自らの意思(恋)を優先する北条政子
本書について
この五巻も本編『平家物語』から離れて、伊豆に流された源頼朝とそれを見張る平家方の北条時政の娘の北条政子との危険な恋を描いた1冊。
改めて自分の意志で結婚する夫を選ぶことができない公家社会・武家社会の当時においてこの北条政子は、時代の転換として天が配剤した特異な存在ともいうべきものなんだなと思わされる1冊です。
四巻で同じく坂東の地で兄頼朝のことを思いながら、最終的には奥州藤原秀衡のもとにいく義経を受けて、同じく坂東の地で読経と写経をして過ごす佐殿こと頼朝の生活が描かれています。あの荒法師文覚も伊豆に流されていたので二人の出会いも描かれています。
頼朝は亀の前をそばに置きながら、北条時政が京にお勤めにいっているのをいいことに北条政子と恋仲になり、密会を重ねます。そこにはこの頼朝を担ごうとする兄の北条宗時の存在もありました。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも描かれていた通り、その前には同じように京に行っている間に伊東祐親の娘に手を出して子どもを産ませてひと騒動になったことも
そんな中、京でのお勤めをおえ、平家と連なる山木兼隆の願いで北条政子を嫁がせることを応じた時政が帰ってきて、時政びっくりな状態で話が展開していきます。北条政子は山木兼隆に嫁ぐことを応じるふりをして、その山木との婚礼の日に山木の館から宗時らと組んで逃亡してしまいます。時政もこれに乗っかってしまいます。
一方の京では、平家一門に力を握らせすぎないように比叡山をたきつけたりする後白河法皇や、平家一門の繁栄に不満を抱くその側近たちの西光法師、保元の乱で平重盛の命乞いですくってもらった藤原成親らが打倒平家の暗躍と、比叡山(山門)と朝廷の対立が描かれ、ここにあの武蔵坊弁慶が山門の人間として登場します。義経との五条大橋の出会いはまだありません。院が流刑にした叡山の明雲座主を取り返した罪を一身に背負って京に自首してきますが、それどころではない鹿ヶ谷の陰謀渦巻く京では相手にされないわけですが、ようやくの弁慶です。義経は奥州に行っているのでこの時点で二人はあっていないということになります。
二人の出会いがいつだったのかが気になる五巻でした。
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