#584 レビュー ゼウス達について『ギリシア神話 オリュンポスの書』斉藤洋 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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ギリシア神話 オリュンポスの書 (斉藤洋の「ギリシア神話」 1)』 読書目標”とにかく読了 ギリシア悲劇”で、悲劇作品を楽しむためにギリシア神話の理解が必要なために読みました。

斉藤洋先生によるギリシア神話三部作その1

ゼウスの娘の女神アテナの語りによるオリュンポスの神々の物語

 

  レビュー

ギリシア神話について詳細に読む前にイメージをつかむために選んだのが児童文学作家の斉藤洋先生の「斉藤洋のギリシア神話」を読むことにしました。

 

本書の特徴は、ギリシア神話の主神ゼウスの娘の女神アテナによる語りで展開していくところにあります。アテナは、知恵と正義、戦争と技巧の女神です。本書のアテナは能力はもちろんのこと、その美にも他の女神よりも美しいという自信満々の女神です。

 

話は基本的には、そんな自信満々の女神アテナが、上から目線的な感じで、人間だけでななく他の神々に対してもその振舞や性格などをアイロニカルに語ります。

 

興味深かったのは、異母弟のアレスも戦いの神ですが、二人は領域が異なることです。

女神アテナは個別の戦闘というよりも、国家vs国家をはじめとする組織vs組織の戦いで、Warの神。アレスは人vs人という感じの戦闘についての神、Combatの神という感じの陽です。

 

主神ゼウスの御乱行

 

主神ゼウスは、主神ゆえに他の神でさえあれこれ言うことができないので、ましてや人間の尺度でどうこう言える存在ではないそうです。

(女神アテナが本書でゼウスに限らず人間が神のことを批判などできないこと随所で語ります)

 

今の時代からすると、タブーもへったくれもない存在で驚きです。正妻ヘラは姉、他の妻も同じく姉だったりします。好色はそれだけに飽き足らず美しい妖精や人間を見かけたり、その美貌のうわさを聞きつけたりすると、手を変え品を変え、ときには姿を変えて相手に近づき、関係をもって子どもをつくらせるなんてことを幾度も行います。

 

今の時代なら大問題間違いなしの御乱行ぶりです。

 

全女性の神⁉ ヘラ

そのゼウスの正妻がヘラです。全女性の神でもあるそうですが、女神アテナもその振舞に疑問を呈するように、ゼウスが手を出さなかった女性の神という感じです。逆にゼウスが他の女性に手を出して、妊娠が発覚するとその女が出産できる場所を無くしてしまうとかとにかく妨害がすごいです。

 

ヘラとゼウスの間に生まれた神の一人が”鍛冶と技巧の神”ヘパイストスですが、あまりにも醜かったそうで、生母ヘラは卒倒しそうになり、オリュンポスの山から投げ捨ててしまいます。投げ捨てられたヘパイストスはレムノス島に落ち、これにより足を痛めてしまい、片足を引きずるようになってしまったそうです。

 

ゼウスもゼウスですが、ヘラもヘラという感じなのが分かります。

 

アフロディテも、アポロンも

オリュンポスの神々でもひどい神は他にもいます。

”愛と美の女神”アフロディテは、その美貌が有名で神々も彼女に求婚する中、困ったゼウスは一同を集めてアフロディテに選ばせることにします。

 

選ばれたのは、あの醜いヘパイストスでした。

選んだ理由は、みながアフロディテに求婚する中、恐らく選ばれることなんてないと思い、アフロディテに関心を示さなかったことから、アフロディテが自分の美に魅了されないなんてということでした。

 

ただ、そんな理由なので、アフロディテはすぐにヘパイストスに興味を無くし、恋の相手は”太陽と芸術の神”アポロンでした。アフロディテはヘパイストスが仕事でいないことをいいことに自宅に招いて関係に及びます。そのことを知ったヘパイストスは自宅ベッドに仕掛けをして、二人が裸で事に及ぼうとしたときに、目に見えないネットで捕え、ゼウスらの神にその様子を見せて恥をかかせて復讐しますが、その後もアフロディテとアポロンはそんな罰にも懲りずに逢瀬を重ねたそうです。

 

ちなみにアポロンも父ゼウスに負けず劣らず好色で、アポロンの恋人たちという章でそのことが展開されます。

 

ゼウスとヘラの夫婦の所業やアフロディテやアポロンの不倫関係を、ゼウスの娘アテナ(母はヘラではない)はあきれています。人間が神のことについてあれこれいうなということなので、アテナさんにでもあきれるなりしてもらわないとという感じです。

 

神話を訳したものではなく、神話に出てくるオリュンポスの神々の特徴を、女神アテナの批判的な目から見た語りにより、イメージがつかみやすくなる1冊で、まずギリシア神話の神々ってどんな人たちというのを知るのに役立ちます。

 

〈書籍データ〉

『ギリシア神話 オリュンポスの書』

著 者:斉藤洋

発 行:株式会社理論社

価 格:1,500円(税別)

  2009年6月 初版

 斉藤洋の「ギリシア神話」1

 
 
 
 

 

 

 

 

 

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