ただ今発売中の『飲食店経営』2月号で、私は「牡蠣特集」を担当しました。以来、企画書を作成する際など「下記の通りです」が「牡蠣の通りです」になるほど(笑)、私のPCには「牡蠣」が染みついています。

私は幸いにも、これまでいわゆる「牡蠣にあたる」経験をしたことがなく、「ノロ」もなく、牡蠣に対する印象は良好です。牡蠣が大好きです。


さて、この牡蠣特集を担当したことで、牡蠣のことが少しは詳しくなりました。中でも今回得た最高の宝物はオイスターバーの「オストレア」の取材をしたことでした。

オストレアは都内・山手線の内側に現在7店舗展開しています。1号店は2007年7月オープン(赤坂見附店)で、以来8年足らずでこの陣容は、専門店展開としてはとても堅調なことだと思います。


オストレアのリーダーは吉村憲一郎氏。現在のオーナーさまとの出会いから牡蠣の産地開拓を手掛けることになったそうですが、その産地の掘り下げと、こだわりには感動しました。当初出会った牡蠣の生産者である広島の三保達郎氏から、「牡蠣にとって最も大切なものは何か?」と尋ねられ、「安全性です」と答えたことから牡蠣の仕入れをさせていただいたというエピソードを紹介してくださったのですが、これは今日の同社のミッションの根底にあるもので、語りつがれるものでしょう。


食材の「安全性」とは、オイスターバーに限らず、飲食業をはじめ、広く食を商う人にとって一番に意識を傾けなければいけないことです。ここからお客さまに提供するあらゆる姿勢が形成されていきます。

おいしい料理も、すてきな接客も、行き届いたお掃除も、すべて「安全」が原点となります。


オストレアの生牡蠣は、目の前に運ばれると「潮」の香りが漂います。リサーチのときに息子を連れていったのですが「青森の匂いがする」と言いました。私の実家は海の近くにあって、潮の匂いが漂っているのですが、それを連想したのだそうです。そして、食べるとしょっぱい。そのしょっぱさに、「海の味」を感じます。

日本の牡蠣の種類は「真牡蠣」が主流になっているとのことで、産地の海が違っても同じ味になるとのこと。これを、それぞれの「海の味」をお客さまに体感していただくためにはオストレアならではのオリジナリティがあるのです(この内容は、飲食店経営を読んでのお楽しみ)。


このように基本的に同じ種類の食材を扱う飲食店が、オリジナリティをアピールするのはなまなかのことではありません。そして、「安全性」をミッションの柱にしていることによって、お仕事に対する正義感が一貫している社風が醸成されていると拝察します。

これから牡蠣扱う飲食店はどんどん増えていくことでしょう。牡蠣は養殖が主流なので、生産量は需要に応じて増えていくことでしょう。

牡蠣を扱う飲食店が増えていくことによって、生産者と交流を深め、産地の情報に明るく、そして正義感が一貫した飲食店が増えていくということは、外食をする「理由」をより豊かにしていくことにつながっていくものと思います。


私は、家で食事をつくりません。ほとんど95%ぐらい外食です。昼夜ともリサーチ系です。そこでリサーチがない晩ご飯では、「サイゼリヤ」にするか「日高屋」にするかでいつも悩みます。どちらも、お酒を飲んで食事をして1000円以内に収まるからです。
では、サイゼリヤにするか、日高屋にするかの、その日の決定要因は、オリーブオイル系が食べたいか、ガツンとくる中華か、という食の志向に尽きます。

「affordable price」(アフォーダブル プライス)という言葉があります。これは「手頃な価格」「気にならない価格」という意味です。消費の現場で、お客さまが気にならない経験をして、これが快適な記憶と重なれば、お客さまはリピーターとなり、ブランディングされるというニュアンスです。サイゼリヤと日高屋は、今日その典型と言えるでしょう。

まず、どちらとも、同じ業種のお店と比べると、どこよりも安いです。美味しいか、美味しくないかという議論はさておき、美味しく食事ができます。
次に、メニュー全体によって食の組み合わせのバランスが取れています。要するにリピーターは、その日のコンディションで食べる内容を組み立てることができます。
そして、クオリティの高いアルコールの存在です。サイゼリヤのワインは家飲みよりもお値打ち感があり、日高屋の270円の酎ハイは酔っ払います。グラス450円で酸味しか記憶に残らないワインや、ほぼ透明なハイボール、何杯飲んでも酔わない酎ハイ380円というのと全然わけが違います。
いずれにしても、お酒で利益を稼ごうというあざとい発想に立っていません。チェーンの規模が拡大して行くたびに、フードメニューの背景をブラッシュアップしてアフォーダブルプライスが磨かれていきます。

