知らないばあちゃんが勝手に玄関を開けて
自宅に入ってきた話。
私も念のため(また来たときに送り届ける)
ばあちゃんの住所と氏名を聞いたら
目と鼻の先の距離。
住宅街なんでほとんど地域住民、知らない方ばかりなので新参もの枠としては
さっぱりわからん。
ここは重鎮、マダムに聞くのが一番詳しい。
｢マダムさん、梅田さんのおばあさんご存じですか｣
｢もちろん。
おばあちゃまが、徘徊されてらっしゃるわよねぇ。
おばあちゃまの旦那さんは数年前に亡くなってて、息子夫婦が引き取ったんですのん。
おばあちゃま、土地勘ないでしょう。
まだお元気なときから全然、交流がなくて。
家に帰りたい、家に帰りたいと言ってましたの。
ただ、いろいろ、ご事情もあって息子さんのおうちに来たんですのん｣
……マダムすごい説
｢昨日、梅田さんのおばあさんが玄関を開けて勝手に入ってきちゃいましてね。｣
｢あら、先日も、その前も、違うお宅に入ってましたのよ。｣
｢息子さんの奥さん、無言で連れて帰ったんですけど、いつもそんな感じなんですか｣
｢一緒に住んでるけど、関わりたくない。ってご夫婦ですの。
おばあちゃまを送り届けたり、通報されて連絡がいくでしょう。そうすると、怒りますの｣
｢……誰を怒るんですか｣
｢連れてきた人ですわよ。
“勝手に出ていったんだから知らん”って。
息子さんは６０代くらいかしらん。お子さんはみんな独立されてまして
おばあちゃまと、息子夫婦の三人暮らしですわ｣
｢……勝手に出ていったんだから知らんと言われても困りますよね……。｣
｢おばあちゃまを保護なんかしたら大変ですわよ。息子さんが怒鳴り込んでくることもありますの。｣
保護しちまって
これから怒鳴りこまれるのか。ワタシ。
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｢おばあさんの徘徊に疲れきってる感じなんですか｣
｢どうでもいい。って仰ってますわよ。
真夏でも真冬でもフラフラ出ていっちゃうでしょ。で、みなさんが送り届けると
ムスッと無言でドアをバタン！って閉めておしまいですの。
ですから、来たら、パッとお外におばあちゃまを出してなるべく関わらないように
みなさんされてますの｣
｢なかなかクソ頑固な息子ですな……。
介護放棄なんて下手したら逮捕案件ですよ
介護疲れでメンタルやられてるなら地域包括とかに相談しないんですかねぇ｣
｢それなんですの！みなさんおばあちゃまが心配で、息子夫婦に言いにいくと、“うるせー！”って怒鳴りますの｣
｢うるせー！ですむ話ではないですな。
徘徊を放置して亡くなった。なんてなったら保護責任者遺棄罪ですからねぇ……。
他人が安易に介入できる問題ではないですけど、それほど頻回かつ、息子夫婦がその持論なら
ばあちゃんに危険しかないと。｣
｢のぇるさん、次におばあちゃまがいらしても関わらないのを頑張るしかないですわ｣
続きます