「どうしよう。パスポートが盗まれた」
頭の中で妻の言葉を繰り返したけれど、その意味を理解するのに時間がかかった。
どうやら、妻が持っていたリュックサックのジッパーが開けられており、パスポートを入れた長財布風のケースが無くなっていた。スリの犯人は財布だと勘違いして抜き取ったのかもしれない。(財布は無事だった)
2人とも現実を受け入れたく無い気持ちが働き、別の可能性を挙げてみた。
「ホテルに預けたスーツケースの中に置き忘れたんじゃない?」(スーツケースから出していた事は 自分も覚えていた)
「元からジッパーが空いていて落としたんじゃない?」(撮影済みの写真を確認すると、失恋博物館前の写真では、ジッパーが閉まっていた)
…すると、すれ違った色々な人が怪しく思えてきた。無意味と思いつつ、店内をウロウロしているうちに正午が迫っていた。(正午を告げる空砲は、ケーブルカー内で聞いた)
盗んだ奴も、金目のものが入っていないと分かれば、道端かゴミ箱に捨てるかもしれないと思い、ゴミ箱の中身を一つ一つ確認する怪しいアジア人となって逆のルートを進んだ。
ゴミ箱がとても多く、そのお陰で、町の景観が保たれているのかもしれないと思った。しかし、一向にパスポートは見つからなかった。とても暑かった。
途方に暮れていると、チェックイン出来る時間になったので、ホテルに戻り、そこで日本大使館に連絡を取る事にした。親切にも、ホテルのスタッフが直接 大使館に連絡をしてくれた。大使館は英語で"Embassy"である事を、この日に初めて知った。
大使館に連絡してもらったところ、担当者不在のため折り返し連絡してくれる事になった。
念のため、その場でスーツケース中身を確認したが、パスポートは無かった。部屋に移動した途端、長時間のフライトと暑さと精神的な打撃で崩れ落ちた。
しばらくすると、部屋に電話がかかってきた。受話器から聞こえてきた声が日本語だったので(逆に予想外で)必要以上にテンパってしまった。電話は日本大使館からだった。。
パスポートは無事に戻ってきた(!)
事の顛末はというと…
あるアメリカ人の観光客が、失恋博物館付近でパスポートを拾った。日本人のものと分かったので、日本大使館に電話連絡してくれた。
大使館まで届けてくれるか聞いたとこら、OKとの回答だった。なので、大使館が閉まる直前を目安に大使館への来館を提案された。(以上をホテルの電話で聞いた)
指定の時間に大使館を訪ねたところ、パスポートとパスポートケースが届けられており、無事、受け取ることが出来た。
・・・こんな事ってあるのか?同じ立場でパスポートを拾ったら、このアメリカ人と同じ事をしていただろうか?
感謝、安堵と共に、クロアチア初日から油断した事に対する反省と疲労感でいっぱいだった。
大使館の方によると、ヨーロッパ全体で観光客を狙うスリが多く、貴重品は身に付けて欲しいとの事。当然の指摘であるが、改めて、慎重に行動すると心に決めた。


























