2017-5-3 「第34回オペラ大好き」 | Dream Journeyのブログ

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5連休初日の3日の午後は白金高輪駅に直結している高輪区民センターホールで開催された「第34回オペラ大好き」に足を運びました。
出演者及びプログラムは基本的にアップした通りとなりますが、一部に変更があり司会は佐野正一さんが担当されておりました。また、久保田さんが体調不良のため不参加となり、曲目の変更がありましたので、それを踏まえて書いていきたいと思います。
前半はソロ、後半はオペラのシーンの重唱となっておりましたが、冒頭は日本歌曲から。
原田さんが歌ったのは「嘆き」「桐の花」の2曲。嘆きは、三木露風の詞を山田耕筰が欧州へ留学した時に書いた作品とのことで、日本語の特徴である高低による表現をいかした作品とのことでした。透明感のある声で情景を歌いながら、そこに好きな人と上手くいかない嘆きの思いを込めた歌声が印象的でしたね。
桐の花は、しっとりとした情感を込めた歌声で、花の咲くところから散って地面に落ちて枯れていくところまで、様々な場面を表現されている詞が印象的でした。

小寺さんは「北秋の」「花の春告鳥」の2曲。北秋の、を作曲された信時潔は山田耕筰と同時代に生きて、ほぼ同時に欧州へ留学したとのことですが、作風は日本らしさを大切にされたとのことでした。この曲は丹沢の情景を歌った作品で、山の道を散策してそこで出会った情景を美しく描いているように感じました。とても高音の美しい歌声も印象的でしたね。
花の春告鳥、は鶯のことだそうですが、ちょうど4月後半から今の時期くらいの色々な花が咲きそろった時期の庭に鶯が鳴いているような春の華やかさと美しさを感じる曲でした。小寺さんの歌声は声量が豊かで発音がとてもきれいなのが印象的でした。

続いてはオペラアリアの世界へ。岡田さんはプログラム変更で「エルザの夢」「私は芸術家の下僕」の2曲でした。どちらも観たことのないオペラですが、エルザの夢、は行方不明になった弟殺しを疑われたエルザがピンチの場面で夢に現れた白鳥の騎士を思い祈るように歌い上げるアリアとのことです。序盤は抑え気味に、そこから徐々に気持ちを込めるように、しっとりと美しく歌い上げる姿がとても印象的でした。
私は芸術の下僕、はこのアリアしか知らない作品ですが、とても素敵なアリアですね。名声にも惑わされず謙虚に、芸術への一心な思いを感じる歌声がとても美しいアリアだなと思います。
岡田さんは3月のマスタークラス修了公演でも歌声を聴きましたが、伸びやかでスケールの大きさを感じる歌声がとても素敵ですね。

前半の最後は大御所2名による歌曲でした。先ずは大山さんによるレスピーギからの2曲。時々耳にする、は短い曲でしたが朗々と力強さを感じる美しい歌声が印象的でした。
でも、どのように私は我慢出来ようか、は叶わぬ思いに哀しみを込めて抑え目の気持ちで歌う作品でした。本当に悲しいからこそ叫ぶこともできないような状況が浮かぶような印象があります。

小渡さんはスペインの歌曲クーロ・ドゥ・セの唄、という作品でした。こちらは20世紀前半の作曲家でルネサンス期のスペインの作品を集めて編曲した作品の中の1曲とのことでしたが、内容は私も彼女も小柄なので小さなベッドがほしい…というような他愛のないことだそうですが、それに似つかぬフラメンコのメロディにボカリーズから始まる壮大な雰囲気の歌曲でしたね。安定感のある強弱自在の流石の歌声でした。

後半に入って、先ずは「秘密の結婚」よりの三重唱から。以前にこのシーンだけガラコンで1度観たことがありますが、ケンカばかりする姉妹(伯爵夫人の姉はプライドが高く、それをからかうような妹)そしてなだめようとする叔母の3人によるシーンですね。先ず日本語で様子を再現してから歌うという演出で、とても分かりやすかったです。毎日繰り返されるというスノッブな姉とやりこめる妹のケンカをコミカルに、そして叔母はたまったものではないという様子が伝わるように展開される面白い作品ですね。

続いては雰囲気が変わってのベルカントの世界へ。「ランメルモールのルチア」の1幕最後の重唱のシーンでした。兄の目を盗んで恋人のエドガルドに会いにきたルチアに対して、エドガルドが兄の無理解を怒りながらもフランスへ向かうことを告げて婚約するやり取りを、エドガルドはやりきれない怒りを表したり、一方でルチアへの愛情を込めて、ルチアはエドガルドを場を鎮めようとなだめながらも深い愛情を込めて、様々な感情が行きかいながらもこの後の波乱の前の美しいシーンを見事に再現されていました。特にルチアの響きの美しい歌声は印象的でした。

再び喜劇に戻っての「後宮からの逃走」からの二重唱。後半のコンスタンツェとベルモンテが捕まって死刑を言い渡されたところのシーンからでした。この後にどんでん返しがあるのですが、それを知らない2人がお互いをかばいながら天国で結ばれるからと愛を込めて歌う重唱が美しいですね。嘘偽りのない愛情を込めての歌声でした。

続いてはフランスオペラから「マノン」の終幕の重唱。マノンのような女性をファム・ファタール(宿命の女)と言うそうですが、フランス文学ならではの表現らしく、魔性の女であり、破滅に導く悪女であり、しかしながらもいい女ということになるのでしょうね。
その終幕から釈放されたデグリューがマノンと再会して喜び合うも、マノンはすでに衰弱して死期が迫るというシーンでした。喜びながらも徐々に衰弱していくマノンと流刑を何とかしようと必死のデグリューのやり取りから、最期はデグリューの腕の中で息絶えるまでのドラマティックな展開が印象的ですね。様々な感情表現も豊かに素晴らしかったです。

プログラムの最後はリゴレットからの重唱でした。誘拐されたジルダを探しにきたリゴレットが叫ぶとジルダが現れてのシーンでした。呪いを恐れながらもジルダを許し、しかしながらもマントヴァに対する怒りと復讐を誓うリゴレットに対して、畏れながらも父にマントヴァへの愛情と許しを請うジルダのやり取りは、親子の深い愛情と愛憎が絡んだ深みを感じるシーンで聴き応えがありました。

「オペラ大好き」は昨年に続いて2度目、姉妹版ともいえる「アンサンブルの楽しみ」を併せると3度目になりました。解説を入れてから上演してくれるのでとても分かりやすいですし、とても深いところまで掘り下げてくれるので、ただ観ているだけでは気づかないところも感じることができるので毎回楽しむことができています。
村山さんは昨年も出演されておりましたが、今回はシリアスな中にも愛情も込めてという場面を熱演されていたのが印象的です。エドガルドを愛しながらも兄のことも思いというルチアの様々な感情が伝わる演技に、美しい響きの歌声が素晴らしかったと思います。
もちろん、他の方の歌声や演技も流石でしたね。夏に「アンサンブルの楽しみ」がありますので、そちらの方も足を運びたいと思います。