■昨日より続く
「イル・フォルノ」の新人研修で、鳥肌が立ち、眼がうるうるしたマインドコントロールを経験した後、新人研修の講師は、「イル・フォルノ」のコンセプトを熱く語りました。
そもそも「イル・フォルノ」とは、イタリア系アメリカ人の、ジョセフ・スーチバヌ氏が生み出したサンタモニカのカジュアルレストランです。
ロイヤルはファミリーレストランのアッパー路線を模索して、1980年代後半に幹部社員がロイヤルの新しい路線のヒントとなる西海岸、東海岸の繁盛店を巡っていたようです。
そのヒントは、おもに青山地区で形となっていくのですが、「イル・フォルノ」は日本法人を設立して、日本で同業態を多店化するスタンスで展開を開始したようです。
では、ロイヤルが「イル・フォルノ」のどのような部分を評価していたのでしょうか。
ここで述べていることは、私が勝手に思いこんでいることなので、真実とは異なるかもしれません。
しかしながら、30代の私が、外食記者として「イル・フォルノ」に感銘を受けたことは、講師が述べた以下のようなことです。
この考え方が飲食業界の新しい流れを生み出すのではないかと思ったのです。
講師は、「『イル・フォルノ』は明確な社是を持っている」と述べます。
その社是は、「『イル・フォルノ』の常識」としてまとめられていました。
(1)every body flat
すべてのお客さまと従業員は、イルフォルノのネオンの下では、楽しく食事をする権利と楽しく仕事をする権利を有して、何人たりともこれを阻害してはならない。
(2)anytime thinking
いつも、自分がお客さまだったら「こんなことしてもらったら感じがいいだろうな」ということを考えながら仕事をしなさい。
(3)anytime asking
その自分が考えたことを勝手にやりなさんな。いつもお客さまに尋ね、確認しながら仕事をしなさい。
(4)il forno priority
従業員が楽しくなくて、どうして従業員が thinking や asking ができるだろうか。楽しくない従業員を見て、お客さまは楽しい食事ができるだろうか。従って、イル・フォルノが大切にしている優先順位は、①従業員、②お客さま、③売上げである。
(5)we are the family
これらのことをわれわれは家族としてイル・フォルノで表現する。家族はみんなで助け合わなければならない。みんなで肩を組んで客席を取り囲もうではないか。
 ̄ ̄これらは、今日でいうところの「ミッション」です。
そもそも、1990年代の初めごろに、明確に「ミッション」をまとめ上げているところは、あまりありませんでしした。
「イル・フォルノ」のこの「常識」は、少し長々と述べられていますが、そこに集う人たちに、「イル・フォルノ」が何を目指しているか、ということを理解していただくには、よくまとめられていると思います。
そして、私がこの社是の中で、最も感銘を受けたのは(4)の内容です。
この部分を語る前に、講師はアルバイト君たちにこのような質問をしました。
「君たちは、どう考えるかい? お店に重要なものは、『売上げ』『お客さま』『従業員』という3つの要素があるのだけれど、『イル・フォルノ』での順番はどうなっていると思う?」
当時は、お店に売上げをもたらす要素として、「顧客満足」が活発に唱えられていました。さまざまな経営紙誌では「顧客満足向上特集」が盛んにまとめられていました。
加えて、「顧客満足」を超える考え方として、「顧客感動」が唱えられようになりました。
「お客さまを満足させよう」が、さらに「お客さまを感動させよう」という考え方に導かれていました。
ここでの受講生も、お店にとって重要なことの優先順位は「①お客さま。それによってもたらされる②売上げ、最後はお店で働く③従業員」と答えていました。
外食記者歴、当時7~8年の私も、それが当たり前だと思っていました。
しかしながら、講師が指摘したことは、「お店は、まず従業員が楽しく仕事をしていなければならない」ということでした。それによって、「お客さまが満足」し、結果「売上げ」をもたらす。――ということでした。
つまり、「『顧客満足』よりも『従業員満足』が重要だ」という考え方です。
当時、「顧客満足」→「顧客感動」という考え方が染みついていた私は、すんなりとその考え方を受け入れることができませんでした。
「従業員満足?それよりも、お客さまが〝買いたい!”と思うことを考えることが重要じゃないかな」
自信たっぷりに「従業員満足」を唱える講師に対して、私は少なからず懐疑的であったことは事実です。
しかしながら、「イル・フォルノ」に行けば、なぜハッピーな気分になっていたのでしょうか。
この錯綜する思いが「従業員満足」という考え方に、大きく傾斜していくきっかけとなりました。
■さらに続く