エンデの遺言(老化するお金) | 道玄坂で働くベンチャー課長だったひと

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Il n'est qu'un luxe veritable, et c'est celui des relations humaines.
Saint-Exupery(真の贅沢というものは、ただ一つしかない。それは人間関係の贅沢だ。
サン=テグジュペリ)
 

ミヒャエル・エンデは、児童文学の代表作『モモ』の著者。


『モモ』は、時間貯蓄銀行から来た灰色の人間が、
時間を節約し、預けることによって利子が増え、
人生の何十倍もの時間をもつことができると誘惑し、
人々を余裕のない生活に追い立てていく物語。
 
しかし、『モモ』は「老化するお金」の概念が、
背景にあるとエンデは告白しています。
 
現在の貨幣制度では、お金は利子によって自己増殖、
二次曲線的に増えていきますが、
自然界における樹木は一定の成長で止まります。
  
お金には次の3つの機能があるといわれ、
問題なのは「価値の保存機能」。
  
1 交換手段の機能
2 価値の保存機能
3 価値の尺度機能
  
エンデは、経済学者であるシルヴィオ・ゲゼルと
ルドルフ・シュタイナーの「エージング・マネー(老化貨幣)」に学び、
エージング・マネーとは、文字通り老化していく貨幣システムで、
プラス利子ではなく、マイナス利子で時間とともに減価していくという概念。
 
これらは、「イサカアワー」や交換リング、
地域通貨という形で、試みがされています。
 
古代エジプトでは、プラス利子ではなく、
減価するお金のシステムで、当時は穀物が通貨の役割を
果たしていましたが、食害や保管費用がかかるため、
そのまま保存するよりも長期的な利益をもたらす投資、
灌漑施設の整備や土地の改良にそそぎ込みました。
 
個人的には、エージングマネーというシステムが、
本来あるべき貨幣システムであると感じつつも、
現実、複数の通貨が存在する以上、
減価する通貨は当然損であり、国際金融の世界において、
どんどんお金が流出していくことは間違いありません。
 
「エンデの遺言」は、もともとNHKスペシャルで、
かつて特集され、NHK取材班がまとめた本ですが、
いままで、数々の経済に関する本を読んできましたが、
パラダイムの変換というか、最も根元的にお金を問う本で、
非常に深く考えさせられました。
 
貨幣システムに興味あるひとや、金融に携わっている人は、
一読の価値はあると思います。
 
「資本主義 利子をつくった ユダヤ人」 シチョウアタリ 
 

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