『ホメロス イリアス 上 (岩波文庫) 』 読書目標”とにかく読了 ギリシア悲劇”で、ギリシア悲劇を楽しもうとすると、ホメロスの作品を読まねばということで読みました。
すでにトロイア戦争で戦闘中の最中から始まる。ギリシア側の英雄アキレウスがギリシア総大将アガメムノンともめて戦いをやめてしまうその不在の間のギリシア側の苦戦を描く
レビュー
受験の世界史の知識として、ギリシアの叙事詩といえば、ホメロスで、その作品と言えば『イリアス』と『オデュッセイア』は知っていましたが、知っているのはそれだけでした。
ギリシア悲劇を読むうちに、ギリシア神話を読む必要ができ、そこからさらにホメロスを読まなければという流れでまず読んだのが本書です。
トロイア戦争を題材にしていることは知っていましたが、トロイア戦争の原因などから始まって、その終戦までが描かれるのではと思っていましたが、その推測は外れていました。すでにトロイア戦争の末期の激戦の中から始まりました。
本書の上巻は、ギリシア側の英雄アキレウス(あのアキレス腱)と総大将アガメムノンとのいさかいから始まり、アガメムノンから自分が得た褒美の美女を奪われて、恥をかかされたアキレウスがその怒りから前線を離脱して、母である海の女神テティスにこの屈辱を晴らしてほしいと願います。
女神テティスは、オリュンポスの主神ゼウスに懇願して、アキレウスに屈辱を与えたアガメムノン率いるギリシア軍を困らせることを依頼します。ゼウスとしては女神ヘラがギリシア側を応援していることから渋りますが、結局は応じてここからギリシア軍の苦戦が始まります。
英雄アキレウスが戦列にいる間は、ギリシア軍が優勢に戦いを進めていましたが、そのアキレウスが戦列を離れてしまい、またゼウスが女神テティスの願いを入れて、トロイア軍に力を貸したことから、トロイアの王子ヘクトルが率いるトロイア軍が大攻勢に入り、一気にギリシアをトロイアの城壁近くから、ギリシア軍が船を停泊させているエリアまで攻め入ります。
苦戦が続くギリシア側では、アガメムノンに対してアキレウスから奪った美女を返すとともに、様々な贈り物をして関係修復を図り、英雄アキレウスを戦列復帰させてトロイア軍に攻勢を図ろうとし、アガメムノンもそれを飲みますが、アキレウスの怒りは収まらないままに戦いが続き続け、このままどうなるのかというので上巻が終わります。
本書より、トロイア戦争に参戦したギリシア部隊の分布
この分布図にあるとおり、ギリシア側は全土の様々な地域から、アガメムノンに率いられてトロイア戦争に参戦しています。そして作品でもとにかく、どこの出身の誰を父とか、祖父、そして父・・・というようにどの英雄たちもそのつながりの中で呼ばれる。or 自らを呼びます。ホメロスの時代は口承だったから、それでもしかしたら音としてはいいのかもしれません、読む方としては、確かにそうなんだ!っていうことも(たとえばヘラクレスの子孫とか)ありますが、混乱しそうになる部分もあります。
口承ということなので、結構同じ表現が何度も決まり文句的だったり、枕詞的に使われたりしています。例えば、女神ヘラは「牛眼の」というのがつけられます。
口承というところから、覚えるためにはそういった決まり文句的なものや枕詞的なものというのが役立つということが分かりました。
〈書籍データ〉
『ホメロス イリアス 上』
著 者:ホメロス
訳 者:松平千秋
発 行:株式会社岩波書店
価 格:760円+税
1992年9月16日 第1刷発行
1999年7月5日 第14刷発行
図書館で借りてきた本のデータです。