某駅のロータリーで
70代くらいの女性に声をかけられた。
「あなたの幸せを祈らせてください」
最近、やたらめったらバカモトやら当たり屋やら巻紙LINEやらで
不幸オーラ出しまくってるのは自覚済み。
聞くと、この人の手をかざすだけで私の健康状態やら人間関係、困りごとがすべて解決するそう。
特筆すべきは交通事故。
これはなんとタイムリー!
車両と自転車事故も専門にやってくれるそう。この人が交渉してくれたらクソ面倒くさい裁判をしなくて済むハズなわけ。
非科学的なことに本気出してる感。
私 、10分前行動のタイプでして、待ち人が来るまでは暇。
ヌボーッとする時間にするか、隙間時間を自己啓発に使うかなんて運命の分かれ道だったりもするわけだが
意識して休むことをするのも大切。
今の私には幸せを祈ってもらう時間はある。
むしろ、車両事故を解決してくれるなら話を聞かなきゃ損する気がしてきた。
「私、もう、話し始めたら不眠不休で3日はかかるんじゃないのと思うくらい語り尽くせぬ青春の日々なんですよ」
「あなたの幸せをお祈りすればありとあらゆるものから解放し、変わっていきます」
祈られただけで解放されたらこんなラクなことはない。事故の件は即日解決を望んでいる。
「失礼ですが、お宅さまは、祈ってみて
直近数ヶ月でなにが変わったのでしょう」
「ワタクシの場合は、病気が完治致しました。非行に走っていた息子も落ち着き家庭が穏やかなものとなりました」
「お宅さまのご年齢からの推測の域をでませんが、息子さん、40代~50代で非行に走っていたわけですか!
それまで非行に走りつづける中年はなかなかキツい!というかイタい!
でもいますよねー、還暦まで非行というか愚行に走る親戚もおります」
「私が手をあてるだけで、あなたに幸せは訪れます」
「車対自転車の事故なんですが。これが難航してまして。その辺も今日の一発で丸っとサクッと示談成立!みたいな感じですか」
「一度では効果はあらわれませんが、お祈りを続けていくうちに必ずや解決の道を得られるでしょう」
「期間の定め。みたいなものは。
希望としましては即日解決を望んでおりますが、即効性がなくとも8割解決は譲れないところかと。確たる目的達成期間を設定せずに祈ってもらう時間が無いです」
「おでこにワタクシの手をあてますね」
「あなたのおでこに、ご自身の手をあてると。
ロダンの考える人状態になりそうですけど、私はそれをひたすら見守る側でいる状態はなかなかキツい。
一人で額に手を当てている人を、私がわずか50㎝の至近距離で見ていたら第三者的には顔面殴ったか、説教しているみたいに見える。これ、見ていないとダメみたいな決まりがなければ私は去りますのでお一人で願えませんか」
「いえ、あなたのおでこに、ワタクシの手をあてて祈るのです」
「はい?」
「ワタクシがあなたの額に手をあてることで、あなたが浄化されます。」
「浄化と示談成立の関係性は」
「あなたが浄化されることで清められます」
「まぁ、交渉ごとなんて突き詰めれば双方の主張がこじれない限り発生しないわけですしね。
結構、いいところ突いてくるとは思いました。譲り合いの精神的な話でまとめたいのはやまやまですが。そうもいかないのが法の世界なんですよね。証拠ありきなので。
では、移動しますので失礼します」
「呪われますよ」
「誰に」
「神にです」
「そちらも浄化しておいてください」