『愛国百人一首』の選定された17首目は多治比鷹主(たじひのたかぬし)です。こちらも奈良時代の歌です。
(著者所持の『愛国百人一首』の多治比鷹主の絵札)
唐 国 に
往 き 足 ら は し て
帰 り 来(こ) む
ま す ら 武 雄 に
御 酒(みき) た て ま つ る
※ますら武雄:まことに強い男子という意味
この歌は、752(天平勝宝4)年に詠まれた歌です。
歌の意(こころ)
遠い唐の国へ、天皇の御使として出発するますら武雄のあなたが、立派に使命を果たして無事に帰国するようにと、御酒を捧げてます。
多治比鷹主は、孝謙天皇(第46代)の御代の人ですが、詳しいことは分からないそうです。天平5年の遣唐使を務めた多治比広成の一族のものです。この歌を詠んだ6年後に、藤原仲麻呂と橘奈良麻呂の抗争に巻き込まれて、失脚したんだそうです。
この歌は、孝謙天皇(第46代)の752(天平勝宝4)年に、遣唐使で派遣される副使の大伴古麻呂の送別の宴で、多治比鷹主が出発を祝い、大伴古麻呂ならしっかりと使命を果たして無事に帰ってくるに違いないと酒の盃を進めながら寿いで詠われた歌です。
このときの正使は藤原清河です。
当時、遣唐使として中国大陸に渡ることは命がけの任務であり、その御使は外交を担う重要な存在です。
(著者所持の『愛国百人一首』の多治比鷹主の読札・取札)
歌の解説は、『國魂 愛国百人一首の解説』著:西内雅と、愛国百人一首の12人の選定委員の一人である窪田空穂による『愛国百人一首』によって行っています。
『愛国百人一首』とは
『伊勢物語』を読む上で、和歌の理解のために読んだ本について