#597 レビュー『歴史群像2024年2月号』 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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毎号楽しみな歴史雑誌『歴史群像 2024年2月号[雑誌]』についてのレビュー

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  レビュー

今号は、2023年(昨年)10月よりイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が激化する中で、イスラエルとアラブ諸国との第1次~第4次中東戦争での空軍の戦いがメイン特集となっています。

 

復員輸送に懸けた青春

一番印象に残ったのは、毎号展開される太平洋戦争での生き残られた方のオーラルヒストリーです。大体は一人に焦点が当たるのですが、今回は複数の方が登場するものでした。

 

当時19~20歳で終戦1か月前に少尉に任官した”最後の海軍士官”らが、終戦後の海外にいた軍人、軍属、一般邦人ら約660万人の日本本土への復員に取り組んだ話です。

 

満州の開拓団の人たちを迎えに葫蘆港に着くと、そこに逃げてきた女性たちが暴行を警戒して男装のザンギリ頭にしていた姿ややつれた顔にぼろぼろの服といった姿や、祖父母の代から海外にあり、帰国しても身寄りがなくて呆然と立ち尽くす姿を見て、敗戦の屈辱や辛さを思い知らされる経験なども描かれています。

 

そんな中でも復員船の艦内で出産というめでたいこともあったそうで、1946(昭和21)年、海防艦「福江」で男児と女児が生まれ、「福男」「福江」と名付けられました。のちに乗組員らの「福江会」で懐かしむ声が高まり新聞に投書すると、青木勝記者がそれを大きく取り上げたところ、二人が見つかり1990(平成2)年に、みなで再会を果たすことができたそうです。すばらしいエピソードで、思わず涙が出ました。

 

彼らなどの頑張りで引揚者総数は629万702人で、1945年のオーストラリアの人口は739万人とのことでそれに匹敵するくらいの人数を引き上げさせたという民族大移動といってもいい偉業であることを知ったのも素晴らしい特集だと思いました。

 

幻の「蝦夷共和国」自由を求めた函館政権の虚ろな内実

こちらは驚きの意味で印象に残りました。

それは、もし、榎本武揚が旧幕海軍の戦力をしっかりと保持して函館に渡り、最新鑑「開陽」を江刺で座礁させて失っていなければ、戦いがもう少し長引くことになり、その結果として榎本にも、明治政府にも最悪な事態が発生していたかもしれないということです。

 

列強が各地に植民地を増やしていく中、アジアでは清国が列強に浸食され99ヶ年租借で土地を奪われていました。それをプロイセンが蝦夷地に目をつけて行おうとしていたことです。

 

奥羽越列藩同盟が新政府と戦っているときに、会津藩と庄内藩に両藩がもつ蝦夷地内の領地を99年間租借と引き換えにプロイセンの借款を申し出て、両藩は同意します。借款が実行される前に列藩同盟が崩壊したのでこの話はなくなったので事なきを得たといえます。

 

しかし、その後プロイセン人のガルトネル境涯が、軍資金や各種物資の欠乏に困っていた榎本武揚らの函館政権に対しても、七重村300万坪を99年間租借を持ち掛けて契約締結となります。それだけ榎本武揚らが追い詰められていたとはいえ、ロシアから蝦夷地を守るはずが、プロイセンに奪われてしまいかねない失態といってもいいものだと思います。

 

明治新政府もその榎本らのプロイセン人ガルトネル兄弟との契約を継続する約定を結ばされてしまいます。のちにプロイセンは普仏戦争でアジアを顧みる余裕がなくなりますが、明治31年11月に明治政府は多額の違約金を支払う形で約定の破棄に成功したとのことです。

 

もし、函館戦争がもう少し長く続いて、膠着状態に入っていたら、函館そして蝦夷地をプロイセンがどれだけ手を出していたかと思わされる函館戦争裏面史でした。

 

戦国島津氏の忍び 知られざる「忍ノ巧者」の実像

面白い特集としては、戦国時代の島津家の忍者濱田民部左衛門経重の特集でした。忍者というと本人は否定するのがお決まりの『どうする家康』の伊賀忍者の服部半蔵や甲賀忍者、北条家の風魔小太郎や武田信玄の忍者などが有名ですが、島津の忍者というは知らなかったので新鮮でした。

 

しかも、それが城に忍び込むなどの情報収集や放火といったまさに「忍び」な働きだけでなく、島津の戦い方の代名詞「釣り野伏」にもかかわっていたことには驚きました。

 

「忍び」とはについては、近年、三重大学国際忍者研究センターが設立され、これを機に忍者研究が飛躍的に発展してきているそうで、特に「忍び」とは何かという根本命題についても議論も起きているそうです。その中では「釣り野伏」のような戦術が該当するのかどうか議論が分かれているそうです。

 

今後の見解でどうなるかわかりませんが、もし、「釣り野伏」が「忍び」でないとしたら、濱田経重さんも、『どうする家康』の服部半蔵のように、一門はそうであっても自分は侍だっていうようになるのかな~

なんて思いました。

 

〈書籍データ〉

『歴史群像2024年2月号』

発 行:株式会社ワン・パブリッシング

価 格:1,000円(税別)

  2024年1月6日 発売

  通巻183号

 
 
 
 

 

 

 

 

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