飲食業では、成長するために「仕組みをつくろう」ということが語られますか、サイゼリヤと日高屋の商品づくりと価格意識は、まさにリピーターづくりの仕組みづくりです。

1月26日に書いた「千葉哲幸における『和民』」で、「一気通貫」という言葉を使いましたが、私は2012年まで「一気通貫」という言葉を知りませんでした。


「一気通貫」とは麻雀の世界のこと。一から九まで全部つながることなのだそうです。私は学生時代に麻雀を覚えかけたのですが、早く上がることばかりを考えていて、その場の中心人物から怒られて以来、麻雀をしていません。ということで、「一気通貫」までいたりませんでした。




「一気通貫」を知ったのは、エー・ピーカンパニー(以下、AP)の米山久社長の書籍『ありきたりじゃない新・外食』をプロデュースしたときです。書籍のタイトルや表紙周り(カバー)は一番最後に作成するのですが、この時のアートディレクター・黒崎仁氏が、APのミッションをこの言葉で表現されたのでした。




APの画期的なことは、自社で養鶏場を営んでいることです。キラーコンテンツを自社で作っているのです。これにいたるエピソードについては前述した書籍をお読みいただければ幸いです。いずれにしろ、APは、食材の原点を掘り下げていくうちに、自分たちで行うことが確かであることに気づき、それが物流も巻き込み、川下のお店で、おいしい地鶏をお値打ちの価格で提供しました。それが「一気通貫」ということです。同社では現在養鶏場をいくつか展開していますが、その端緒である宮崎・日南市の「塚田農場」に私は3回訪問しました。山の谷間にある養鶏場では、1500羽の「みやざき地頭鶏」の鳴く声がこだましていました。




APはこの事業モデルによって、多くの自治体から注目され、雇用と生産をもたらしました。東証一部に上場して、いわゆる一流企業の座を築きました。経営マスコミをはじめ経済界で話題にのぼるAPですが、店舗数は現状200店舗あたりで、その話題性に比して店舗数がそれほどでもないことが、ある種不思議に感じられます。1980年代に隆盛を競ったチェーンレストランは、1000店舗は当たり前で、3000を超え4000が見えた、そして6000を目指すというのがリーディングカンパニーのミッションでした。それは、「店数」が求心力となっていたからでしょう。数が多いことが、リスペクトされた時代でした。




しかしながら、今日は店数が多いことは、食事をするお客さまにとってはほとんど評価の対象となりません。むしろ店数が増えたことによって「サービスが雑になった」という見られ方をされます。


今日の飲食業がリスペクトされる部分は、いかに生産の現場とつながっているかということです。「居酒屋甲子園」では、4、5年前から「リスペクト・ローカル」という言葉が使われるうようになりました。昨年11月の第9回のファイナリスト5チームの発表のうち、4チームが「地域」「生産者」をテーマとしていました。「販促」をテーマに掲げているところは一つもありません。




今日の繁盛店づくりの発想は、「売ろう」という姿勢ではなく、「掘り下げよう」ではないでしょうか。食材の現場をよく知り、そのことをお客さまに熱く、楽しく提供し、語りかける。そんな姿勢を、お客さまはリスペクトして、「また行きたい」お店として記憶に刷り込まれるのだと思います。



業績の良い外食企業として「壱番屋」が挙げられます。2014年5月期も増収増益でしたが、過去多少の減益決算があったとしても、いつも好調企業として語られてきました。




私は同社創業者、宗次徳二氏の書籍『夢を持つな!目標を持て!~日本一のカレーチェーン創業者が放つ独断と偏見語録55』のプロデュースを2010年に担当させていただきました。


この取材中、ほぼ半年間、宗次氏と深くお付き合いをさせていただき、宗次哲学を教えていただきました。


宗次氏は、現在外食の経営から退かれて、名古屋市内にある「宗次ホール」というコンサートホールの支配人をしていらっしゃるようです。自分のご趣味を新しい人生の活動にあてていらっしゃいます。




壱番屋の主な業態は「CoCo壱番屋」(以下、ココイチ)です。カレーの専門店チェーンです。それは、ファストフードか、というと客単価はおそらく800円あたりで、ファストフードの客単価にしては少し高いです。この「少し高い」カレー屋さんに、なぜ人が詰めかけているでしょうか?




