1年間通院しているのに治らない切れ痔 | みのり先生の診察室

みのり先生の診察室

5万人以上の「オシリ」を診察してきた
肛門科専門医の女医がつづる
お尻で悩める人へのメッセージ

今日は実際の患者さんのお話をしたいと思います。

 

患者さんは25歳女性。

 

遠方から本を読んで受診されました。

 

私の存在はネットで知り、そしてテレビを観て本を購入、読まれてから来られたのでした。

 

先々月、この番組に出ました。

 

 

 

患者さんが困っていることは

 

オシリの痛みと腫れ

そして

便が出きらずに1日に何度もトイレに行くこと

 

1年前から地元の肛門科を掲げるクリニック(専門外)に通院。

 

切れ痔と診断され、ヘモポリゾン軟膏と酸化マグネシウムを処方され治療するも改善されず。

 

オナラをする時も痛い。

 

出そうなオナラや便が出ず、便意がなくなってしまう。

 

便が出る前などにお腹の中で低い大きな音がしたり、便が溜まると膣がふくらむ感覚がある。

 

便通は1日3〜6回。

酸化マグネシウムを飲み出してから回数が多くなった。

 

酸化マグネシウム330mgを1日6錠内服

 

なのに出始めの便は硬い。

あとから出てくる便は軟便〜水様便。

 

排便後は紙に便が付くため3〜5回拭いています。

 

ウォシュレットはオシリもビデも使用。

 

本を読んでからは使用を中止し坐浴に。

 

1年間も通院しているのに改善しないため受診されました。

 

 

診察しようとオシリを見ると、肛門周囲に便が付いていましたうんち(多くの患者さんに見られる現象です。便が残っていると付いていることが多いです)

 

何度も排便して、その都度オシリを拭いているため、肛門周囲の皮膚が荒れて赤くなっています。

 

肛門の中まで炎症で腫れています。

 

そして細かい傷が無数にありました汗

 

これは痛かっただろうな・・・ガーン

 

直腸診をすると中に便がありましたうんち

 

今日は既に3回も排便があったのに・・・です汗

 

典型的な出残り便秘ですねあせる

 

残った便を坐薬を入れて排便してきてもらい再度診察。

 

良かった。

1回で出し切れて肛門の中は空っぽになっていました。

 

「これで肛門が空っぽです。この空っぽの状態をよく覚えておいて下さいね。ここに便を溜めて生きてきたから痔になったんですよ〜。これからは肛門を空っぽにしておいてくださいねウインク

 

といつも患者さんに説明しています。

 

なぜなら肛門は便の通り道。

 

便が通過していく所であって、便を溜めておく場所ではありません。

 

そこに便は無いんです。

 

排便したら、また元通りの空っぽの肛門に戻らないといけない。

 

それが正常。

 

だから正しく排泄してくださいね。

 

 

ブログや本を読んできて下さった方は理解が早いです。

 

説明する側もラクです。

 

受診前にブログと本を読んできて欲しいくらい滝汗

 

きっとオシリと体で腑に落ちること間違いなしグッ

 

 

治療は至ってシンプル。

 

・毎日便を出し切って肛門を空っぽにすること

 

・肛門周囲と中の傷にSザルベを塗ること

 

・オシリを洗うのをやめること

 

たったこれだけ。

 

 

そして重要なことが1つ。

 

酸化マグネシウムは止めてもらいました。

 

この患者さんは酸化マグネシウムを飲まなくても、以前から毎日排便があったそうです。

 

ということは・・・

 

腸はちゃんと動いて便を出口まで運んでくれているという証拠。

 

その送り届けられた完成品である便うんちを排出する過程でつまづいた。

 

だからつまづいた場所である肛門でトラブルが起こった。

 

問題は出口の肛門で起こっているのに、お腹(腸)に効く酸化マグネシウムを飲んだから軟便・下痢便・頻便になったのです。

 

酸化マグネシウムは「やわらかい便を作る薬」です。

 

決して「便を出す薬」ではありません。

 

出来上がった便をスッキリ出す作用はないのです。

 

それどころか、軟便・下痢便が腸の中を流れ、洪水状態になって肛門に押し寄せるから、何度もトイレに行きたくなる、おなかがはる、ガスが溜まる、グルグルする。

 

そして困ったことに酸化マグネシウムが効いた便は、ねちょっとしてキレが悪いため、かえって肛門に残りやすく、切れ痔の傷に付きやすい。

 

だから酸化マグネシウムを飲んでから切れ痔が悪化したというケースは意外に多い。

 

必要のない下剤を飲んで痔を悪化させている人が本当に多いです。

 

腸はちゃんと動いて、せっせと良い便を作り、出口の肛門まで送り届けてくれているので、酸化マグネシウムは必要ありません。

 

酸化マグネシウムが必要な人は「硬い便が作られる」という人。

 

それも水分摂取や食物線維や乳酸菌、オリゴ糖など、食生活の改善で解決することも多いため、薬は最終手段。

 

だけど切れ痔の標準治療で注入軟膏と酸化マグネシウムを出されている人が多いです。

 

出口の排泄を治さなければ、お腹に効く酸化マグネシウムを飲んでも、便まみれの肛門に注入軟膏を入れても、切れ痔は完治しません。

 

だから痔の根本治療は痔の原因となった排便を直すこと。

 

治療の第一歩は正しい排泄からなのです。

 

 

しっかりと説明し、ちゃんと理解して帰って行かれたのですが受診翌日にお電話がありました。

 

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今朝、坐薬を入れた。

残便も出た。

 

ところが昼にも排便があり、坐薬を入れようとしたが、痛みがあり入れることが出来なかった。

 

指は入るがゼリーを付けても痛くて入れることが出来ない。

 

切れるようなピリッとした痛み。

 

出血はない。

 

Sザルベを塗ってからやってみたがそれでも痛かった。

 

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苦戦している様子・・・汗

 

肛門の中に無数に傷がありましたからねぇ・・・笑い泣き

 

でも便を出さないことには傷が便で汚染されて治らないため、どんなに痛くても、血が出てても、頑張って入れてもらっています。

 

傷が治ってくれば痛みはだんだん無くなっていくので頑張って!と励ましました。

 

 

酸化マグネシウムを中止しても、薬の影響が2〜3日残る場合が多く、軟便だったり何度か便が出たりしますが、日が経つにつれて徐々に排便回数も減っていき、本来の自分の便が出るようになってきます。

 

それまで辛抱。

 

坐薬を入れる時に痛い場合はSザルベをたっぷりめにつけたりして工夫してみて下さい。

 

また坐薬の突起が痛い場合は、しばらく手で温めるとやわらかくなるので、ちょっと丸めて使用してみましょう。

 

傷が治れば痛みも出血もなくなります。

 

そうなるまでだいたい2週間。

 

最初の1週間は坐薬も上手に入れられなくて苦戦する患者さんも多いですが、2週目になると慣れてきて習慣化できます。

 

だから2週間はくじけずに頑張って下さい。

 

くじけそうになったらお電話くださいね。

 

ささいなことでも構いません。

 

診察で聞き漏らしたことでもいいです。

 

休診日である月曜・木曜もコールセンターは繋がります。

 

その場で私が答えられませんが、必ず患者さんからの質問には目を通し、答えています。

 

回答が次の日になることが多いですが、一人で悩まず、困ったら気軽にお電話で何でも聞いて下さいね。

 

この患者さんが2週間後どうなったのかは次回にニコニコ

 

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