俺は「加納」だった。 | 夢追い人

夢追い人

夢を追う未熟者のブログ。どんな風に熟していけばいいのやら・・・。手探り人生の日記をつづります。2011年、僕の人生が大きく変化しました!詳しくはこちらの記事で→http://ameblo.jp/dream124/entry-10964323478.html

こんばんは!

だいぶ時間が経ってしまいましたが、舞台後恒例の役を振り返る「俺は〇〇だった」シリーズ第14弾を書かせて頂こうと思います。

 

以前の記事は下記をご覧ください。
★これまでの記事は下記から↓
俺は「奥沢」だった。

http://column.pieronofude.com/?eid=151 
俺は「火炎」だった。
http://column.pieronofude.com/?eid=167 
俺は「警護人」だった。
http://column.pieronofude.com/?eid=183 
俺は「士官」だった。
http://column.pieronofude.com/?eid=193 
俺は「国松」だった。
http://ameblo.jp/dream124/entry-11843471542.html 
俺は「丸尾」だった。
http://ameblo.jp/dream124/entry-11914719844.html 
俺は「村重」と「利光」だった。
http://ameblo.jp/dream124/entry-11952269459.html 
俺は「権六」と「後白河法皇」だった。
http://ameblo.jp/dream124/entry-11995830977.html 
俺は「本多忠勝」だった。
http://ameblo.jp/dream124/entry-12025577257.html 
俺は「井上」だった。(前編)
http://ameblo.jp/dream124/entry-12067689164.html 
俺は「井上」だった。(後編)
http://ameblo.jp/dream124/entry-12067689425.html 
俺は「杉村」だった。
http://ameblo.jp/dream124/entry-12164663323.html

俺は「良造」だった。

http://ameblo.jp/dream124/entry-12175269982.html

俺は「弓弦」だった

https://ameblo.jp/dream124/entry-12239896390.html

 
 
俺は「加納」だった。
 
2018年5月2日~7日まで、劇団イーストンズ第13弾本公演『フクロノネズミ~大江戸立てこもり事件~』に出演させていただきました。
劇団イーストンズへの出演は、2014年8月以来実に約4年ぶり、これが3度目の出演となりました!
そして、僕自身劇団プロデュースの公演は、1年ぶりでした。
昨年、東プロダクションの舞台『海賊と山賊』に出演してからは、地方での公演や殺陣のパフォーマンスステージが主で、久しぶりにセリフのあるお芝居をさせていただきました。
今回僕がいただいた役は、加納勘助という町奉行所の同心で、なかなかヒールな側面をもった正義漢でした。
演出の狙いとして、本当の悪役で上司である黒木六蔵の本性を隠すミスリード的役割も担っていました。
稽古中は加納自身の設定や周りの役の設定などが変わるたびに、本来の顔を変えるなかなか厄介でしたがとてもやりがいある役でした。

<役>
今回も、役に対しての理解を深める前に、作品世界への理解を深める作業をしました。
前回『海賊と山賊』の弓弦を演じた際におこなった台本へのアプローチは、当時実験的におこなったもので、結果的にすごく効果的でしたが、果たして別の作品・役でも効果を発揮するのか、それを確認する機会でもありました。
結論から言うと、やはり世界観やそれぞれの人物の役割をイメージするのには、おおいに役立つアプローチとなりました。
その上で、この加納勘助という人間がこの作品にどう作用するのか・・・
読むうちにわかったのは、加納という存在が、物語の主軸にはさほど重要な役割をもっていないということでしたσ(^_^;
なんだか身も蓋もない話ですが、ストーリーの最初にベラベラと喋る加納、立てこもり犯で本作の主役の1人である十兵衛に最初に一太刀を浴びせるのも加納、黒木という最大の大ボスに対して常に意見して、もう1人の主役である金治郎にも悪態ばかりつき、さんざんしゃしゃっていた加納ですが、実のところ話の本筋では思いっきり蚊帳の外なのでした(笑)・・・(泣)
そんな加納をいかにしてこの作品の中で意味ある存在にしてあげるか。
それが僕に与えられた課題でした。

なかなか孤独な仕事だなぁと感じていましたが、ある時、大ボスの黒木六蔵もまた孤独な存在であることに気づかされました。
今回、ゲスト出演ということで黒木六蔵を演じられていたのは昨年の12月より僕も大変お世話になっている五條詠寿郎さん。
黒木と加納はだましだまされ、慕い慕われている、いろいろな側面をもった上司と部下の関係でした。
それぞれが心の中に、何かしらの闇を抱え、孤独に生きていました。
黒木はたしかに大ボスという役割で物語の主軸に関わってはいますが、孤独という意味では、加納と同じだったわけです。
 