私は過去ココイチの取材を何度かさせていただきました。宗次創業者や浜島俊哉社長へのインタビュー以外は「お掃除」がテーマでした。ココイチのお掃除は店内、店舗周りをはじめ、店舗近隣の街のお掃除も含まれます。街のお掃除は「ボランティア活動」という発想ではなく、お店が存在する近隣をお掃除することは、店内・店舗周りをお掃除するすることと同じことだという認識に立っているようです。




ちょっとプロパガンダのような言い方になりますが、「お掃除」は活動中の人の心を浄化させ、お掃除がされた場所を、誰もが素敵な場所だと認めます。お掃除された場所・空間を、人は正しいものと認めるのではないでしょうか?


「ブロークンウインドウ理論」というのがあって、窓が割れていない自動車と、窓が割れた自動車を放置しておくと、一週間ほど時間が経つと、窓が割れていない自動車は何事もないのに、窓が割れていた自動車はボコボコになっているそうな。この理論に基づいて実践されたのがニューヨークの地下鉄の落書き一掃活動でした。落書きを消しては落書きされる、の繰り返しでしたが、結果、落書きを消す方が勝ち、結果ニューヨークの犯罪件数は劇的に少なくなり、世界一の観光都市して認められるようになりました。




松下政経塾を主宰していた松下幸之助氏は、塾生に毎朝掃除をさせて、「私たちは掃除をするために松下政経塾に入ったわけじゃない」とブーイングをした若い塾生たちに「自分たちの周りの掃除をちゃんとできない人間に、日本の掃除ができるわけがない」と一蹴したそうです。坂本龍馬氏にも「日本を掃除する」といった名言もあります。




飲食業はQSCです。Qは「料理」、Sは「接客」、それに対してCは「清潔さ」ということで、三つの中でもCは地味な活動ですが、三つの一つに並び称されている限り、重要な要素なのです。だからお店のお掃除をして「清潔さ」を維持するということは、そこで働いている人たちをすがすがしい気分ににさせて、お店の空気も清浄なものとしているのだと思います。




実際に、営業開始時間がほぼ同じのお店が隣り合っているとします。あるお店は、営業開始のお知らせを「ただ今営業中」という札を掲げるだけでお知らせしているとします。一方その隣のお店は、営業開始10分前にお店の周辺を掃除して、終了してから「ただ今営業中」を掲げるとします。街の誰かは、必ずその行動を見ています。そして、お掃除を励行しているすがすがしさはスタッフのマインドに息づいています。


果たして、お客さまはどちらのお店に行ってみたいと思いますか?




重ね重ね、このようなお話をするのは私の本意ではありませんが、「ココイチの好調続く」からお掃除の大切さを連想しました。


ちなみに、宗次氏は、毎朝宗次ホール周辺のお掃除をしていて、花も植えているそうです。



ワタミの社長が、桑原豊氏に代わり、清水邦夫氏が就任することが話題になっています。

この社長交代の背景はさておき、私の記者経験から、外食記者・千葉哲幸における和民の存在感を述べておきます。


ワタミ創業者の渡邉美樹氏が経営マスコミに登場したのは、お好み焼きの宅配を始めた時でした。私が『月刊食堂』に異動したばかりなので27~28年以上前のことです。

この当時画期的だったのは「記者会見」を招集したことでした。当時「つぼ八」を数店展開していて、ほとんど無名の会社が記者会見を開くという。私は当日別件の取材で行けませんでしたが、この事業規模でマスコミ報道の重要性を認識していました。それは壮大なビジョンがあったからでしょう。


次に「和民」が画期的だったポイント。つぼ八創業者の石井誠二氏は、つぼ八を退任してから目蒲線界隈に「八百八町」を展開していくのですが、和民の初期のお店づくりは、この八百八町をリスペクトしていた印象があります。ボトルキープがそれを象徴していました。和民の当初は地域密着型でした。渡邉氏が率先垂範で行っていた膝をつく接客は、それこそ住宅街立地では驚きの接客でした。


