GW最終日は仙川フィックスホールで上演された「Mazzetto Soprano concert Vol.2~ベルカント歌声の花束~」に足を運びました。出演者は
金田香織さん(ソプラノ)
島内奈々子さん(ソプラノ)
高山美帆さん(ソプラノ)
田中佳代子さん(ソプラノ)
杉本可菜さん(ソプラノ)
行田麗加さん(ソプラノ)
菊田光紀さん(ピアノ)
の7名でした。プログラムはアップした通りです。今回はベルカントがテーマということで、ドニゼッティ、ベッリーニ、ロッシーニの3人の作曲家に焦点を当ててのものとなっておりました。
先ずはドニゼッティのオペラアリアから高山さんによる「あの目に騎士は」、小説を読みながら騎士の愛の物語を詠みあげて歌うように夢見るような感じで伸びやかなロマンチックな歌声が前半、後半は自分自身の立場で男の心を掴むことなんて簡単よ!という悪女というか魔性の女らしくコミカルさとテクニカルな感じもありながら歌う対照的な面のあるアリアからでした。
島内さんが歌った「フランス万歳」も対照的なところがありますね。前半は貴族の暮らしに慣れなくて、寂しげに息苦しさを訴えながら、そして愛する人と引き離されてしまった悲しさを歌い、後半はかつての仲間であるフランス軍の兵士たちがやってきたことを喜び、高らかに「フランス万歳」と歌い上げるという、こちらも様々な表情とテクニックを感じながらの歌声でした。
続いてはベッリーニの歌曲から3曲。杉本さんが歌った「お行き、幸せなバラよ」は恋人に渡すバラに愛する人への思いを託すように、その一方で私もバラも死すべき定めがあると悲しい運命があると高らかに歌い上げる曲でした。旋律の美しさも印象的でしたね。
田中さんが歌った「もし私ができないなら」は愛する人を追うことができないのならばせめて心だけでも、と切ない気持ちを込めるようにしっとりと歌い上げる作品でした。高音の響きの美しさも印象的でした。
金田さんの歌った「私の偶像よ」は、愛する人に私の気持ちが分かってほしいと必死な思いを、不実の疑いをかけられている状況で私が愛に誠実であるということを訴えかけるように、苦しい気持ちも込めて歌う姿が印象的な作品でした。
前半の最後は行田さんの歌うオペラ「夢遊病の娘」より「ああ、信じられないわ~ああ、誰にもわからないでしょう」でした。こちらも前後半が対照的なアリアで、夢遊病が原因で愛する人から婚約を破棄され幸せが失われてしまったと哀しみを呆然とした様子で歌う前半部分と、恋人が状況を理解して再び愛を取り戻して正気に戻り喜びを込めて歌う後半という聴き応えのあるアリアですね。
後半に入っての「猫の重唱」は6人全員が登場してのバージョンでした。庶民ネコとセレブネコに3人ずつ分かれての設定で、最後は全員で仲良くという流れでした。
ロッシーニに関してはクイズなどもあったりしましたが、歌曲3曲とオペラアリア1曲が歌われました。先ずは島内さんによる「もしも粉屋の娘がお望みなら」という曲はロッシーニの処女作で9歳の頃の作品とのことでした。軽快ながらも大人びた感じのメロディで、「もし粉屋の娘がお望みならばお手伝いしましょう」と華やかで楽しげに歌うのがとても印象的でした。
高山さんの歌った「アルプスの羊飼いの娘」はロマンチックなメロディで、羊飼いが普段の仕事の様子を可愛らしく優しく歌う曲ですが、最後に1輪しかない花は愛する人に渡しますという、恋の歌でもありました。
行田さんの歌った「フィレンツェの花売り娘」は聴く機会がありますが、こちらはかなり年を取ってからの作品とのことでした。花売り娘が華やかな歌声で口上を述べながら花を売る情景が浮かぶように、そして母が待っているから買ってくださいという思いも込めての歌声でした。
オペラ「ブルスキーノ氏」という作品は初めて聴きましたが短編みたいです。その中のアリア「ああ、あなたは追いやろうとしています」は望まない結婚を前に哀しみを込めて後見人に向かって、愛する人と結婚したいという思いを切々と訴えかけるような前半と、後半は開き直って力強く望みを込めるように歌う作品でした。杉本さんの歌声でしたが、切り替えと技巧を含めて見事な歌声でしたね。
最後はドニゼッティに戻ってのアリア2曲。70作品もオペラを作ったとのMCもありましたが、「ルクレツィア・ポルジア」という作品は初耳でした。「なんて美しいの」は色々と悪い噂を立てられている主人公が生き別れた息子に会いに来て、その眠っている様子を見ながら母としての息子を思う気持ちを歌い上げるアリアでした。子供の幸せを願う気持ち、自らの罪を神に赦しを請う気持ち、そして一緒にいることのできない寂しさを込めて金田さんが美しく歌い上げられていました。
「アンナ・ボレーナ」は女王三部作というそうですが、無実の罪を着せられて処刑されるという悲劇とのことです。「私の生まれたあのお城」はガラコンでも聴くことがありますが、処刑を前に狂乱の状態にあるボレーナが、過去の思い出を振り返るように様々な感情を交えて、後半は昔の幸せだった日々に戻りたいという気持ちを込めて歌う、切ないメロディの中に美しさを感じる歌声で、田中さんが歌い上げられていました。
プログラムの最後は全員で、ベルカントの時代に日本で作られた作品ということで滝廉太郎の「花」の合唱でした。クラシックを聴いていると作曲家同士の時代の感覚というのが分からなくなることがありますが、日本においてはクラシックの黎明期にあたる時代ということになるのですね。
アンコールも全員で、ロッシーニの「ラ・ダンツァ」とヴェルディの「乾杯の歌」の2曲でした。こちらも華やかな歌声でコンサートが盛り上がっての終演だったと思います。
今回の6名の歌手の皆さんは二期会研修所の同期とのことですが、金田さんと島内さんは先日の修了コンサートで歌声を聴いていて、それ以来でした。他の4名の方は初めてだと思います。皆さんそれぞれに持ち味のある歌声で、ベルカントということもあり華やかな歌声によるステージだったと思います。
伴奏されていた菊田さんは2月のコンサートに引き続きですが、そのステージをしっかりと支える演奏だったと思います。
今回は解説も入れながら、字幕も大きく表示しながらでしたので、聴いていても分かりやすく、情景なども浮かびながら聴くことができたのも良かったです。昨年に引き続き2度目の開催とのことでしたので、また機会があればと思います。