宿命のライバル
ちょっと長くなりましたが、アファームド 対アリダー を振り返ってみましょう。
馬名 | アファームド | アリダー | 着差 | |||
月日 | レース名 | 人気 | 着順 | 人気 | 着順 | |
06.15 | ユースフルS | 2 | 1 | 1 | 5 | 5 |
07.06 | G・アメリカンS | 2 | 2 | 1 | 1 | 3.1/2 |
08.27 | ホープフルS | 2 | 1 | 1 | 2 | 1/2 |
09.10 | フューチュリティS | 1 | 1 | 2 | 2 | ハナ |
10.15 | シャンパンS | 1 | 2 | 2 | 1 | 1.1/4 |
10.29 | L・フューチュリティ | 2 | 1 | 1 | 2 | クビ |
05.06 | K・ダービー | 2 | 1 | 1 | 2 | 1.1/2 |
05.20 | プリークネスS | 1 | 1 | 2 | 2 | クビ |
06.10 | ベルモントS | 1 | 1 | 2 | 2 | 頭 |
08.19 | トラヴァースS | 1 | 2 | 2 | 1 | *1.3/4 |
●1戦目 ユースフルS
由緒ある準重賞でアリダーのデビュー戦。新馬戦をスルーして準重賞を選ぶあたりにアリダー陣営の自信が窺える。アリダー1番人気に対してアファームドは対抗馬だったが、結果はアファームドの逃げ切り勝ち。アリダーは直線よく伸びたが5着を確保するのがやっとだった。
●2戦目 グレートアメリカンS
未勝利戦を勝ったアリダーがここでも1番人気。直線でアファームドを捕えると競う間もなく3馬身1/2つき放してアリダーが人気に応えた。
●3戦目 ホープフルS(GⅠ)
またまたアリダー1番人気。直線で抜け出したアファームドがアリダーの猛追をかわして1着。アリダーは1/2馬身差の2着。
●4戦目 フューチュリティS(GⅠ)
始めてアファームドが1番人気に。激しい叩き合いの末、写真判定でアファームドが首差勝利。
●5戦目 シャンパンS(GⅠ)
引き続きアファームドが1番人気。アファームドが直線で粘るダービークリークロードとやりあっている間に、アリダー一気の強襲。2頭を1馬身1/4ちぎって優勝した。
●6戦目 ローレルフュチュリティ(GⅠ)
前走を受けてアリダー1番人気。4頭立て。レース中盤から2頭のマッチレースに。一度はアリダーが先頭に立ちながらも最後の最後で巻き返されてアファームドの首差勝ち。
・2歳はアファームドの4勝2敗。フリーハンデ、アファームド126に対し、アリダー125。アファームドが2歳チャンピオンに輝く。
●7戦目 ケンタッキーダービー(GⅠ)
アファームドはカリフォルニアをステップしてケンタッキーへ、アリダーはフロリダからケンタッキー入りして相見える。11頭立てでアリダー1番人気。2、3番手から抜け出したアファームドがそのまま押しきって1冠。アリダーは1馬身1/2差の2着。
●8戦目 プリークネスS(GⅠ)
アファームドが1番人気を奪還。7頭立て。先行逃げ切りを図るアファームド、後方からじりじり詰め寄るアリダー。アリダーがアファームドの首まで迫った所でゴール板を通過。アファームドが2冠達成。勝ち時計1分54秒2/5はセクレタリアト、シアトルスルーと同タイム。
●9戦目 ベルモントS(GⅠ)
他馬が出走を見合わせ5頭立て。完全なマッチレースの様相でアファームド1番人気。スタートから先頭に立つアファームドを1馬身後ろでアリダーが追走。歴史に残る叩き合いの末、アファームドが3冠を制した。てアファームドに騎乗したS・コーゼンは弱冠18歳にして3冠ジョッキーとなった。
●10戦目 トラヴァースS(GⅠ)
4頭立て。アファームド1番人気。執拗に絡んでくるシェイクシェイクシェイクと競うアファームド。アリダーが2頭のインを突くと、内ラチとアファームドの間に挟まれてアリダーが失速。アファームドが進路妨害を取られてアリダーが繰り上がり1着。両者の最後の対決となっただけに後味の悪いものとなった。