その後都心に進出するようになり、「和民」が他店と大きく異なっていたのはアルコールの品ぞろえの豊富さでした。ドリンクカウンターが目立つ場所にあり、ぐるりとボトルが囲み、ドリンクをつくるスタッフはスターのような存在でした。


その後、ワタミは郊外立地を模索しだします。稲田堤駅前に「和み亭」という和民の郊外型バージョンをオープンして、その時に入社したのが桑原社長です。1990年代半ばごろ郊外型和食レストランが隆盛していて、すかいらーくの「藍屋」がそのトップに立っていました。桑原氏はその業態で活躍していて、「和み亭」のレセプションでも〝郊外展開を図る上での期待の星″として紹介されていました。


そして2000年をまたいで「坐和民」というお店を展開していきます。これは当時隆盛していた大衆居酒屋アッパーな路線で、「ちゃんと。」が「橙家」というお店をオープンしたことがその象徴でした。例えば「月の……」「雫……」というのは、この路線です。「東方見聞録」はその中で抜きん出た存在になるのですが、振り返ると、ここから和民の画期的な部分が曖昧になっていったように思います(あくまでも私の認識)。


ワタミファームを開設したり、北海道食材に特化した「北海道」の中心メンバーをスカウトしたり、食材を掘り下げる姿勢もアピールしていましたが、今日のエーピーカンパニーやファンファンクションのようなストーリーが伝わる一気通貫的な訴求まで至っていないようです。


とは言っても、私にとって「わたみん家」は画期的でした。大振りの焼き鳥はうれしい商品です。「鳥貴族」も大いに刺激を受けたのではないでしょうか。東中野にできた店名に個人名をつけたお店を見に行ったものです。一方の低価格居酒屋の仰天酒場「旨い屋」、「炉ばたや銀次」にしてもベンチマークしたお店が推察されます。今日新業態開発については、その時代のヒット業態を参考にすることになり、お客さまには「既視感」が付きまとうものかもしれません。

であれば、マーケティングで「今年は〇〇が売れる」的なトレンド情報に振り回されない活動をしてみてはいかがでしょうか。「和民ファンの集い」「和民ファンによる和民の覆面調査」「和民ファンはこれが食べたい」……ファンの人にもっとファンになってもらう。


画期的な繁盛店は次々と登場しますが、そんなことを焦らずに邁進していくことを期待しています。

昨晩は、カメラマン修業中の息子の新しい出発を祝って、「こだわりもん一家銀座店」に行ってきました。

ひとまず、新しい世界に飛び込んだ息子に乾杯!


さて、「こだわりもん一家銀座店」(以下、一家銀座店)は2012年10月のオープン。銀座コリドー街のほぼ中央のあるニッタビル3階にあり、ライブ感が伝わるステージのようなオープンキッチン、カウンターで着物を着た若い女性が接客、ピークタイムに行うタイムサービスショーと、メリハリの利いた演出が印象深い居酒屋です。


オープン当初は、グローバルダイニング系出身の店長、料理長、笑顔が素敵なKちゃん、Iちゃんと、既存のスタッフではない(キャリア採用、新卒生)、初々しくも溌剌とした店舗運営が素敵で、私はたちまちにしてリピーターとなりました。オープン以来、丸1年で私のポイントカードの使用金額は10万円を突破していました。(笑)

特に新入社員のIちゃんはとても可愛らしく、彼女の笑顔をみるだけで疲れが一気に吹き飛びました。


しばらくして、料理長、Kちゃんが異動になり、店長も統括のポジションになり、そして、昨年末に訪ねたらIちゃんから「1月からブライダル部門に異動になるんです」と、ショッキングなお話を聞きました。

Iちゃんから「これから千葉さんに会えなくなって残念です」と言われ、そんな生き別れでもあるまいしと思い、私は「俺の結婚式のときにお世話になるから」と、ちょっと無謀な受け答えをしたものです。

Iちゃんの異動で、「一家銀座店」のスタッフは私が知っているメンバーが総入れ替えとなりました。

ストレートに言えば、私が通い詰めた理由の「一家銀座店」でありません。つまり私にとって「一家銀座店」は、新しいお店です(ただし、過去の記憶をひきずっています)。


昨晩の「一家銀座店」では、カウンターにインターンのHちゃんがいて、昨年12月末に接客した私のことを覚えてくれていて、新人君ながらかいがいしく対応してくださいました。メニューのお勧めなど、かつてのKちゃん、Iちゃんとは違うタイプですが、「おもてなししよう」というマインドは伝わります。

