ある研究論文を見つけて、面白いことが書いてあったので取り上げます。
入試偏差値が高い学校の合格実績が、その学校の教育によるものかを検証しようという試みです。
「 私立中高一貫校の入学時学力と大学進学実績 : サンデーショックを用いた分析(日本経済研究 No.70,2014.3) 」近藤絢子(2014 )
入試偏差値の高い学校には、優秀な生徒が入学してくるので、学校による付加価値の付与がなくても、難関大学に進学できたのではないかという疑問は誰でも持つと思います。
そこを、サンデーショックという、ミッション系の私立中学が2月1日が日曜の年に、入試日を2月2日にずらすところに目をつけて、2月2日に難易度が変化した中学の、通常の年との6年後の合格実績を比較することで、検証しようとしたものです。
目の付け所がユニークですね!
さて、著者が作ったモデルで普通の年について検証すると、入試偏差値と大学合格実績には正の相関がありました。
さらに、サンデーショックの年とそうでない年を比較して検証したところ、結論としては、入試の偏差値が大きく変動しても、6年後の大学合格実績は変動しないという結論がだされました。
つまり、入学者の素質が良いと大学合格実績が高いのであれば、サンデーショックで偏差値が上昇した学年の大学実績は高くなるはずだし、逆も然り。
ところが、出口は大きく変動することがないことから、良い学校は良い教育をしていると推論できるわけです。
つまりは、世間一般で思われているように、入試偏差値の高い学校に入ると、良い大学に行ける確率が高まるのです。
ということは、難関中学には生徒の学力を上げるなんらかの秘密があるということです。
論文の著者も、何がその要因になっているのかは今後の課題だと書いています。
集まる生徒同士の影響力ということもあり得るし、学校のカリキュラムやポリシーにも原因があるかもしれない。
ただ、そうしたことは数値化しにくいため、分析が難しいとも書いています。
むしろ、公立高校を調査対象にした方が、要因が絞りやすかもとも。
羊は、論文を読み始めたときには、逆の結論ではないかと思ったものですから、当たり前の結果でちょっとがっかりしてしまいました。(羊)