・3歳フリーハンデ、アファームド136、アリダー135。アファームドが年度代表馬となった。
・通算成績はアファームドの7勝3敗。しかし肝心なところでは全てアファームドが勝った。
「3冠のどのレースでも、一度の不運もかぶることはなかった。ただひとつ、アリダーがアファームドと同じ年に生まれてしまった、という不運を除いては…」というのはアリダーのジョン・ヴィーチ調教師のお言葉。(「20世紀のアメリカ名馬100」週間Gallopより)
ちなみにアファームドの引退式の日、主戦騎手のS・コーゼンは大井競馬場開催の日米チャレンジCに参戦すべく来日していた。同カップでは、タガワテツオーで青雲賞を勝つなど25戦して7勝を挙げている。
アリダーはカルメット牧場で種牡馬入り。アファームドもスペンドスリフト牧場を経てカルメット牧場に移動し、2シーズンほど隣併せの馬房で生活したが、種牡馬成績ではアリダーがアファームドを圧倒した(アリダーの代表産駒はアリシーバ 、イージーゴアー 、ストライクザゴールド、クリミナルタイプ等)。1982年にカルメット牧場のオーナー、ルシル・P・W・マーキー夫人が他界。アリダーが16歳で急死する(1990年)と後を追う様にカルメット牧場が破産。アファームドはジョナベル牧場に移籍したが、アリダーを超える産駒を出すことは出来なかった。
アファームド (Affirmed)
1975~2001 牡 栗毛 米国産
Exclusive Native 栗 1965 |
Raise a Native | Native Dancer |
Raise You | ||
Exclusive | Shut Out | |
Good Example | ||
Won't Tell You 鹿 1962 |
Crafty Admiral | Fighting Fox |
Admiral's Lady | ||
Scarlet Ribbon | Volcanic | |
Native Valor |
米国で29戦22勝 (GⅠ14勝)
主な勝ち鞍:米国三冠、サンタアニタ・ダービーGⅠ、ハリウッド・ダービーGⅠ、ウッドワードSGⅠ、ジョッキークラブ・ゴールドCGⅠ
2歳時9戦7勝。最優秀2歳牡馬に選ばれたが、意外にもデビュー戦は6番人気だった。3歳はサンタアニタ・ダービー(G1ダ1800m)8馬身、ハリウッド・ダービー(G1ダ1800m)2馬身など4戦4勝し、18歳の若き天才S.コーゼンを背にしてケンタッキーに乗り込むとライバル・アリダー との激戦を制して史上11頭目の、そして20世紀最後の米国三冠馬となった。9月マールボロ・カップH(G1ダ1800m)で4歳馬シアトルスルー と夢の三冠馬対決が実現。1番人気に支持されたがシアトルスルーに先手を奪われるとそのまま逃げ切りを許して3馬身差の完敗。4歳も現役を続け、ハリウッド・ゴールドC(G1ダ2000m)に勝ち収得賞金200万ドル突破。ケルソ の持つ収得賞金世界レコードを更新し、ジョッキークラブ・ゴールドC(G1ダ2400m)で年下のニ冠馬スペクタキュラービッド を倒して引退に花を添えた。
参考文献:
『伝説の名馬2』 p.61-71
『新・世界の名馬』 p.400-414
『世界名馬ファイル』 p.114-117
【うまコラム】⇒⇒宿命のライバル
【参考】⇒⇒アファームド (Affirmed)の末裔
アームド (Armed)
1941~1964 セン 黒鹿毛 米国産
Bull Lea 黒鹿 1935 |
Bull Dog | Teddy |
Plucky Liege | ||
Rose Leaves | Ballot | |
Colonial | ||
Armful 青 1933 |
Chance Shot | Fair Play |
Quelle Chance | ||