息子にとっても同世代のスタッフが生き生きと働いている姿は刺激になったようです。


さて、同店を運営する会社は、一家ダイニングプロジェクトです。千葉・本八幡に本拠を置き、千葉県下で居酒屋を多店化してきましたが、2012年8月にブライダル事業に参入して「東京タワーのライトアップを見上げる」という比類ないダイナミックなブライダル施設を設けました。今や「結婚式を挙げたい式場」としての人気が定着しているようです。

その新事業に参入するに際して、同社は新しいミッションとして「おもてなし」企業を掲げて、「一家銀座店」というフラッグシップを出店し、同時に既存店のリニューアルも展開していきました。


新しいミッションを掲げてから、これまでの居酒屋の会社ではない「おもてなし」企業に期待を込めた新しい人材がどんどんと集まってきていることでしょう。

「一家銀座店」のオープン当初のスタッフは、今同社の既存店や新事業でご活躍のことと思います。新しいミッションとして「おもてなし」企業を掲げた以上、企業全体の「おもてなし」のマインドとスキルを常に向上させる必要があります。同社の早いサイクルでの人事異動は、その姿勢の表れだと思います。


「おもてなし」企業にとっての、分かりやすい目標は2020年です。後、5年。現在のスタッフが、これから5年間、マインドとスキルを磨き上げたその状態を大いに期待しています。Iちゃんもすっかりと落ち着いたアラサーとなり、「おもてなし」のスペシャリストして活躍していることでしょう。

 「カオス」という言葉があります。その意味は「混沌」。「なんだかよく分からない、まとまらない」という世界です。


 友人から 「福岡に行ったら『魚男-フィッシュマン』というお店が凄いよ、絶対行った方かいいよ」という、中々的を得ないアドバイスをいただき、「食べログ」とかを見たら、料理の盛り付けに工夫があって、スペインのエル・ブジみたいな料理もある(例えば、豆腐のエスプーマとか、肉じゃがのショートケーキとか)。それほど言うのなら、ということで同店を昨年10月中旬に出張の途中に訪ねたのでありました。


 同店の場所は、繁華街の天神から1キロほど離れた今泉というラブホ街の谷間にあり、外観は瀟洒なビストロ風です。扉を開けると大きなアイスベッドが広がり、「お魚がおいしいんだなあ」と思わせる構成です。 グリーティングは小顔・ショートカット、スレンダーな25歳くらいの女性で、さわやかな雰囲気で、とても素敵な第一印象でした。


 その日はお取引先の方と4人で会食をする予定で、先にお店に着いた私はまだ静かなお店の中で一人ビールを飲んでいました。隣には40代のカップル。その中の女性が、終始笑いこけていました。何がそんなにおかしいのか?そのカップルをもてなしていたのが大柄の男性で、星条旗がプリントされた海水パンツをはいていました(当然、毛がはえた太もも丸出し)。私は強烈な違和感をいだきました。グリーティングの女性とは真逆の接客で、ここより「カオス」の第一章が始まりました。

 後にご挨拶をいただいたのですが、この男性は「バッテンぶらぶら」さんという九州プロレスの現役プロレスラーでした。


 お待ちしていたお取引先の方がそろい、食べログにある個性的な料理を次々と注文し、普通ではない盛り付けにサプライズを感じていました。階段式になった盛り付け台に盛られたお刺身が一番印象深かったような。同店の盛り付け代が印象深く、後にほかの地方都市の繁盛店に入ると似た盛り付け台に出合うことが多くなり、同店はベンチマークされているんだなあと気づいた次第です。付け加えておきますが、使用食材は産地が明示されていて鮮度も素晴らしいものがありました。この料理が「カオス」の第二章です。


 しばらくすると「バッテンぶらぶらタイム」が始まります。先のプロレスラーが大きな金色のセンスを煽ぎながら店内を練り歩きます。堂々と行っていることに、ショーマンとしての誇りを感じました。「バッテンぶらぶら」さんは同店のエンターテインメントの要となっているようです。同店のキラーコンテンツ「いくらのてんこ盛り」の注文があると、「バッテンぶらぶら」さんがお客さまの目の前で、周りに掛け声を誘いながらご飯の上にイクラを盛り付けていきます。「カオス」第三章。