それに気づいたのは恥ずかしながら小屋入りしてから。
僕はある方から、そんな黒木さんと一緒にいる時間をもっと大切にした方が良いのでは?と言われました。
まったくもってその通りでした。
僕たちは、台本を読んで結末を知ってこそいますが、芝居の世界に入れば全てが初めての出来事にならなければならない。
そうした時、加納と黒木に必要なのは、だましだまされているという事実より、慕い慕われているという事実だったのです。
それに気づいてからは本番中、とにかく黒木さんから受け取ることに注力しました。
視線を受け取り、視線を送り、眼と眼で戦いました。

さて、そんな加納は、死ぬギリギリまで独りで突っ走り、独りで翻弄され葛藤していきました。
今思えば、それこそが加納勘助という男の生き様だったのかもしれません。
最後の最後には、加納は本当の正義をなんとなく掴んで、作中で唯一意地悪していた間宮と力を合わせて死んでいきます。
もし、あのまま生きていたら、少しは間宮との接し方も変わったのかもしれません。
 

金治郎より心を通わせていたかも。
見てくださった方々に、加納という男がどう映ったのかは、わかりません。
もしかしたらあまり印象に残っていないかな。
自分の知る限りで、気づけていなかったことを指摘してくださった意見、逆に指摘するほどの印象にさえ残らなかった事実、いろいろと受け止めていますが、これは次のステージへの課題としてしっかりと携えようと思います。

<役者と芸術家>
僕がイーストンズを好きな理由は、もちろん作品の中にある、笑いの要素に魅了されたのはもちろんですが、実際に出演する側になり新たな一面を知ることで、よりイーストンズというものが魅力的なものであると思うようになりました。
それは、演出である石田武さんが、役者のキャリアに関わらず「何か行き詰った時はアイデアを聞かせてくれ!」という姿勢をとってくれていることです。
イーストンズの舞台稽古では、脚本家である清水東さんの了承のもと、作品をより魅力的にするための作業が石田さん主導で行なわれます。
つまり大筋こそ変わりませんが、脚本がどんどん変わっていくのです。
そしてその作業には、石田さんだけでなく役者陣のアイデアも少なからず取り入れられているのです。
今回、僕も稽古中は自分のキャリアをさておいてかなり発言しました。
本来役者が脚本に対して口を出すということはあり得ないわけですが、僕は、そこがイーストンズの魅力の一つではないかと勝手に思っています。
いい作品をつくるために、自分の役だけでなく、全体を見て、お客さんが納得できるものをみんなで追求する。
一人の脳みそではなく複数の脳みそで、価値観で、一つのゴールに向かっていく。
それが成されている気がするのです。
 

そんなわけで、今回はここぞとばかりにいろいろなアイデアや疑問点を提示していきました。
僕のこういう考え方を受けて、しばしば「君は役者というより芸術家だ」と言われることがあります。
現に、今回の稽古でも、役者の大先輩からそんなことを言われました。
「ああやっぱりそうなのか・・・」と思いました。
というのは、決して自分がピカソとか、ゴッホとか、ダヴィンチとか、そういう天才芸術家なんだと驕ったわけではありません。
自分のものの見方はそういう人たちと同じなのかもしれないと思ったということです。
僕は、以前から「役者は表現者であって表現者ではない」と思っていました。
今回の自分は、まさにその持論を捨てた状態で稽古に臨んでいたのです。でも、同時に、自分が好きなのはこっちなのだなと改めて思いました。
与えられたものを自分の身体や心を最大限つかって表現する、それも好きですが、自分が納得したものを作りたい。
というのは、自分だけの考えを主張したいということではなく、みんなで納得したものを作りたいということです。
どちらも微妙に違いはあるものの行きつく先はお客さん。
それが揺るがないのであれば、僕は必ずしも役者でありたいわけではないのかなと思いました。
この気持ちは今、新たに進み始めている遊縁家-ゆうえんち-の活動に大いに影響するような気がしています。

久しぶりの劇場公演は、またしても自分の本当の気持ちを確認する貴重な経験となりました。
この経験を経て、いろいろと自分の思うところもあるのですが、既に今年はいくつかお仕事が決まっているため、あくまでもその仕事の中でひとまず活かしていくしかないと思っています。
本当にこの気持ちを反映させていくのは、今年の年末から来年にかけてになるでしょう。
そのために、今からちゃんと動いておきたいと感じています。

さて、ということで、次は6月末のギリシャ公演!
既に稽古は始まっております!
このブログでは遊縁家-ゆうえんち-に関する報告も一つする予定です!!
・・・ので!
しばしお待ちください^^
それでは、劇団イーストンズ第13弾本公演『フクロノネズミ~大江戸立てこもり事件~』、ご来場くださった全ての皆様、そしてこの公演に携わってくださった全ての皆様に感謝申し上げます!
ありがとうございました。