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Drunk on Speech

このサイトは慶應義塾大学英語会Chief of Speechだった作者が、今まで学んできたこと・感じてきたことを公開しているものです。

大学生向けのエッセイを次々と公開していく予定です。どうかみなさんのSpeech作りの参考にしていただければと思います。


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3月や8月になると、「Topicが全然見つからなくて」とぼやいている人をよく見かけます。そういう人に限って、キャンプの直前にどうしようもなくなって、図書館からどうでもいいTopicを見つけて来るのです。その結果、そのSpeechはどこか表面的で、どこか平面的で、どこか人工的になってしまいます。

本当に素晴らしいTopicというものは、探そうと思っても中々出てくるものではありません。ですから、はじめは質よりも量をこなすことが必要なのです

こういう風に言うと、「僕は100個のTopicをあたったのですが、全部駄目だしされてしまいました」と文句を言う人が出てきます。しかし、こう言う人はTopic探しの本質というものがわかっていません。本当に素晴らしいTopicというものは、今まで探してきたネタの累積数に比例してくるからです。

今まで100個のTopicを考えてきた人は、次の200個までに1つの素晴らしいTopicを見つけることができるでしょう。そして、今まで200個のTopicを考えてきた人は、次の300個までに5つの素晴らしいTopicを見つけることが出来るのです。今まで考えてきた物の数が増えれば増えるほど、頭にひらめいてくる素晴らしいTopicの数も比例して増えていくのです。Topic選びの感性は累積数によって鍛えられてくるからです。

もう1つTopic探しがもつ厳しい側面があります。それは、常に定期的にTopicを探していかないと、今まで蓄えてきた有効累積数がどんどん減ってきてしまうということです。シーズン直前になって慌てて200個のTopicを探してきても、次のシーズンまでに何もしなければ、有効累積数は0になって、せっかく養った感性も消え去ってしまうのです。

大きな山をあなたが登っていることを想像してみてください。山の麓は日当たりが悪く、果実も少ししかなっていません。山を登れば登るほど、日当たりがどんどんよくなって、色々な果物を手にすることが出来ます。しかし、あなたが登っているのは普通の山道ではありません。頂上から麓にかけて大きな下りのエスカレーターがあって、あなたは果実を求めてその下りのエスカレーターを逆走しているのです。ですから、途中で歩みを止めてしまうと、いつのまにかエスカレーターに麓まで押し戻されてしまいます。

『勝利のために15』
下りのエスカレーターを逆走し続ける


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「大会に応援に行くのは大切だ」というのを聞いたことがあるでしょう。大会に行き、優れたSpeechを生で聞くことによって刺激を受け、ライバルを作っていく。どれも一人で図書館にこもりながらSpeechを作っている人にはできない経験です。

もう1つ大会に行ったらやってもらいたいことがあります。それは、それぞれのSpeechに対して、心の中で100個の批判を繰り出してみるということです。

ほとんどのSpeechは壇上に上がって席に戻るまで、QAを含めると大体11分くらいかかります。秒数にすると660秒ですから、6.6秒に1個の批判を作らなくてはなりません。これは本当に頭を使うのです

まず壇上への上がり方はどうか。挨拶の仕方の感じが良いか。イントロは面白いか。内容に深みがあるか。エンディングは心に余韻を残せているか。QAでの受け答えはどうか。退場する時の姿勢はどうか、等々。多くの毒舌を心の中でSpeakerにぶつけるのです。

重要なのは、「俺だったらこうするのに」、「私だったら違う考え方をするのに」という事を必ず同時に考えるということです。批判だけなら誰にでもできます。批判するからには常に自分の代替案を提示しなくてはなりません。批判とは考えることなのです。

こんなことを言うと、「Speakerに対して失礼ではないか」と言う人がいます。しかし、よく考えてみてください。1つの大会は平均して10人くらいのSpeakerが登場します。ですから代替案を1000個作らなくてはならないのです。これは一つ一つのSpeechに一点集中していなくてはできない仕事です。つまり、観客の中でそのSpeechを一番親身に聞かなくてはならないのです。

中には、批判したくても批判できないところがあります。それがそのSpeechから盗むべきことです。批判したくてもできなかったという悔しさを体感した人こそが、そのSpeechを堪能することができるのです。

頷くだけならサルにもできます。しかし、批判して考えることは人間にしかできません。

『勝利のために14』
批判して堪能する


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ESSの集団でのSpeech活動といってまず思いつくのがBrain StormingとFlow Bashingです。ともに原稿を書く前に行われるのが一般的です。

僕はもうひとつ活動に取り入れたほうが良いのではないかと思うことがあります。それは、「誰でもいいからペアを組んで、お互いのSpeechに関して100個の質問を出し合う」ということです。

重要なのは、必ずお互いの原稿を完成させて、それを熟読した上で質問を出すということです。原稿を完成させる前に質問をしても、それはBrain Stormingと大差ありません。原稿がないのだから100個の質問自体が空虚なものになってしまいます。そして、せっかく質問してもらったことも原稿作成の際は忘れられてしまう可能性が高いのです。

さらに大切なことは、必ず100個の質問をひねり出すということです。Questionerが本番でやるようなカッコイイQuestionばかり意識しなくても構いません。とにかく、何でもいいから100個の質問を作り上げるのです。

