ある過去の行方 | Electronic Dolphin Eats Noise

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空論上の九龍城

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2014年4月。@ シネ・リーブル神戸。
 
『彼女が消えた浜辺』『別離』のアスガー・ファルハディ監督の新作『ある過去の行方』、またもやこれは恐るべき傑作で、前々作で我々を驚嘆させた先鋭さや、前作で世界を唸らせた完成度をも呑み込み、手に負えない境地を魅せてくれる。
『別離』の感想

前々作➡︎前作と、イランの文化圏を離れれば離れる程に、よりその語り口は濃密になり、表面的先鋭さが洗練されてく様で、その内面の複雑さは塒巻いている。

世界に出て行く時に、こんな風に濃くなってく作家ってあまりいないのでは?
大概薄めるか、若しくはセルフパロディーみたいなのでお茶を濁す。


今回印象的なのがガラス越しで彼方側の会話が聴こえないシーンの多用なのですが、そう言えば『彼女が消えた浜辺』や『別離』でも使われていた気がする。
あの“(相手が)見えているのに、(声が)聴こえない”がこの監督を紐解く鍵の一つだろう。


アスガー映画はどれも、ドーナツムービーとでも呼びたい程に、問題の中心は殆ど描かれない・映さない。その問題に右往左往する人々の心に抱えている闇や、その移ろいにこそカメラは向かう。
そして、やがて、中心の真の姿が浮かび上がって来た時に我々は放心するのだ。


『彼女が消えた浜辺』の何なん!?これ!な程のぶっ飛んだ(まぁ、描かれる内容は普遍的なんですが)語り口も、『別離』の1mmの隙も無し!な完成度も、これ迄の作品で描かれる問題のスパイスになっていたイランの文化や宗教観も、余裕で捨て去る程の“映画”のダイナミズム!

特にオープニングが秀逸で、何!?あのタイトルの出方!あそこで過る予感(悪寒?)は只事でない!!!


その後も、編集のダイナミズムが魅せるそれぞれの心の葛藤には唸りっぱなしだったし、サミールとアーマドがテーブルで二人だけで対峙するとこの凶暴な間!
そしてあの表現する言葉が見当たらないエンディング!!!


記憶が一瞬にして溢れ出てくるかの様な、あそこの音楽の登場も鳥肌モノ!


ストーリーのヘヴィーさに慄く事なかれ。

現在進行形で巨匠の誕生を追えるこのスリル!

観逃す訳にはいかないだろう。