 そして店内が暗転しました。すると妖艶なドレスを身にまとった20代後半の女性2人が乱入。2人で店内でポールダンスを踊ります。空いているテーブルの上に寝そべり、アピールする姿に店内が完全に支配されます。「ここはどこ?」という思いに駆られます。そのうち、2人のダンサーがお客さまの手を取り、お客さまも一緒に踊りだします。「カオス」第四章。これまで、お客さまは始終笑いこけていたことを付け加えます。


 これらの「カオス」がひと段落したのは21時30分ごろ。店内は先ほどまでの興奮を少し引きずりながらも、一般的な、お魚のおいしいレストランに戻ります。そして、「カオス」の第五章。店内にケーキのワゴン販売が始まったのでした。同店のグループ店舗ですぐ近くにケーキショップがあり、同店の商品を販売しているのでした。暑い夏には白熊の着ぐるみが「白熊くん」(かき氷)を販売しにくることもあるそうです。


 このお店のことを、これまで友人に紹介したり、雑誌の連載などで紹介してきました。そのポイントは「カオスなお店」ということです。

 しかし、今日改めてブログでこのお店のことを書いてみましたが、カオスと思わせながら実は大きくうねるストーリーで構成されています。料理、登場人物、ショータイム……これらの印象が強烈に記憶に残っています。私にとって「また行きたいお店」の№ワンです。

 

 

『飲食店経営』2月号(1月20日)から連載を始めた「外国人観光客を獲得しよう!」の第2回は、ダイヤモンドダイニングに取材をさせていただきました。

ダイヤモンドダイニングでは2014年9月に大きな組織改編を行い、「GIVE〝FUN&IMPACT”TO THE WORLD」というミッションを掲げ、海外に向けてのブランディングを行っています。

その一環として法人営業部を設けて、インバウンドのフラッグシップとして「新宿阿波おどり」を位置づけ、ほかいくつかのインバウンド強化店舗を想定してインバウンド対策を推進しています。


話は創業当時にさかのぼりますが、ダイヤモンドダイニングの発祥は〝エンタメ”でした。2001年6月に吸血鬼をテーマにした「ヴァンパイアカフェ」で飲食業に参入、その後アリスの世界の「迷宮の国のアリス」、かぐや姫の「竹取百物語」と〝お伽噺の世界″をテーマにしたレストランを展開して、大衆居酒屋の客単価2500円~3000円のアッパー3500円~4000円の市場を切り開いていました。私にとって当時のダイヤモンドダイニングのキッチュなレストランは、歓楽街の中に出現したテーマパークという認識でした。

2010年10月には、当時のミッションであった「100店舗100業態」を達成し、その後の方向性について注目をしていたものです。


ダイヤモンドダイニングの具体的なインバウンド対策について、詳しくは『飲食店経営』3月号を読んでいただくとして、ここでは私の感慨を述べておきます。

それは、「ダイヤモンドダイニングは〝面白い”と考えて作ったレストランを〝資産”に変えている」ということです。

お伽噺や阿波おどりの日本文化は、ディナー帯に求める外食の動機が〝非日常”とはいえ、毎日利用するレストランではありません。しかしながら現在、それらのお店がインバウンド対策にとってとても分かりやすいコンテンツになっているのです。

阿波おどりでは団体の外国人観光客が輪になって踊りを楽しむ。アリスの世界では欧米人観光客が詰めかける。これらのお店を開発した当時、今日のこのような現象になっていることを明確には想定していなかったことでしょう。


1月17日のブログでもインバウンド・アウトバウンドの取り組みについて書きましたが、これからは海外に向けての発信力を持つ飲食店が、会社の体質も出店する街の雰囲気も活気あるものにしていくものと思います。

「焼肉ビジネスフェア」のセミナー(パネルディスカション)2日目が終了しました。今日の私は風邪気味で絶不調でした。登壇者5人の全員が体調不良だったようで、覇気のない雰囲気であったことをお詫び申し上げます。とは言いながら、それぞれ自分が発言する段になると、みなそれぞれ光っていました。このように刺激を受ける機会をいただいたことに感謝いたします。


