後輩からTopicの相談を持ちかけられたときに、「これじゃあ到底優勝できないな」と言わざるを得ないものが少なくありません。そもそも、Topicは一発で見つかるものではないのです。100個近いTopicを色々と出していくうちに、「これならイケル!」というものが出てくるのです。
ですから僕は、入賞ならするかもしれないけれど、優勝する可能性はほとんどないと思われるTopicについては、自分の思うところを述べた上で、他のものにしたほうが良いんじゃないですか、と言うようにしています。期待している人ほど正直に感想を言うのです。
他の人の意見も芳しくない場合、それなら違うものにしようと新たなTopicを探しに行く人と、自分は自分がやりたいTopicをやればいいんだと我が道を行く人の2つに分かれます。
「日本の医療ミスには許しがたいものがある。不正確なカルテ、証拠隠滅、裁判になっても、第3者の専門家としての意見は同業をかばうばかり。私は決してこんなことを許すわけにはいきません。カルテを欧米並みに厳しくし、裁判制度を整え、被害者が真に救済されるシステムを確立するべきなのです」
僕はこのTopicを聞いた時に、これでは優勝できないなと思いました。なぜなら、カルテや裁判制度の話はよく言われていることで、作者のOriginalityを加えることは難しいと感じたからです。そして、実際のところ彼女にしてもドラえもんのポケット型の提案しかできていなかったのです。しかし彼女はこだわりました。「私はどうしてもこの現状が許せない。だから伝えたいのです。だから私は誰が何と言おうとこれでいきます」
彼女以外にも、多くの人が「どうしても許せないからこれでいく」という台詞を言って我が道を行きたがります。もちろんそれは個人の自由なのでそこから先は止めません。しかし、考えてみてください。「どうしても許せないこと」に対して自分が考えていることが、「一般的によく言われている単純なこと」というのは悲しくないですか。
こだわりというのは、単純な自分の意見に固執することではありません。「このTopicでいこう」というGoサインを出す基準を、常に高く持つということなのです。
『勝利のために10』
安易にGoサインを出さない
自分が得意分野としていることを話そうとなると、どうしてもそのことをあまり良く知らない人達に対して説教口調になってしまうことはよくあります。無知であることを注意するということ自体は悪くないのですが、それだけで終わってしまうと聴衆はしらけてしまうのです。時には反感だけ買って終わるということも多々あります。
無知であることを注意するからには、それでは知を得た後にどんな良いことが待っているのかを教えてあげなくてはなりません。例えばこんなSpeechだったらどうでしょう。
「大体日本人は宗教感に乏しく、神社に行ったり寺に行ったりと節操がない。それだけならまだしも、キリスト教のこともイスラム教のことも全く知らないのだから国際人として活躍する術を持っていない。このままではいらぬ誤解を招いて大恥を掻く可能性が強い。戦争だって起きてしまうかもしれない。だから私達は宗教に関する知識をつけなくてはならないのである」
これだけ聞いていると、「何にも知らなくて悪かったな!」という反感を買いかねません。そうするのではなくて、「宗教に関して色々と知っているとこんなに良いことがある」という具体例をふんだんに込めてあげる必要があります。
例えば、カトリックのアメリカ人とディナーを共にしている時に、宗教の話が出たらどんな話をすれば良いのか。仏教とキリスト教の違いはどんなところにあって、それを示してあげるとどんな相互理解がはかれるのか等、場面場面で役立つことを示してあげましょう。それらは、実際にそういう場に立った事のあるあなただけが語れるアイデアなのです。
残念ながら私は宗教に関してはほとんど知識がないので、そういうアイデアをSpeech大会で是非とも聞きたいと思っています。そういうことはすぐにでも実行できるからです。
無知であるということの説教は概して一般論になりがちです。反対に、「こうすれば得るものが大きい」という提案は、そういう経験をした者だけが学べるOriginality溢れるものなのです。けちけちしないで、あなたが勝ち取った秘密のテクニックをみんなに教えてあげましょう。
『勝利のために9』
テクニックをお披露目する
勉強熱心な人ほど陥りやすい罠があります。それは、先生が授業で言っている事を行えば、ドラえもんのポケットの様にすべての問題を解決してくれるという勘違いです。
確かに先生が授業で言っていることはあながち間違っているわけではありません。しかし、個別にその制度や仕組みを導入することはたやすい事ではないし、できたとしても効果が現れるかどうかはわからないのです。
「日本の失業率が上昇しています。そこで私は提唱します。欧米の様に仕事のプロセスマップを詳細に書きましょう。そして、各プロセスを複数でシェアしましょう。これがワークシェアリングです。オランダではこの制度を導入して失業率が劇的に減りました」
確かにワークシェアリングは失業率の低下に一役買うかもしれません。しかし、それを導入することはたやすい事ではないし、導入後の効果にしても疑問が残る点があります。こういう場合、自分の身近な物事に置き換えてみると良くわかるのです。
