刑事弁護人の憂鬱 -9ページ目

刑事弁護人の憂鬱

日々負われる弁護士業務の備忘録、独自の見解、裁判外の弁護活動の実情、つぶやきエトセトラ

訴訟代理人のつぶやき「民法改正ノートその3 売買と契約不適合責任その1」

 

【概説】改正前民法において、売買契約において瑕疵担保責任に代表される売主の担保責任の規定が詳細に定められていた。

これらの規定は、従前、特定物売買に関する、いわゆる「特定物ドグマ」=特定物に瑕疵(欠陥)があっても現状のまま引き渡せば足り(改正前民法483条)、瑕疵のない完全物の引渡は債務内容ではないという理解を前提に、瑕疵担保責任は、特定物引渡と代金支払いの等価性を守り、公平の観点から善意の買主を保護するための、売主に課せられた無過失の法定責任であるという理解(瑕疵担保責任における法定責任説)が通説であった(例えば、我妻=有泉編・民法コンメンタール第2版追補版1067頁以下など参照)※。

しかしながら、改正法は、原始的不能も有効として、特定物であっても瑕疵のない完全物の引渡も債務の内容であり、その瑕疵は、履行不能ないし不完全履行の一種として、債務不履行になる以上、瑕疵担保責任を債務不履行責任として理解し(瑕疵担保責任における債務不履行責任説【契約責任説】の採用、権利の瑕疵など他の担保責任も同じ、従前の瑕疵担保責任の削除、他の担保責任を含めた修正の規定を設けた(契約不適合責任)。

すなわち、①従来の法定責任説がいう「瑕疵」担保責任等は廃止され、権利ないし目的物の瑕疵履行(不完全履行)は売買目的物の種類、性質、数量などに関する契約不適合責任という概念に解消され各種規定が整備された(従来の契約責任説の考えを採用。潮見佳男・新債権総論Ⅰ199頁以下参照、日本弁護士会編・実務解説改正債権法377頁以下参照)。

そして、改正法は、契約不適合責任の内容として、②従来、瑕疵修補請求といわれていた買主の追完請求権(改正法562条)、③追完不能の場合の買主の代金減額請求権(改正法563条)を明文で認め、その他の詳細な規定をおいている(新設)。なお、損害賠償は債務不履行の改正法415条以下、解除については改正法541条以下の一般規定の適用を前提とする。

更に売買契約の規定に関し、④従来の判例通説の解釈を明示する改正も一部行われている(解約手付け危険の移転に関する規定など)

 

※特定物と瑕疵担保責任の法的性質

 特定物に関して、改正前民法は以下の規定を置いていた。

 

(特定物の引渡しの場合の注意義務)

改正前第400条 「債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。

(種類債権)

改正前第401条 (※改正法でも同じ)

第1項「債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。

第2項「前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。

(特定物の現状による引渡し)

改正前民法483条「債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。」

(債権者の危険負担)

改正前第534条

第1項「 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。

第2項「不特定物に関する契約については、第四百一条第二項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。

(売主の瑕疵担保責任)

改正前第570条

「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。」

(地上権等がある場合等における売主の担保責任)

改正法第566条

第1項「売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。」

第2項「前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。」

第3項「前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

 

 特定物とは、物の個性に着目した概念である。例えば、当事者が「地番 ※※区××35番地 地目 宅地 地積200㎡」の一筆の土地を売買の対象物とする場合である。これに対し、不特定物とは、物の個性に着目せず、ノートパソコン1台というように市場で流通していて代替性のあるものであり、種類物ともいう(401条)。

 一般的にいえば、特定物とは、売買の対象として具体的に特定された(当事者にとって)この世で一個しかなく、代替物を市場で調達すること(変更すること)が困難なものといってよい(具体的に特定された土地や建物、中古の自動車など)。

 もっとも、より正確にいうと、代替可能な種類物も401条2項により、特定すると特定物となるので(この意味では、すべての売買の対象物は、最終的に必ず特定により特定物として扱われることになる。)、当事者が合意すれば代替可能な特定物もあり得る(在庫品として倉庫に1個だけあったノートパソコンで売約済みとなったものなど)

