『ホメーロスの オデュッセイア物語(上) (岩波少年文庫)』ホメロスの『イリアス』や『オデュッセイア』の大筋を理解するためにまずは児童書で読むその2です。
中学生向けで平易で、分かりやすく編集されているので、『オデュッセイア』の大筋理解にとても役立つ1冊
ホメーロスの オデュッセイア物語 上 (岩波少年文庫 611) [ バーバラ・レオニ・ピカード ]
あらすじとレビュー
ホメロスの『イリアス』は先に岩波文庫で読んでから、岩波少年文庫を読みましたが、先に大筋の理解をした方がいいだろうと思い、『オデュッセイア』については先に岩波少年文庫の本書から読むことにしました。
全体については知りませんでしたが、断片的にはいろんな部分を目にしていたんだなというのが一番の感想です。一つ目の巨人のキュクロプス人のところで部下たちが食べられてしまう中で、機転を利かせてその目を潰して、キュクロプスの大きな羊の腹の下につかまって逃げ出したことや、航海中のセイレーンの歌について部下には聞かせないように耳を蝋でふさがせて、自分船のマストに縛り付けさせて、聴いても魅了されてしまわないようにしながらもどうにか聴こうとする話などはこの『オデュッセイア』だったんだと驚きました。
話は、10年に及んだトロイア戦争で勝利したギリシア軍、その中で智謀に優れた英雄オデュッセウスが自身が王であるイタケー島に戻るための苦難の10年間を描いたものです。その苦難の原因となるのが、一つ目巨人のポリュペーモスの眼を潰して逃亡したことでした。彼は海神のポセイドンの息子で、彼はオデュッセウスらを恨んで父に彼らを苦しめることを求め、父のポセイドンがその通りに動くことで10年の漂泊の旅が続くことになります。
上巻は、その10年の大半のオデュッセウスの苦難の旅の数々と、イタケー島でトロイア戦争の10年+帰国漂泊の10年で状況が大きく変わった王家の状況が描かれています。イタケー島ではトロイア戦争で勝利し、アガメムノンやメネラオスらがギリシアのそれぞれの国に帰国しているにもかかわらず、オデュッセウスが帰国しないので、彼の妻のペーネロペイアに各地から求婚者が殺到し、彼らがその館でオデュッセウスの財産を好き放題に飲み食いして過ごします。そんな中でオデュッセウスが残していった赤子だったテーレマコスは20歳の青年に成長し、彼らの行いに大いに不満を持ちながらも父のオデュッセウスが帰ってこないことに無事なのか、死んでいるのかと気をもんでいる状態でした。
ここで女神アテナが現れて、テーレマコスに父の情報をもとめてイタケー島からピュロスの老王ネストールやスパルタの王メネラオスのもとにいくことを求められ旅立ちます。
一方のオデュッセウスはどうにか漂泊を続けるも、ついにイタケー島まで送り届けてもらおうことになりました。
この父子がどう動いていくのかが、次の下巻となります。
〈書籍データ〉
『ホメーロスのオデュッセイア物語(上)』
著 者:バーバラ・レオニ・ピカード
訳 者:高杉一郎
発 行:株式会社岩波書店
価 格:720円+税
2014年2月14日 第1刷発行
岩波少年文庫 611
図書館で借りてきた本のデータです。