やっぱりお金よりモラルが大事 | 知りたがりな日本人のブログ@インドネシア

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日本語では検索できないインドネシア国内の話題を、雑談に使えるレベルで解説。

高級時計やスポーツ車の店先で”すげえ安い”と大声で叫んだり、ATMの残高の数字を見せて、”まだまだこんなにある”などとわざわざ自慢してみせるのは、あまりセンスがいいとはいえない。それでも百万単位のフォロワーがいて、芸能人のポッドキャストに招待されたりしているとやはり人気者であることは間違いない。そんなインフルエンサーと呼ばれる人たちが続けて逮捕されたのは、パンデミックによる外出制限騒ぎが収まってきた頃だった。

 

元はバイクタクシーの運転手や、路上ミュージシャン、トレーディングを始めてからはスポーツカーを何台も所有するほどの大金持ちになったというプロフィール。しかしその実態は、誰でも簡単に稼げる方法を伝授すると称して、視聴者を違法なプラットホームに誘導し、アフェリエイターとして、スポンサーからキックバックを得ていた。高級品自慢の資金もそのスポンサーから借りたものだったとか。

#Cazy rich bodong 

 

また、最近になって逮捕されたのが、豪邸自慢で有名なインスタグラマーHL。家具は全部イタリア製。スポーツカーと室内プールに、ブランド品や宝石のコレクション。コンテンツにするにはもってこいの贅沢な暮らしぶりで、有名人のチャンネルに招かれたり取材されたりしている。4人の子供がいるが結婚はしない。一般家庭に育ち普通のOLから女手一つで富を築いたと言う40代。

 

自慢そのものよりも誰もが聞きたいのは、いったいどんなビジネスでこれほどお金持ちなのかということ。そのような質問をされると”神様に祈ってる” ”わたしね一生懸命やるから”などとあまり関係ない話をしてはぐらかす。実は、彼女の富の源泉であるビジネスは、鉱山採掘後の環境回復や地元民への補償のための活動に使う資金CSR(社会的責任)の横流しだった。

#helena lim crazy rich pantai indah kapuk

 

シンガポールとジャカルタの中間にあるバンカ・ブリトゥン島。マングローブの森と豊かな漁場、地元民の暮らしをまもるための法律に従って営業権を持つ国有企業が、無許可の業者が採掘した鉱石を買い上げ、違法な利益をCSR資金という名目で横流しする役割だったという。国営企業の赤字を補填しているのは、国家予算だから、結局、彼女の贅沢の資金源は国民の税金だったということになる。

 

鉱山業以外の職業がなくなり、島外からの労働者の大量移住のため、生活費の高騰に苦しむ地元民は、主婦までもが鍋などの手持ちの道具を使って汚染された泥水をさらって鉱石を拾い集め業者に売って暮らしをたてている。訴えようにも、監視する立場にある村長や知事、警察、又は中央政府すらも、違法業者の味方だ。環境破壊からみた損害だけでも推定271兆ルピア(3兆円近い)という国家規模の超大型汚職事件。

# korupsi pt timah bangka belitung

 

これは最近はじまったことではなく、昔からあることだが、バンカ・ブリトゥン島は氷山の一角で、カリマンタン島、スラウェシ島、ハルマヘラ島、パプア州、世界の肺と言われてきた熱帯雨林の森は、誰かの個人的な利益のために、どんどん伐採されてはげ山化している。それはここ数年で増々加速化し、放置されている。

#deforestasi hutan kalimantan


違法採掘者はコストを安く抑えた分、地元の警察や役人にお金を配り、選挙では大口の資金を提供。選挙で勝ったあかつきには、採掘権や土地使用権などの分け前を得て違法ではなくなる。カリマンタン島の自然保護林の違法伐採から身を起こした大富豪が現政権に強い影響を持っていることや、選挙の時に名前があがる有力政党のほとんどが鉱山開発ビジネスで得た財力を背景にしていることは、知ってる人ならだれでも知ってる話だ。

 

”会計報告や組織構成から調べれば、誰が主犯かははっきりしているがしかし、逮捕できるかどうかは定かでない” と専門家はいう。こういう時に、有名芸能人がかかわっていたという事実が明らかになると、報道は一斉にそちらにフォーカスする。HLに続いて同件で逮捕されたのは、現地日本企業の広告にも採用されたことのある有名な女性タレント サンドラ・デウィの夫。

#harvey moeis 

 

高級車のコレクション、フェラーリのイメージアンバサダーになったこともある。幼い子供のために自家用セスナをプレゼントしたりと、桁外れのお金持ちぶりで知られた人物。2016年東京ディズニーランドで豪華な結婚式を挙げたことで知られている。美人女優と超お金持ちの青年実業家の何一つ文句のつけようのない結婚式

#pernikahan sandra dewi di disneyland

 

”婚約者だった彼に、ディズニーランドでの挙式費用と偶然にも同じ金額のプロジェクトが入って、これは神様のおぼしめしだと思って決めたの”と、当時は嬉しそうに語っていたものだが、それが環境汚染損害額の計上の開始点と同時期だったとすると、やはり豪華結婚式の資金源も税金なのかということになる。ブランド品、海外旅行、夫が逮捕されてから速攻で自身のインスタグラムのアカウントを消した。

 

こうなる未来が待っていることを当時、いったい誰が思い描いただろうか。現在はネガティブなコメントを残すためにその頃の動画が検索されている。車が何台差し押さえられたという話がまるで朗報のように報じられている。加えてこの事件に関係した別の大物金持ち芸能人の逮捕の可能性も注目されている。

 

イベントなどで巨額の出演料をもらう形で資金洗浄に加担することを”米国式マネーロンダリング”と呼ぶそうだ。芸能人の知名度というものはこういう時に役立てるためにあるのだろうが、こういう事件が繰り返される度に、一般大衆だって経験を積んで学習する。今現在”やっぱりお金よりモラルが大事”と考える人の方が多数派であることは間違いない。