三大仏の話 | 怖い話します(選集)

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場所は都内某所にある怪談ルーム、そこに来た人たちが語った内容 す。

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小学生のときの話です。地元のお寺は禅宗で、もうとうに

亡くなりましたが、子ども好きの住職さんがいて、

子どもらが境内で遊んでも怒ったりしなかったんです。
だから小学校の中学年まではよく友だちと遊びに行きました。
ただ、生き物をとることは禁止でしたね。

直接言われたわけじゃないんですが、


「当山で殺生するなかれ」という立て札がありました。
いやこれは、親父と来たときに意味を教えてもらったんです。
今から思えば、境内の中に浅いけどけっこう広い池があって、
子どもが落ちたりするのを防ぐ意味もあったんだと思います。

あと、境内は墓所と続いていて、そっちで遊んでも、
何か言われるってこともなかったです。ただ子ども心にも、
墓所にはあんまり行っちゃだめだとはわかってました。


ある夏の日ですね、同級生2人とそのお寺で遊んでたんです。
そしたら1人のやつが、ワクワクすることを言い出したんです。
そこの墓地には3体の大仏像があって、
その3つをある順番に回ると不思議なことが起きるって。
不思議なこと・・・というのが何かは、

言い出したやつにもわかってないみたいで、


もしかしたらその場で思いついた出まかせだったかもしれません。
この大仏像というのは、地元の市の有力な家系の墓所です。

他と差をつけるためなんでしょう。広い墓所の中に、
墓石とは別に石彫の大仏が造られてたんです。結跏趺坐と
いうんですか、台座の上に蓮の花があって、それに座った形の。
「すげえ、やろうぜ」ってことになり、「ある順番」というのが
わからないんで、ひととおり全部試してみることになりました。

 

3体の大仏がA、B、Cとすると、A-B-C、A-C-B
という具合に6通りになりますよね。で、Aから始めて
広く入り組んだ墓所の中を大急ぎで走って回った・・・んですが、

そこは小学生なんで、途中でわけがわからなくなっちゃったんです。
まあ、算数が得意というやつもいませんでしたし。
それで今度はCから始めて、その大仏の前の細かい砂利に、

小枝で通った順番を書いておくことにしたんです。


で、Bを最初にしたときだったから3回目か4回目のことです。
「いっせいの」で、B大仏にタッチして走り始めた・・・んですが、
最初に走ってたやつがせまい墓所の通路で急に転んで、
残り2人もそれにつまずく形で折り重なって倒れました。
そのとき、空が急に真っ暗になったんです。
ずっと向こうまで続いていた墓は見えなくなってて、夜みたいでした。

ただ、ずっと遠くに山があって、その上に赤い火が燃えてたんです。

いえ、火山という感じはしませんでしたね。黒と血のような赤い色の
世界です。声が聞こえたんです・・・「ヒイイイィ」という悲鳴が、

いくつも重なって聞こえるような。
すごく怖ろしい気持ちになって立ち上がりました。
すると、あたりは明るくなって蝉の声が聞こえる・・・元に戻ったんです。

友だち2人も立ち上がってきょろきょろしていました。

 

「お前ら今の見たか」と言うと、「見た 赤かった」 
「見た見た、声も聞こえた」こう口をそろえました。
「何だったと思う?」 「地獄!」3人が
ほぼ同時に言いました。このお寺の本堂には有名な地獄絵があって、

お盆の公開のときに3人とも見たことがあったんですが、

それと色合いがそっくりの世界だったんです。もちろん大仏巡りは
そこでやめにして帰りました。大人には言いませんでしたよ。

 

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