、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』のような難解で有名な小説は、まずは「あらすじを読み」「登場人物をざっと把握しておくこと」
海外小説作品は名作小説は訳者も複数いるので、大きい本やか図書館で、それぞれの1ページ目を読み比べて、自分にとって一番読みやすい翻訳で読むこと
三島由紀夫の『金閣寺』なら、なぜそのタイトルなのかと問いかけ、そのタイトルに重要なモチーフを見つけたら、そのモチーフを自分の身近なものに置き換えられないか考えること
J・D・サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』なら、「多重人格になってみること」やその小説の年齢を考えて、その年齢の自分になって読んでみること
L・M・オルコットの『若草物語』なら、”違和感”を大事にして、作者がなぜそれを書いたのかを考え、納得すること
など、三宅香帆さんの心の声も交えながら展開してくれるので、”小説ってこんな方法やあんな方法で楽しめるんだ!”っていうのが分かる1冊でした。
〈書籍データ〉
『「(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』
著 者:三宅 香帆
発 行:株式会社KADOKAWA
価 格:800円+税
み59-1