
17日(日)~18日(祝)、2日に渡って、メディ・プロデュース主催『抗加齢医学の実際2006』というセミナーが、東京大手町のサンケイプラザホールで行われました。「明日から役立つアンチエイジング医学」という謳い文句で毎年この時期恒例のこのセミナーは多くのドクター、コメディカルスタッフが聴きに来られます。今回も370名の受講者が集まりました。
私は2日目の昨日、2つのセッションを受け持ちました。午前中のレクチャー4「あなたのクリニックにどのようにアンチエイジング医学を取り入れる?~アンチエイジングクリニックの運営に関わるすべて~」というセッション(座長は慶応義塾大学医学部眼科学教室教授の坪田一男先生)では、鶴見大学歯学部の斎藤一郎教授、満尾クリニックの満尾正先生、銀座AACクリニックの上符正志先生、三番町ごきげんクリニックの澤登雅一先生らと、アンチエイジングクリニック(外来)のノウハウ等につき講演、討論を行いました。初めにそれぞれの病院、クリニックのアンチエイジング外来のVTRが上映されるのもなかなかのアイデアでした。
坪田、斎藤両教授の所は、基本的には大学病院における特殊アンチエイジング外来(歯科、眼科をメインにしている点で)であります。一方、満尾先生、上符先生、澤登先生らのクリニックは東京にある個人クリニックでいずれもキレーションを柱とされています。それぞれ、特徴があり私も勉強になりました。
午後からはバトル講演「アンチエイジング治療法の是非を語る2 ~キレーションの是非~、 ~ホルモン系サプリメントの是非~」が行われました。キレーションに関しては肯定派代表として満尾先生、否定派代表としては防衛医大第1内科助教授の楠原正俊先生が壮絶なバトル討論を繰り広げました。
本セミナーでは、会場の参加者の先生方の携帯端末を使ったリアルタイムでの投票が行われ、バトル討論前はキレーション賛成派が多かったのですが、討論後は反対派の票が伸びていました。私も基本的にはキレーションをアンチエイジング医療に安易に導入し行うことには以前から反対意見です。限定された症例に限って慎重に行うべきものだと思います。満尾先生はその点を強調されていましたが、一般臨床家がすぐにアンチエイジング医療の第一歩として導入するのはやはり、難しいと言えます。最近のデットクスブームに乗って、女性誌、ファッション誌でキレーション治療をとても安易に紹介しているものが見られますが、これは非常に危惧するべきことです。巷でブームになっているデットクスと動脈硬化性疾患にターゲットをしぼったキレーション治療は次元が違います。
続いて、「ホルモン系サプリメント(DHEAとメラトニンを中心に)の是非」に関してのバトルは何と、中高の先輩で、アンチエイジング医学における師匠でもある米井嘉一先生と私が行うことに。米井先生が肯定派代表、私が否定派代表で20分ずつお互いの論を主張しました。まあ、私はヒト成長ホルモン(hGH)を使った安易な総合ホルモン補充療法なるものには以前から大反対していますが、DHEAやメラトニンは実際のところ、クリニックでもよく使っています。ただし、慎重に臨床データを解析しながらという条件付きです。
私の専門は内分泌・代謝内科。ホルモンの値は個々人のレベルで違うのが当たり前であり、他の検査値にある正常値なる概念は捨てるべきなのです。正常値ではなく、基準値。人にはそれぞれのホルモンレベルがあり、例え基準値をはずれていてもそれがその人の正常であることが結構多くあるのです。また、ホルモンは決して単体で考えるものではなく、自律神経やその他のホルモンとの連携によって、生体のホメオスターシス(恒常性)を絶妙にコントロールしているのです。この辺の感覚は内分泌専門にやっていないと実際、わからないところだと思います。外科医がたくさんの患者さんに実際にメスを入れて腕を上げるのと同じく、私達は多くの患者さんのホルモンデータを見て、そのセンスを磨くのです。
そいう意味ではその人のホルモンデータが数字の上で基準値を下回っていたからといって、すぐに「○○ホルモンを投与しよう」というのには反対です。そんな話をしたところ、討論前には賛成派が多かったのですが、討論後には若干ですが、賛成派が減り、否定派が増えてくれました!
アンチエイジング医学にはまだまだエビデンスが足りません。私達、抗加齢医学専門医が中心となって、地道に臨床データを積み上げていくしかありませんが、アンチエイジングは患者さんに対しての従来型の医療・医学ではありません。副作用、合併症があったり、高額なものであったりしては意味がありません。まずは、生活習慣をいかにアンチエイジングなものにするか、こういうベーシックなことをきちんと実践させることが一番重要で、かつ難しいことなのだと思います。安易にキレーションを行ったり、ホルモンを使うことではありません。