「健康いきいき職場づくり」を読みました | 女医の国際精神保健

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精神保健および公衆衛生を軸に、韓国、ロンドン、ジュネーブ、ニース、フィジー、赤道ギニア、東京、インド。
他にも、旅行、馬術、音楽、写真などについて記載しています。

 

 

「働く人と企業を元気にする取り組み」が概論から具体例まで記載されています。

 

私が博士課程でお世話になっている教授らの執筆で、入学の相談をした頃かな?に頂きました。ありがとうございます!

で、遅ればせながら読み終えました。

 

精神科医師として、 産業医として、  個別より大きな視点で健康を考える公衆衛生専門家として、 とても興味深い一冊です。

経営者や人事担当や管理職も興味を持つ一冊に思います。

 

「仕事の要求度コントロールモデル」「努力不均衡報酬モデル」に加えて、更に上流の「組織的公正(=手続き的公正+対人的公正)」が従業員の心の健康に関わることが分かって来たとの話題もあり、とても納得しました。

自分にとっては、「仕事の要求度コントロールモデル」と同じくらいかそれ以上に「組織的公正」は重要だわ!そして、これが正に前職で辛かった理由だわ!

手続き的公正には、下記の要素が含まれます。

1 意思決定に一貫性があること

2 私利私欲や先入観に偏った意思決定にならないこと

3 情報や意見が正確に集められていること

4 訂正や修正をする機会が与えられていること

5 道徳的、倫理的に適切な意思決定であること

対人的公正には、下記の要素が含まれます。

6 上司が部下に対して、意思決定の理由を正確に誠実にかつ十分に説明するか

7 上司が部下に対して、尊重と尊敬の念を持って接しているか

 

米国のベンチャーなどは強い個性が自律型人材に強みを見出して、そこに組織としての一体感やコミュニケーションを意識して作り込む必要があったのに対し、多くの日本企業では人が集まれば自然に組織ができる状態(もしくは思い込み)があったので組織開発は意識されてこなかったという指摘もそうなんだろうなあと想像いたします。

その組織開発では、下記が大切とされています。

1 職場で人材を育成する力

2 組織文化・価値観を共有する力

3 組織を変革する力

4 組織学習をする力

5 協働する力

6 人を元気にする力

 

Appreciative inquiry (AI) の話題もあり、とっても興味深い。

概要は こちら  こちら

何が問題か?という視点よりも、何が強みで何が資源かに着目します。

これは凄い!

公衆衛生でも臨床医学でも、「問題は何か?」「問題の広がりは?」などから始まって、解決策を模索する訓練を受けて来ている私としては、強みや既にある資源に目を向けるというのは希望があって嬉しいです。(希望は私が臨床現場でも大事に思うもの)

このAIの発想で、私も取り組みたいし、そんな集団で仕事したいわ!

 

これらの概念を実践する方法も記載があり、企業ですでに行われている「イキイキ職場づくり」の取り組み例も記載があり、具体的でわかりやすいです。

そして、健康診断で取り入れられている「ストレスチェック」が個人の健康を確認するにとどまらずに、組織を確認するために使われるべきだという主張を理解し、強く支持いたします。

 

産業医としてどの視点で仕事するかに役立ちました。

自分がどんな組織で仕事をしたいかを考える役に立ちました。

自分が組織を作る時に押さえる点を考える役に立ちました。

周囲で行われている産業精神保健の研究・取り組みを理解するのに役に立ちました。

本、どうもありがとうございました。