 この意味で、特定物か不特定物・種類物の区別は、当事者の主観である【通説 奥田・前掲41頁、潮見・新総論Ⅰ188頁参照】。これに対し、代替性・不代替性は、取引通念によって客観的に判断される。但し、不代替性が特定物の前提とする理解もある【柚木】。

 そして特定物の引渡しについて、引渡まで債務者は保存義務があり、その程度は善管注意義務ととされ(改正前400条)、引渡しの際に現状引渡しで足りるとされた(改正前483条)。さらに特定物の引渡前に滅失等した場合、その危険は債権者が負担するという債権者主義の規定も定められていた(改正前534条)。

 既述したとおり、特定物においては、瑕疵・損失があっても、現状のまま引き渡せばよく、瑕疵のない完全物の引渡は債務の内容にならないとする考え(特定物ドグマ)が通説により支持されていた。

 

 改正前570条の瑕疵担保責任も、この特定物ドグマを前提とする原始的一部不能の特定物の引渡の不都合性を補完するため、債務不履行責任とは異なる売主の特別な法定責任との理解が通説となっていた(法定責任説。柚木、我妻など通説。我妻=有泉・前掲1067頁以下、奥田昌道・債権総論増補版161頁参照。)。これは、瑕疵担保責任の内容として、代金減額請求権や瑕疵修補ないし代替物請求(追完請求権)が定められていないことからも(改正前570条は、566条を準用するが、改正前563条は準用していない。)、債務不履行責任とは異質の責任という理解されていた(なお、権利の一部が他人に属する場合の改正前563条は、代金減額請求を認めており、また、他人の権利売買に関する改正前560条・561条の規定などからも、完全の権利の移転は、売買契約の債務の内容となっており、権利の瑕疵に関しては、改正前570条の瑕疵担保責任と異なり、法定責任と考える必要はない、つまり権利の瑕疵の担保責任つき、債務不履行責任の特則とする見解もあった【我妻=有泉・前掲1057頁。この見解は、担保責任を無過失責任、売主や買主の主観面(善意・悪意)、1年の期間制限など債務不履行責任一般とは要件効果が違うという認識をもっており、その意味で、一般の債務不履行責任とは異なると見ている。なお、権利瑕疵の場合、担保責任規定を優先させるが、売主に帰責事由がある場合は、債務不履行による契約解除・損害賠償請求が可能とし、両者の競合・選択的行使を認めているのは、奥田・前掲159頁~160頁。最判昭和41・9・8も参照。】)。

 

 これに対し、瑕疵担保責任を債務不履行責任の一種と解する契約責任説も有力に主張されていた(北川など。近時は内田貴・民法Ⅱ債権各論126頁以下など学説上支持を広げていた。)。この見解は特定物ドグマを批判し、不特定物に瑕疵担保責任を認める(☆)、追完請求権や履行利益の損害賠償請求を認めるなどが主張された。なお、法定責任説に立ちながら、不特定物の追完請求権(完全履行請求権)については、一般債権の消滅時効の10年と瑕疵担保責任の除斥期間の1年との不均衡から、信義則上期間制限する見解もあった(奥田昌道・債権総論増補版161頁参照)。

 

 特定物ドグマによれば、在庫品として倉庫に1個だけあったノートパソコンで売約済みの特定された売買目的物が引き渡し前に当事者の責めに帰すべき事由によらずに損傷・故障した場合、買主は代替物の請求※も修理の請求もできず、代金を支払わなければならない結果となるが、これは買主にとって酷であるし、取引通念にも反して妥当ではない。もちろん、改正前570条の適用により、解除や損害賠償請求で保護されるとしても、代替可能にもかかわらず、代替物請求ができないことや修理請求できないということの不合理は、法定責任説の立場では、当事者間で追完や代金減額を認める「特約」を設けない限り、解消はできない。また、従来、権利の瑕疵や不特定物の瑕疵については、瑕疵のないことが債務内容として認められているのに、特定物の瑕疵のみ、瑕疵のないことが債務内容とならないというのはバランスを欠く。履行可能ないし追完可能かどうかということと債務内容となるかということは、理論としては区別しうるものである。

 

 そこで、改正法は、従来の法定責任説を採用せず、上記契約責任説の立場を基礎として、売買の担保責任を規定を削除・修正・整備を図ったものである。

 

