仕事帰りの、遅い夕方の電車。
ガラガラの優先席の片隅で、疲れた若いサラリーマンがひと時の休息を取っている。
後から乗ってきた爺さんが、その若いサラリーマンにこれ見よがしに文句を言う。
ここは若い者の席じゃねえんだよ。当たり前に座ってんじゃねえぞ。
先にも言ったが、優先席はガラガラ。普通の席は混み合っている。
その光景を見て、俺は思う。
爺さん、そこまで言うあんた、1円でも多く乗車賃を払ってんのかい?
優先席って、別に老人の独占特区じゃあない。
言いたくはないが、事情ある人のために若い担い手の善意で作られている席。
ガラガラの優先席の片隅で、疲れた若者が休むことがそんなに悪いことなのか?
爺さん。
あんたのほうこそ、感謝を忘れて人の善意に甘えすぎじゃないかい。
慮られることを、当たり前と思い過ぎちゃいないかい。
爺さん。
その若者、たぶんあんたらが残した負の遺産やらで、この先だいぶ苦労するんだぜ。
若い者だって、体調が悪い時もあれば、疲れる時もあるんだぜ。
爺さん。
他人を慮ることを、忘れているのはあんたなんじゃあないのかい?
しかしそんなことを、部外者の俺が一言言っちゃあただの喧嘩になっちまう。
休んでいた若者は、申し訳なさそうに疲れた体を起こして席を立っていった。
はあ、世も末だねえ。世も末涼子だよ。
まあ若者には若者の、老人には老人の、事情ってもんがあるだよ。
そういうのって結局、当事者にしか分からないもんだからね。
昨日から、プロ麻雀リーグ「Mリーグ」のセミファイナルシーズンが始まった。
世知辛い現実は忘れて、帰って贔屓の選手でも応援するかねえ。