在胎32週、出生体重1500g以上の児に
限定して入院管理を行っておりますが、
正期産児の新生児一過性多呼吸や
新生児仮死などもよく入院しているため、
ずらりと並ぶ保育器にはデカイのと小さいのが
ごちゃ混ぜになって入っており、
まるで、ズワイガニの夫婦のようです。

さて、当直をしていると、
赤ちゃんが低血糖になったという報告をよく受けます。
「先生、さっき生まれた赤ちゃんの血糖が48です!」
「よし、母乳かミルクを飲んで、血糖値を上げるんだ!」
「了解です!ゴクゴク・・・」
「馬鹿者!お前が飲んでどうする!」
みたいな緊急処置をよく行っているわけです。
しかし、新生児では血糖はいくつを保てばいいのでしょうか。
個人的には40mg/dlを下回ったら哺乳、
30mg/dlを下回ったら(もしくは低血糖症状が出たら)点滴、
というルールにしていましたが、決まったルールはないんです。
去年10月にNew England Journal of Medicineで
「Neonatal Glycemia and Neurodevelopmental Outcomes at 2 Years」
という論文が発表されておりまして、
N Engl J Med 2015; 373:1507-1518
そこではひとまず最低、47mg/dlを保っておけば、
2歳時の発達や感覚に影響はない、という結論がでていました。
しかし、この論文の著者は、
どうやら血糖は最低47mg/dlをキープするとよい、ということよりも、
どちらかというと「一気に血糖を上げるとよくない」ということを
言いたそうで、discussionでやたらその話題に触れてきます。
なにやら、急激な血糖の変化は児の認知機能に影響をあたえる
可能性があるそうな。

まあ僕はもとから、カウンターインスリンによる低血糖を防ぐために、
余程でなければ糖液は静注せず、点滴か内服で補正していますが・・・、
実はそれで救われていた子供たちもいたのかもしれません。
ところで、この論文そのものよりも、引用文献として使用されていた
「新生児が痛い思いをすると6歳の時点で脳の構造が変わっちゃう」
っていう論文のほうが衝撃だったんすけど・・・。
PLoS One. 2013; 8(10): e76702.
怖くて採血できなくなっちゃいますね。
あ、ちなみに、冒頭でショートコントに巻き込まれた新生児は、
哺乳でも血糖が上がらず、結局、NICU入院となりましたとさ
(点滴後の経過は良好です)。