☆不特定物売買の判例

 判例は、不特定物の売買による引渡後、隠れた瑕疵が発見されても、いったん受領したからといって、完全な請求をすることができなくなるものではなく、「債権者が、瑕疵の存在を認識した上でこれを履行として認容し債務者に対しいわゆる瑕疵担保責任を問うなどの事情」がない限り、責めに帰すべき事由に基づく債務不履行の一場合として、損害賠償請求及び契約解除権を有するという(最判昭和36・12・15)。この判例については、不特定物売買に瑕疵担保責任が適用がほとんどなくなるとの批判があった(例えば、内田貴・前掲129頁など)。瑕疵担保責任か債務不履行責任かでは、損害賠償及び解除の行使期間で差異があるので、履行として認容して、不利となる瑕疵担保責任のみ請求する債権者は、事実上ほとんどいないからである。なお、改正法では、特定物も不特定物売買も契約不適合責任(不完全履行としての債務不履行責任)の問題となるので、本判例は意味を失うことになろう。

※不特定物売買の特定後の変更権

 改正前の学説には、不特定物売買の特定後に代替物の請求(変更権)が認められないのは不都合であるので、「特定」は種類債権を履行するための手段にすぎないとし、変更権を認める見解も有力であった(奥田・前掲45頁)。

 

 訴訟代理人のつぶやき「民法改正ノートその2 債務不履行・危険負担と解除制度その5(完)」

 

(債権者の責めに帰すべき事由による場合)

    改正法第543条

「債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。

 

※債権者の帰責事由による解除制限

 本条は、改正前民法543条但し書きと異なり、債務者の帰責事由ではなく、債権者に帰責事由がある場合の解除制限となっている(新設)。不履行につき帰責事由のある債権者に契約の拘束力、つまり反対債務からの解放を認めること相当でないからである(潮見・前掲243頁参照)。

改正前民法第543条

「履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

 

 

(解除の効果)

   改正法第545条

第1項「当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を現状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。」

第2項「前項本文において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。」

第3項「第1項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。」※

第4項「解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。」

 

※解除の効果と果実の返還

  本条項は、第2項の利息返還とバランスを図るため、受領時以降の果実返還を定めたものである(新設)。なお、第1項第2項と第4項は、改正前と同じである。それゆえ、従来の解除の効果に関する緒論点は、改正法においても解釈に委ねられる。例えば、解除の性質に関する直接効果説と間接効果説の議論や原状回復における給付不当利得論の適用など。

 

 (解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅)

  改正法第548条※

「解除権を有する者が故意若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。ただし、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない。」

 

※解除権者の故意等による解除権の消滅

 改正前民法の「行為若しくは過失」を「故意若しくは過失」に変更し(従前も故意若しくは過失の意味と解していた。我妻=有泉・前掲1028頁)、無意味な改正前民法548条2項を削除したものである。なお、本条が予定されるのは、履行後の損傷等であり、かかる債権者の故意若しくは過失がある場合、解除権の放棄と評価できるから(潮見・概要245頁参照)あるいは解除権を有する者が自ら目的物を損傷ないし返還不能にしたにもかかわらず解除権を認めるのは「信義則に反するから」である(改正前民法の解釈であるが、我妻=有泉・前掲1028頁)。

 

訴訟代理人のつぶやき「民法改正ノートその2 債務不履行・危険負担と解除制度その4」

 

 イ 解除制度

   解除には、両当事者の合意に基づく合意解除、一定の事由の発生により解除権を留保する約定解除、一定の事由の発生により、当事者の一方が法律の規定により解除権を取得する法定解除がある(潮見・新総論Ⅰ551頁参照)。民法が規定するのは法定解除であり、一方的意思表示により契約関係を終了させる形成権である。類似の制度として、意思表示の無効・取消制度がある(無効は、当初から契約が無効であり、取消は有効な契約を事後的に取り消す【遡及的無効】という違いはあるが、事実上の契約関係を終了させるという点で共通し、その清算処理について、いわゆる給付不当利得の法理が問題となるので、契約の解除と類似する。)。

   改正法の法定解除制度の趣旨は債権者の「契約の拘束力からの解放」である(後述)。

 