この100個の質問がそのSpeechに欠けている点を次々と炙り出していくのです。自分が経験したこともないようなことを偉そうに語っているSpeakerには、どこで、何を、どの様に、いつ行えば良いのかを質問してみましょう。僕達の意見を表明すべきだと息巻いているSpeakerには、どういう意見を、どんな手段で、どこに対して、どれくらいの規模で行えばよいのか聞いてみればよいのです。主題と外れたことばかり延々と述べているSpeechに対しては、何が主題で、どういう具体例があるのかを聞き出せばよいのです。

100個作らなければならないという制約が科されると、質問するほうはわかった気になることができません。わかった気になっていては100個の質問は作れないのです。

質問されるほうは100個の質問に対して答えなくてはなりません。その時初めて、自分はわかった気になっていてたけで、実は何もわかっていなかったことに気づくのです


無知の無知になっているのでは優勝することはできません。無知の知を自覚し、知を切り開いた者だけが優勝の栄冠を手にできるのです。

『勝利のために13』
無知の無知から抜け出す


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日本の会社ではしきりに本業回帰が叫ばれています。もっとも強みとする部分に経営資源を集中させる事を怠り、本筋から外れた事業に投資を重ねていた反省です。

実は多くのSpeaker達も、どうでもいい情報を提示するのに時間を割き、自分のアイデアに関しては数行で済ませています。これもPHCSという呪縛がなせる業なのです。

次のSpeechは、糖尿病の闘病経験がある作者が効果的な予防方法について主張したいと思っているものです。

「糖尿病とは尿に糖が出ることから名付けられた病名ですが、これは血液中のブドウ糖が増えすぎて尿に糖が溢れてきた状態です。実際は血糖値をもとに診断します。原因はインスリン作用の不足、つまりインスリンの供給不足と、インスリン標的臓器での感受性の低下が関係します。病態を整理して考えるうえで、インスリン分泌不全、インスリン抵抗性、ブドウ糖毒性の3つが重要なキーワードになります(以下延々)」

このSpeakerは糖尿病の定義についてSpeechで語りたかったのでしょうか。この後、このSpeechは合併症についてのHarmを強調し、Causeは食生活と運動不足で、僕は運動を定期的にしていて食事にも気を使っていますという数行のSolutionで終わるのです。

作者の主題は「効果的な予防方法」にあったはずです。そうだとすると、文量を割く場所を間違っています。どうしてもジム通いが続かない人、玄米が嫌いな人に、どうすれば運動を楽しめるのか、玄米をおいしく食べることができるのか等を、作者の経験をもとに具体例を色々と示してあげればいいのです。それこそがOriginalityなのです。

自分の主張に関係のない部分は削らなくてはなりません。ただ削るだけでは駄目です。骨が見えるくらいバサッと切り捨てるのです。PHCS型などぶち壊さなくてはなりません

ためしに自分のSpeechを携帯メールで送ってみてください。携帯メールの字数制限に込めようとしたことがあなたのSpeechの骨です。あとはあなたの経験をもとに、あなたのOriginalityを肉付けしていけばいいのです。

『勝利のために12』
自分のSpeechを携帯メールで送ろう


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推理小説を読み始めたとしましょう。期待していたのに、序盤で、「犯人はこいつだ」という事がわかってしまったらどうしますか。後の展開がわかってしまったのですから、もうその本の続きを読もうとはしないでしょう。Speechでも全く同じ事がいえます。

ESSに所属している人なら、一度はPHCSという言葉を聞いたことがあると思います。詳しい解説はKUELのWebに載っているので参照してください。実はこのガチガチの型がSpeechを面白くなくしている元凶なのです。

「朝一杯の命の水」と題された次のSpeechのイントロを見てください。

「目覚し時計がけたたましくなり始めた。昨晩の接待のアルコールせいで、彼は仕事の悪夢にうなされていたのだ。彼は起き上がり、バスタブに身を沈めた。心地よさに包まれながら、彼は再び眠りに引き込まれていく。彼は知らない、ここからが本当の悪夢だということを・・・。今日は皆さんに、『あなたの家でも起こりうる溺死』についてお話します。」

さて、このSpeechがどの様に展開されるのか予想してみてみましょう。このあと彼は、風呂場で起こる溺死が頻発していることを述べるでしょう。次のParagraphでは、その事故で多くの人命が失われていることを強調します。事故の原因は、過労や多量のアルコールの摂取、朝型は血液の粘性が高くて意識が失われやすいことなどを言うでしょう。そして最後に、「朝一杯の命の水」をまず飲むべきなのだと締めくくられるのです。

実際Judgeをしていると、Paragraph単位で次に何が来るのか読めてしまうSpeechが数多く存在します。上のSpeechにしても、イントロを聞いた瞬間に最後までの展開が読めてしまいました。そして、彼は僕が思った通りにSpeechを進めてくれたのです

問題はほとんどのSpeakerがPHCSフォーマットを採用していることにつきます。型通りだから先が読める、先が読めてしまったら面白くない、というわけです。ですから、安易にPHCS型に頼っているとJudgeに居眠りされてしまいます。

あなたが型破りでないと、Speechは面白くないのです

『勝利のために11』
型破りになろう