演じるまでの順序 | オーディオキネマ 研ぎ師伊之助深川噺

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数日前、

若い声優さん、若い舞台俳優さん

の演技を見てくれと頼まれる仕事がありました



そのトレーニング中、

これは本当に久しぶりなのですが、

少し、
怒りが漏れてしまいました・・・・

(短気はいけませんね~)

普段はそんなことは決してないのですが、

ちょっと、大きな声を出してしまいました



というのも、

その場にいた役者の皆さんの演技が、

実に
薄っぺらくて

辛抱出来なかったんですね

事前に、

「ありったけ、厳しくお願いします

と担当の方に言われていたので、

ちょっぴり本音をぶちまけてしまいました



そこで、

トレーニングを一旦止めて、

演じることの心構えを、

私なりに説明させてもらいました。

その内容を、

今日はこのブログで書いてみましょう



まず、

演技が薄っぺらい理由ですが、

それは、

みんなが、

見られていることを意識しずぎていることが原因だと思います。

周り(観客)に、

可愛く聴こえているだろうか

イケメンに聴こえているだろうか

十分に悲しい声になっているだろうか

十分に明るくなっているだろうか

そんな思惑が演技から、見え見えなんですね



出来上がりの加工ばかり気にしていては、

ドラマの中にある熱が、

伝わってこないのです

そんなことを念頭に置いて演技していては、

台詞は、なんとも白々しいものになってしまいます。

これでは、台詞に引き込まれることはありません・・・・



というのも、

そういった声質、音色に気を取られた演技では、

喜怒哀楽を単純化してしまい、

あとは曖昧なボリュームの強弱だけで演じているように聴こえてしまいます

肝心のドラマのエモーショナルな部分、

キャラクターの葛藤を表現することが無視されてくるのです。

これは、即刻辞めなければいけません



そういった悲惨な演技を目の当たりにして、

私は、

彼らの今まで受けてきた指導が、

あまりに酷すぎると思わざるを得ませんでした

むしろ、

それを一生懸命やっていると感じていいる彼らに、

怒りと虚しさを感じたんですね。



新人トレーニングの現場では、

一体何が起こっているんでしょうね・・・・・・・



そんな光景を見て、

これは、

【シナリオの読み込み】などの話をする以前の問題だと感じました。

なぜなら私は、

彼らの演技に、


まるで役者の姿を見つけることが出来なかったからです。

そこで、

ごく初歩的なことから、

取り組んでもらうことにしました



まずは、

自分がそのセリフを、どう演じたいか

ここについて自分の感性を呼び覚ましてくださいと言いました。

つまりは、

しっかりと自分の意見好みを、自分自身に問うことに時間をかけるのです

ここに油断なく徹底的にこだわるから、

自分の演技に責任が生まれるのです。

それが、いつしか、役者のプライドにもなります。

そして、

ここに自信をもっていただかなくてはいけません




次には、

では、シナリオのキャラクターは、どう演じて欲しがっているか

それをよく読み解いて欲しいのです。

先ほどの答えと、この答えが同じなら素晴らしいですよね

もしも違う解釈になったなら、

自分のセンスを信じるか、

演出家に相談するか、

二つを一つにまとめる努力をしてみるか・・・

はたまた全てを考え直すか。

これも己の決断次第です



最後には、

そんなことをあれこれと考えた末に出た答え(演技プラン)は、


観客にとって、本当に魅力的か

これも検討しなくてはなりません。

このことを、忘れないで欲しいですね


自分よがりな間違った演技は、

観客をストーリーから引き剥がしてしまいますからね。



ベテランならば、

これらの段取りを、

全て一瞬のことで済ましてしまうでしょう。

それは、

長いキャリアがそうさせるのです。

まだあなたが新人の役者ならば、

演技というものは、

自分の中から、

絞り出すような気持ちで演技て欲しいですね。



ここまでを読んでもらえば分かりますが、

役者とは、

いつでも
決断を強いられるのです



これは、新人もベテランも同じ条件です。

役者が演じるということは、

現場で仕事をするまでに、

様々な
決断を済ませておく必要があるのです。

先日の新人さんの演技には、

その過程が全く見えませんでした。

「このくらいなら、しくじらないだろう・・・」

「これなら、かっこ良く聞こえるだろう・・・」

「これくらいなら、まわりを邪魔しないだろう・・・」


まるで試合放棄したプレイだったのです。



本気で役者を目指すなら、

自分の仕事に価値を感じて欲しいですね


今は、

他人に影響を与える
を磨くのです。

プロになれば、

他人の歴史に刻まれる
を披露するのです。

情熱をもって、

取り組んで欲しいですね




ちょっと、

冷めた役者さんばかりで、

寂しくなってしまいました


次回は、

まともなトレーニングをしましょうね




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