      (催告による解除)

  改正法第541条

「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りではない。」※

 

※催告解除と軽微性の抗弁

 本条は、改正前民法第541条に但し書き(軽微性の抗弁…最判昭和36・11・21、最判昭和43・2・23など参照)を加えたものである。☆

 催告による解除について、履行不能は、改正法第542条の無催告解除の適用となるから、もっぱら履行遅滞が本条の適用となる(改正前民法の解釈であるが、我妻=有泉編・コンメンタール民法第2版追補版1041頁参照。但し、不完全履行のうち追完が可能な場合は、本条を類推して催告解除を認めるのは、同・1017頁)。

 なお、本条を含め、改正法の解除について、債務者の帰責事由は要件ではないと解されている(日弁連編・前掲125頁参照)。改正法は、「債務者に対する責任追及の手段としての解除制度から、債務の履行を得られなかった債権者を契約の拘束力から解放するための手段としての解除制度」に変更したためである(潮見・概要241頁)。

 すなわち、改正法下では、原始的不能も有効として、債権消滅構成の危険負担を削除した立法態度をとったため、改正前民法543条但し書きや通説(例えば、我妻=有泉編・前掲1016頁は、「解除は債務不履行の制裁的効果」であり、履行遅滞にも債務者の帰責事由を要求する。)のように債務者の帰責事由を解除の要件とするのは、反対債務を負う債権者に返って酷であるし、帰責事由を要件とする債務不履行の損害賠償責任とは別異に解除制度を解することにも合理性があるからである(私見)。

 但し、改正法は、「契約からの解放という解除制度」を危険負担も射程においた一元処理構成を徹底するものではなく、既述したとおり、危険負担を履行拒絶権構成として理解し、解除と併存する履行拒絶権の抗弁の創設という制度設計をとっている。

 

改正前民法第541条

「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めての履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。」

改正前民法第543条

「履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

 

☆軽微性の抗弁の具体例

 売買にあたり、土地の租税の納付に関する付随的な約束を合意し、その不履行があっても解除を認めない判例(最判昭和36・11・21 主たる目的達成に必須的でない付随的義務の不履行にすぎないという)などが参考になる。

 

   (催告によらない解除)

  改正法第542条※

第1項「次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。

一 債務の全部の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき

三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。

四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。

五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明かであるとき。」

 

第2項「次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。※※

一 債務の一部の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。」

 

※無催告解除の類型

 従来の裁判例や学説を考慮して、催告を要しない無催告解除の類型として、本条は、以下の場合を定める。特に債務者の履行拒絶の意思が明確に表示された場合を履行不能と同視するという規定(A②と③bB②)と催告しても契約目的達成の履行の見込みがない場合の無催告解除の規定A⑤)を新設したことは、大きな特色である。

 

A 契約の全部解除の場合(本条1項)

①全部の履行不能(改正前民法第543条参照)

全部の履行の拒絶意思が明確に表示された場合(実質①と同じ 新設

a一部の履行不能(改正前民法第543条参照)またはb部の履行を拒絶意思が明確に表示された場合(実質 aと同じ 新設)、残存部分では、契約の目的達成が不可能な場合(従来の判例通説の解釈)

④定期行為(特定の日時又は一定の期間内の履行が契約の目的となっている場合)について、債務者が履行せず、その期間が経過した場合(改正前民法542条参照)

⑤上記①~④以外で債務者がその履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明かであるとき(新設)

 

B 契約の一部解除の場合(本条2項)

①一部の履行不能(改正前民法543条参照+従来の判例通説の解釈)

②一部の履行拒絶意思を明確に表示されたとき(実質①と同じ 新設)

 

※※契約の一部の無催告解除

 本条1項3号前段と2項1号の一部不能の場合の解除規定は、改正前民法第543条が、一部不能でも常に契約全部の解除が可能なように読むことができたが、通説は、信義則による制限解釈をし、債務が不可分・契約の目的が達成できない場合に全部解除、それ以外は一部解除と解していたことから(我妻=有泉編・前掲1021頁)、この解釈を整理し明文化したものである(日弁連編・前掲130頁参照)。

改正前民法第543条

履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」