🕊️ 世界初、mRNAインフルエンザワクチン承認
――次に問われるのは、「技術」ではなく「検証」である
2026年8月、米国FDAは、モデルナ社のmRNA季節性インフルエンザワクチン「mFlusiva(mRNA-1010)」を承認しました。
世界初となる、mRNA技術を用いた季節性インフルエンザワクチンです。
mRNAといえば、コロナワクチンです。
通常、新しいワクチン技術が一般に普及するまでには長い年月を要します。しかし、新型コロナでは世界的なパンデミックの中、mRNAワクチンは極めて短期間で実用化されました。
その後、日本では接種後死亡として報告された事例が2,000件を超えていますが、その大半は専門家評価で「γ(評価不能)」と整理されています。一方で、健康被害救済制度では1,000件を超える死亡一時金・葬祭料の認定が行われており、私は先日の国会で、この二つの制度が十分に突合・検証されていないことを問題提起しました。
コロナワクチンをめぐっては、体内分布、長期的な残存、免疫応答、そして市販後安全性評価などについて、現在も研究と議論が続いています。また米国では、政策決定や情報公開、製薬企業をめぐる司法手続も進んでいます。
そうした知見や教訓が、今回のインフルエンザmRNAワクチンの審査や承認後の安全性監視にどのように反映されたのか。
そこまで説明されて初めて、国民は安心して新しい技術を受け入れることができるのではないでしょうか。
さて。今回の治験の対象は50歳以上。
50〜64歳は通常承認、65歳以上は追加試験を条件とした迅速承認となりました。
実は、このワクチンは一直線に承認されたわけではありません。
今年2月、FDAは一度、この申請に対しRefusal to File(申請受理拒否)という極めて珍しい判断を行いました。
理由は、比較対象(Comparator)の設定が「最善の標準治療を反映していない」というものでした。
その後、追加の審査やFDA諮問委員会での議論を経て、最終的に承認へと至っています。
臨床試験には約4万人が参加しました。
結果は、
- 従来型インフルエンザワクチン群:約2.8%が発症
- mRNAワクチン群:約2.0%が発症
と報告され、従来ワクチンに対して相対的に約26.6%高い有効性が示されました。 一方で、この試験には一つ注意点があります。
プラセボ群はありません。
比較されたのは、「mRNAワクチン」と「既存のインフルエンザワクチン」です。
つまり、この試験で分かるのは、「mRNAワクチンは従来ワクチンより優れているか」という点であり、「mRNAワクチンそのものがプラセボと比べてどの程度有効なのか」を評価した試験ではありません。
これは、すでに有効と考えられているインフルエンザワクチンが存在するため、プラセボ対照試験を行うことが倫理的に難しいという背景があります。
今回は約4万人を対象とした大規模試験ではあるものの、追跡期間は主として1シーズン、約6か月です。短期的な有効性や安全性の評価には有用ですが、稀な有害事象や長期的な影響については、この試験だけで結論を出すことはできません。だからこそ、承認後の継続的な検証が重要になります。
ちなみに、mRNAの最大の利点は“速く作れること”だとされています。しかし、今回承認されたワクチンは従来と同じ株選定スケジュールで評価されています
mRNAという技術は、今後インフルエンザだけではなく、RSVやCMVなど、さまざまな感染症へ応用されていく可能性があります。
だからこそ、コロナワクチンで得られた知見や課題が、どのように次世代のmRNAワクチンの審査や安全性評価に反映されたのか。その説明は、これまで以上に重要になると考えています。
新しい技術だからこそ、承認はゴールではありません。
承認後も長期にわたり検証を続けること。
そして、その結果を国民に誠実に説明し続けること。
さらに、相対リスクだけではなく、絶対リスクも併せて示し、一人ひとりが自ら利益とリスクを判断できる環境を整えること。
それこそが、次のパンデミックに向けた最大の備えになるのではないでしょうか。