本日のパネルディスカションのハイライトは「2015年のマーケット動向」でした。登壇者それぞれが大きく3つのテーマを掲げるのですが、私は「慎重」「言い訳&ご褒美」「尊敬」を掲げました。


「慎重」とはずばり、「収入が伸びないのに物価が上がる」という経済状態にあって、お客さまは外食への消費に対してこれまで以上に慎重になるということです。昨日のブログに続きますが、お腹を満たすということだけであれば、お客さまはコンビニに向かいます。コンビニ各社もこれまで以上に外食に近い業態を開発していくことでしょう。イートインスペースを持ち、さらにお客さまのニーズを満たす店がますます増えていくはずです。


そして「言い訳&ご褒美」。これは特に客単価3500円程度のカジュアルレストランを利用するお客さまは「頑張った自分にご褒美を与えるというシーンがこれまで以上に増えるのではないか」ということ。友人のコンサルタントに教えていただいたことですが、「800円程度の〆ご飯」「1000円近いデザートセット」を導入しているお店で、それを求めるお客さまが増えてきているとのことです。それを求めるストーリーは、頑張った自分に「言い訳に似た、ある種衝動買い」が存在するということでした。これには私も同調しています。結果、お店の客単価も上がります。


3つ目の「尊敬」。これはかつて続々と発生したバイトテロの反省を含めたことです。社長はじめ店長を尊敬しているお店にはバイトテロは起こりえません。そのお店の商品を尊敬しているお客さまは、根拠の不確かな異物混入を申し入れることもありません。「尊敬」のスタートラインは「挨拶の励行」です。店長に挨拶をする、同僚に挨拶をする、お客さまに挨拶をする---この基本をQSCと同様に日々きちんと行うことによって、お客さまにとっての「また行きたい飲食店」として定着していくものと思います。


「尊敬」が存在する飲食店---それは、生産者さまや業者さまを尊敬している職場であり、それに基づいてメニュー設計をしているお店です。生産者の現場を体験したスタッフは、お客さまとの接点でポジティブになります。いきいきと働く店長を尊敬します。お客さまが飲食店に足を運ぶ理由とは、このような環境ではないでしょうか。こんなことを意識しながら、私もお仕事に精進します。と、肝に銘じながらたまりにたまった原稿にこれから着手します。


「集中!」

吉野家の「ごゆっくり」とは、2013年12月5日に「牛すき鍋」580円を全国一斉発売した時に謳ったキャッチフレーズですが、私はこの文言に吉野家の緻密なマーケティングと表現力の豊かさを感じています。

吉野家のキャッチフレーズとは「うまい、安い、早い」ですが(実は、この言葉の順番は、時代環境に合わせて変えている、とのこと)、この最後の「早い」を真逆の概念に変えたのです。私が思うにその狙いは、ピークタイム以外に「ごゆっくりと召し上がっていただこう」という戦略変更です。滞在する時間は長くなりますが、商品単価は高い。でも、クオリティが高い商品だからお客様の満足度が高い。昨年の今頃、夜8時ごろの吉野家ではこの商品を召し上がるお客さまがほぼ100%で、店内ではメガネが曇るほどに湯気が漂っていました。そして、吉野家の売上は15%伸びました。

そして、「吉呑み」が話題となります。2階席を夜居酒屋営業に切り替えるというものですが、ここでは追加投資をほとんど行わず、新商品開発も行わず、眠っていた時間帯を生産する時間に切り替えました。これも「ごゆっくり」に基づく新しいサービスです。

なぜこんな古い話を今更持ち出しているか。それは、今日「焼肉ビジネスフェア」でパネルディスカッションにさせていただき、隣りの発言者が「一日最大売上を引き上げる」ということに言及したことから「ごゆっくり」のことが閃いたからです。

コンビニは今、外食の領域にどんどん侵食してきています。唐揚げ、おでん、コーヒー、そしてハンバーガーにドーナツ。コンビニは限られたスペースの中で常に「一日最大売上を引き上げる」ことを考えていることの表現に他なりません。では外食は「一日最大売上を引き上げる」ために何をするべきか。それが「ごゆっくり」なのではないかと思います。「ごゆっくり」とはモノではなくマインドです。時間軸でもあります。外食はモノ以上に時間の満足感を提供しています。

ですから、吉野家をきちんとベンチマークすることによって、外食の方向性についての大きな参考なるのではないかと思っています。