🩸【第1回:スパイクタンパクは、脳血管内皮に存在する──研究紹介】


今日は、超真面目&怒りの鉄拳モードで医学最新情報を紹介する。(本丸突撃爆弾記事は第3回目くらいから)

これはぜひ今第一線で働いている医療従事者にもこの実情をぜひお届けしたい気持ちでいっぱいである。

 

2025年4月、J Clin Neurosci(Journal of Clinical Neuroscience)において、日本の研究チーム(Nakao Otaら)による論文が発表された。そのタイトルは、

 

「脳動脈におけるSARS-CoV-2スパイクタンパクの発現:mRNAワクチン後の出血性脳卒中への含意」

(Expression of SARS-CoV-2 spike protein in cerebral arteries: Implications for hemorrhagic stroke post-mRNA vaccination)

 

である。

 

🧠【研究の背景と目的】

 

mRNAワクチン(BNT162b2およびmRNA-1273)は、COVID-19パンデミックの中で迅速に実用化され、短期的な有効性と安全性は大規模治験で検証された。しかし、その広範な使用後に、まれな有害事象、特に出血性脳卒中(hemorrhagic stroke)が報告されるようになった。

 

本研究の目的は、ヒトの脳動脈にSARS-CoV-2スパイクタンパクが実際に存在するかどうか、そしてそれが病態と関連し得るかを病理学的に確認することにあった。

 

🔬【研究の方法と結果】

 

研究者たちは、mRNAワクチン接種後に死亡した患者の脳血管組織を病理学的に分析。その結果、スパイクタンパクが、脳動脈の内皮細胞に局在していたことを確認した。

 

内皮細胞とは、血管の内壁を構成する細胞であり、血液と直接接している。スパイクタンパクがこの内皮に存在することで、

    •    炎症反応(内皮炎)

    •    血管の透過性亢進

    •    血液脳関門の破綻

    •    微小出血のリスク増加

 

といったメカニズムが理論的に示唆される。

 

⚠️【現時点での限界】

 

ただし、本研究は症例報告型の病理学的観察に基づくものであり、統計的な因果関係の立証には至っていない。

要するに──

 

「スパイクタンパクが“そこにいた”こと」と

「それが“原因だった”こと」は

別の問いである。

 

これは非常に重要な視点であり、感情的な結論よりも、冷静な検証の継続が必要である。

 

📘【次回予告】

 

次回のブログでは、以下の点を掘り下げる予定である:

    •    なぜ厚労省は、全国的なデータ開示を渋っているのか?

    •    統一電子カルテが進まない理由とは?

    •    かつて「ビッグデータ」によって命が救われた症例とは?(例:GWASによる遺伝病解明)

 

そして、医師として、科学的に“問う”姿勢の大切さについて、もう一歩深く掘り下げてみたい。

 

✍️ 医療者は、断定ではなく仮説と共に立つべきである。

いま必要なのは、「怒り」ではなく「検証」である──。


 

 

 

【学術レポート要約】

mRNAワクチン接種後の脳動脈におけるSARS-CoV-2スパイクタンパク発現──出血性脳卒中との関連性の検討

 

 

出典:Journal of Clinical Neuroscience,2025 Apr Volume 3:136:111223. doi: 10.1016/j.jocn.2025.111223.(リンク→❤︎)論文名:“Expression of SARS-CoV-2 spike protein in cerebral Arteries: Implications for hemorrhagic stroke Post-mRNA vaccination”

 

【研究の背景】

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するmRNAワクチン(Pfizer-BioNTech製 BNT162b2およびModerna製 mRNA-1273)は、その短期的な有効性・安全性が確認された一方で、長期的な生体内挙動や局所組織での影響については不明な点が多く残されている。

 

【研究概要】

2023年3月~2024年4月に札幌の病院で外科手術を受けた出血性脳卒中患者19例を対象に、脳動脈や周辺脳組織でのスパイクタンパク(Spike)およびヌクレオカプシドタンパク(N)の免疫染色を実施。さらに一部症例にはin situハイブリダイゼーションも実施し、ワクチン由来か感染由来かを判定。

 

【主な結果】

    •    43.8%(16例中7例)でスパイクタンパク陽性。

    •    スパイク陽性はすべて女性に限定され、有意差あり(p=0.015)。

    •    陽性所見は脳動脈の内膜(intima)に集中。

    •    最長17か月後でもスパイクタンパクが残存。

    •    炎症性細胞(CD4+, CD8+, CD68+)の局所浸潤あり。

    •    Nタンパクは全例で陰性 → ワクチン由来の可能性が高い。

    •    in situハイブリダイゼーションにより、ワクチン由来mRNAの存在も確認された。

 

【解釈と意義】

    •    mRNAワクチンの長期的なスパイクタンパク発現と、局所免疫反応の可能性が示唆される。

    •    出血点そのものではなく周辺組織からのサンプルであるため、直接的因果関係は証明されていない。

    •    しかし、ワクチン成分の長期残存や性差(女性優位の発現)という新たな視点を提示。

 

【限界と今後の課題】

    •    症例数が少なく、統計的強度に限界。

    •    スパイク陽性が必ずしも発症要因であるとは断定できない。

    •    グローバルでの追試(再現研究)が必須。

    •    生体内でのLNP(脂質ナノ粒子)分布や血管内皮バリア透過性に関する理解が不足している。

 

【補足:医療・政策への影響】

    •    本研究は、「ワクチンは安全」という一元的な議論に一石を投じるもの。

    •    実際の患者組織からの直接観察であり、「mRNAワクチンは数日で消える」という前提に再検討を迫る。

    •    予防医学・接種政策において、“透明性”と“記録保存”がいかに重要かを示している。