国際子ども図書館で行われた過去の講義(令和元年度)の中で、白百合女子大学教授の白井澄子先生のお話に目が止まりました。
子どもの読書にも10歳の壁があるというのです。
それはつぎのようなことです。
10歳前後というのは、プレ・ティーンエイジであり、自意識が芽生えはしても、まだ子どもの意識も抜けきらない時期。
それまで読んでいた小学生向けの本が素直に面白いとは思えなくなります。
また、人間関係では親よりも友だちの比重が大きくなり、友だちと同じことをしたいという気持ちが強くなります。
仲間内で流行っている携帯ゲームやYou Tube等に時間を取られ、本から離れて行きます。
そんな時期に、「この本面白いから読んだら?」という勧め方をしても、子どもには響きません。
そもそも読書に費やせる時間が減っているのですから。
もし、何か本を進めるのであれば、「こんなに面白い生き方をしている人がいるよ」と言って、子どもでも興味を満ちそうな人についての本でしょう。
例えば大谷翔平や大坂なおみのような人。
あるいは、学校の成績はひどかったけど、型破りな人生を送っている人に共感する子どももあるでしょうね。
この難しい時期の子どもが手にとってくれそうな本は、「家族」「友情」「成長」「冒険」「動物」のジャンルです。
家族は、サザエさんのような家庭ばかりではなく、現実に近い家庭を描いたものの方が共感できるでしょう。
友情も固く結ばれるものと、壊れてしまうものと両方ありますね。
成長は、千と千尋の神隠しのように、はじめは頼りなかった主人公がたくましく成長する物語で、自分に重ね合わせて読んでくれそうです。
冒険は、昔から人気のあるジャンルですね。
ファンタジーは大体冒険ものですし。
動物は、主人公が動物のものと、動物と人との関わりを描いたものがあります。
動物が嫌いな子どもはあまりいないと思うので、入りやすいでしょう。
10歳の壁を超えたあたりの子どもたちには、本を手渡すのではなく、目につくところに置きっぱなしにして、子どもが自分から手に取るに任せます。
興味を示さなかったら違う種類の本に替える。
この時期に、将来も読書を続けるか、読書離れして本を読まなくなるか分かれ道となることが多いそうなので、なんとか興味をつなぎとめたいものです。(羊)