ためしにESS活動に関するプロセスマップを詳細に全部書いてみてください。Speech活動1つとってみましょう。大会出場・教育・大会運営等の大項目が数十個は出てくるでしょう。さらに、各大項目に従属する中項目が数十個、小項目が数十個出てくるのがわかるでしょう。小項目は合計するとSpeech活動だけで数千個になるかもしれません。
仮にProcess Mapが書けたとしましょう。その各Processをシェアしたがらない人も出てきます。1年生の教育をChiefと2年生にシェアしてもらうとなったらどうでしょう。自分の得意分野を後輩に奪われたくないと抵抗するChiefも出てくるはずです。
ESS活動1つとっても、様々な困難や軋轢が待っているのがわかるでしょう。ましてやこれが大企業となれば問題はさらに複雑化します。
ドラえもんのポケットを出すということは、人生ゲームをやって人生がわかったと言っているのと同じです。結果のおいしさだけつまみ食いして、そこに辿り着くまでの苦しい道のりを無視しては駄目なのです。
『勝利のために8』
人生ゲームでは人生はわからない
人に何かを頼もうとしても、正攻法ではうまくいきません。例えば生命保険のおばちゃんがそうです。新入りのおばちゃんというのは当たり前の情報で攻めてきます。「もう一人前になったんだから。大切な人いるでしょ。保険くらい入っておかないとね」。ところが、ベテランのおばちゃんになると違います。最初は世間話をしているのです。それを繰り返すうちに、どうしてもそのおばちゃんの役に立ちたくなってきてしまうのです。そしていつのまにか契約してしまっています。きっと会話の中に独自の魔法があるのです。
Speakerも人に何かをしてもらいたいと提案するからには、正攻法で勧誘したってらちがあきません。
「世界にはワクチンを待っている子供たちが大勢います。なんと1秒に1人の子供が注射を受けられなくて死んでいるのです。その注射の値段はいくらだと思いますか。たったの100円です。コーヒー1杯我慢するだけで5人の命が救えるのです」
これだけで聴衆が動くと思ったら大間違いです。なぜならここで言っていることはすでに新聞の広告にも載っていることだし、テレビのCMでは苦しむ子供の表情まで流しているからです。それでも多くの人は動かないのです。
営業マンというのは何千何万というお客様に断られる中から自分の営業スタイルを確立していくのです。そして、そこで得たノウハウのもとに新たな顧客を開拓していくのです。
見ず知らずの聴衆に何かしてもらいたいのなら、まずは自分がよく知っている家族を口説いてみたらどうでしょうか。まずはお父さんにコーヒーをやめてもらって、それで浮いたお小遣いを定期的に寄付してもらったらどうでしょう。お母さんにはアクセサリーを買うのをやめてもらって、お姉ちゃんにはケーキを食べるのをやめてもらえばいいのです。
ところがどっこい、家族だからといって簡単に自分の言うとおりにしてくれると思ったら大間違いです。だめなら何度もチャレンジすればいいのです。どうしたら動いてくれるのか悩めばいいのです。そこで独自のノウハウを得ることができれば、それをSpeechに込めましょう。それがあなたのOriginalityです。
『勝利のために7』
トップセールスマンになる
日本人は何だかんだ言っても、お上は何でもしてくれると思っているようです。株価を上げ、地元に高速道路を引いてくれ、米が余ったら補助金をくれる。
僕達はそのような光景を冷ややかに見ています。ですが、不思議なことにSpeech大会となるとお上の地位が一変し、スーパーマンのごとくあらゆることを解決していくのです。
「最近はパソコンを使いこなせないお年寄りの世代で、デジタルデバイドが深刻化しています。そこで政府はお年寄りがパソコンを使いこなせるようにパソコン教室を主催するべきです。さらにお年寄りのためのネットワークコミュニティーを作るべきでしょう」
政府が開くパソコン教室と政府が主催するコミュニティー!!
面白いものができると思いますか。普段は政府のことをクリエイティブの対極に位置するものとこき下ろしていながら、最も創造力を発揮させるような場面は政府にお任せ。結局、何でも政府にボールを投げる人はアイデアを何も持っていない人なのです。
お年寄りはどんなところでパソコンにつまづくのか、どうすれば理解が早くなるのか、お年寄りに喜ばれるコミュニティーはどんなものか、どんなコンテンツを作れば人が集まるのか。
これらは政府に考えさせるのではなくて、Speaker自身がSpeechで述べるべき問題です。そこで悩んで苦しんだ結果として出てきたアイデアがOriginalityになるのです。
ちなみに、政府に頼むのは以下の2つを同時に満たしたときのみです。
1.民間だけでは供給されないか、もしくは十分に供給されないサービスを提供する時
2.そのサービス提供にかかるコスト以上の社会的便益が期待される時
パソコン教室やコミュニティーは民間にもありますし、政府がつまらないものを作ったらコストは回収できるでしょうか。私は怪しいと思っています。
幸いなことに、規制が大好きな政府も、あなたのSpeechのアイデアには規制はかけていません。あなたのアイデアに規制をかけているのは、あなた自身なのかもしれませんよ。
『勝利のために6』
自分のアイデアに規制をかけない
