春秋一刀流/人情紙風船 | Electronic Dolphin Eats Noise

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空論上の九龍城

日本映画の黄金時代 @ 神戸映画資料館。

2014年4月。


『春秋一刀流』は、しかし、今新作として観ても充分通用するテンポと構成、そしてユーモアとペーソスがあって、前半なんてオフビートな青春映画として堪能出来るし、後半に連れ哀しみと熱を帯びてく展開には胸ぐらつかまれる!
文句なしに傑作!!! 


一方で『人情紙風船』は、もう、確固たる名作として揺るがぬ地位にある作品ではあるのに、未だ生々しいこの感触は何だ!?
台詞聴き取り難いのが時にツラいものの、そんなの越えて沁み込むそれぞれの複雑な感情が、終映後も場内に、胸の内に渦巻く。


まぁ、『人情紙風船』は画が凄いよね。
あの長屋に挟まれた路地の密度、そして“あの夜”の闇、雨、濡れた路地…恐れ入りました! 


この4月28日・29日の神戸映画資料館の『人情紙風船』と『春秋一刀流』、山中貞雄監督の遺作と、第二の山中貞雄と呼ばれたそうな丸根賛太郎監督のデビュー作って組み合わせだったのかぁー
勿論そんな前情報なくとも存分に堪能出来る傑作二本ですが。


そもそも山中貞雄監督なんて、未だ天才として評価も人気も高いのは知っていたものの、一本も観た事なかったし、ってか、改めて調べて色々吃驚してるところ。
監督生活は僅か5年で、その期間で26作手掛けてて、その内まともに観れるのは3本だけ!?


今回観た『人情紙風船』は1937年に公開された遺作で、封切り日に赤紙が届いて、翌年戦地で病死してるのだ。
28年の生涯か。


『春秋一刀流』は1939年の、『人情紙風船』は1937年の作品。

勿論そこには戦争の暗い影が射している訳ですが、それにしても痛快な迄の権力へのNo!であったり、ニヒルな迄の捨て身のユーモアには、映画の・映画人の底力を思い知らされる。


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『春秋一刀流』は、オープニング、ド迫力の横移動の合戦にオッ!となったのも束の間、そのチャンバラを向こうに醒めた会話交わす二人の図にズッコケる。
そっから、あの橋でメイン三人揃う迄のオフビートな展開は今の邦画なんて太刀打ちできねえんでないの?って絶妙さ。
いやぁー、あの三人の青春譚として最高!

そしてコメディとしても相当上等ですよね。
トリオ漫才の様なメイン三人のやりとりは、それが永遠に続くのを望む程に、煌びやかな友情を帯びていた。
故に…

一人、また一人…
片岡千恵蔵演じる平手造酒が、病んだ身体で一人残されてしまい、縁側で佇む様の無常感…

のラストへと雪崩れ込むやり場なき感情の激流は何だ!?

そして、ラストのラスト、オチ。
凄い。


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『人情紙風船』に関しては、オープニングからハイでもローでもない、異様なテンションあって、あの長屋の密度の中塒巻いてる様が素晴らしくって…
で、それがまた此方でもやり場なしで…
その掛け違う・空回る想いが、“あの夜”の闇に呑まれてく様が心底怖い。

あの日の夜の長さよ…

河原崎長十郎演じる浪人が、呑みの席で最後に見せる笑顔…あれがもう、彼方側に行ってしまった表情で胸が痛かった。


もう70年以上も前の邦画なんて、古臭いし、リアリティないっしょ?だなんてのが、一発で吹っ飛ぶ、オモロさと突き刺さる痛みに是非遭遇して貰いたい。