Negrina | Luke McLuke | |
Black Brocade |
米国で81戦41勝
主な勝ち鞍:ワシントンH、ピムリコスペシャル、ワイドナーH(2回)、フィラデルフィアH、サバーバンH、サイソンビーマイル
気性の悪さから2歳3月に去勢。3歳でデビューし緒戦を8馬身、次戦を3馬身差で勝ち将来を期待されるも、クラシックには縁が無くステークス勝ちも無し。4歳時ベン・ジョーンズ厩舎から息子のジミー・ジョーンズ厩舎へ転厩して能力開花。下級戦6連勝のあとステークスに4戦連続2着し、ワシントンH(ダ2000m)やピムリコスペシャル(ダ1900m)に勝利した。130ポンド(約59キロ)あまりのハンデを課せられながら4、5、6歳と走り続け、この3年間で50戦32勝2着12回、19のステークス勝ち。.880の連体率を残し、3位入着を逃したのは3度だけであった。6歳時年度代表馬に輝くもセン馬の宿命か10歳まで現役を続け、引退するまでにタイ記録を含め8つのレコードを残した。6歳9月のマッチレースではアソールト 相手に8馬身差で圧勝し、前年の米三冠馬の戦意を喪失させた。
参考文献:『20世紀のアメリカ名馬100』 39位 (週刊Gallop収録)
アリシドン(Alycidon)の末裔
アリシドン(Alycidon)の血を持つ日本の馬をご紹介。
アリシドン産駒のアルサイド(Alcide)は*リマンドの父となり、*リマンドはメジロオーロラ、アグネスレディの父となりました。
ご存知の通り、
メジロオーロラはメジロティターンと配合されてメジロマックイーンの母となり、アグネスレディはアグネスフローラを通じてアグネスタキオンの祖母となりました。
Alycidon
↓
Alcide
↓
リマンド
↓
メジロオーロラ
↓
メジロマックイーン
Alycidon
↓
Alcide
↓
リマンド
↓
アグネスレディ
↓
アグネスフローラ
↓
アグネスタキオン
アリシドンはとても頭が良く思慮深い馬で、何か気になる事があると走るのを嫌がるクセがあったそうです。
アグネスタキオンの引退レースとなった皐月賞で、脚元に異変を感じたのか、ゲート入りを嫌がったタキオンの姿に、アリシドンの面影を見るのは、、、さすがにちょっと強引でしょうか…。
アリシドン (Alycidon)
1945~1963 牡 栗毛 英国産
Donatello 栗 1934 |
Blenheim | Blandford |
Malva | ||
Dolleana | Clarissimus | |
Duccia di Buoninsegna | ||
Aurora 栗 1936 |
Hyperion | Gainsborough |
Selene | ||
Rose Red | Swynford | |
Marchetta |
英国で17戦11勝
主な勝ち鞍:アスコット・ゴールドC、グッドウッドC、ドンカスターC、キングジョージⅥS、ジョッキークラブS
体高が高くつなぎの甘い大型馬で、成長が遅れた為にクラシック参戦はセントレジャー(芝3000m)から。スローペースに押し出されて先頭に立つとゴール前でブラックターキンに差されて2着に終わった。その後ペースメーカーを付けてレース運びを覚えるとめきめきと力をつけ、4歳アスコット・ゴールドC(芝4000m)では2頭のペースメーカーの後ろで足を貯めるとブラックターキンに5馬身差をつけて快勝。グッドウッドC(芝4200m)では粘るライディングミルを退けて2馬身差勝ち。続くドンカスターC(芝3600m)を直線独走の8馬身差で圧勝し、アイソナミ以来69年ぶりに長距離カップ三冠を達成した。セントレジャー2着以後は引退まで無敗だった。引退後、“キングジョージ”(芝2400m)の設立や主要レースの距離短縮が相次ぎ、欧州・ステイヤー全盛時代の最後の名馬となった。
参考文献:『伝説の名馬1』 p.125-135
【血を受け継ぐ者】⇒⇒アリシドン(Alycidon)の末裔