「ずっとのおうち」とは、保護犬や保護猫などを新しく家族として迎えてくださったご家庭の総称として使われることが多い言葉です。
特に、動物愛護団体や個人活動者など、保護動物を譲渡する活動をしている人が使うことが多いかなと思います。
2019年7月から活動を開始しましたが、多くの素敵な「ずっとのおうち」に出会うことができました。きっとこれからもたくさんのご家庭と出会うんだと思います。
そんなおうちのことを、密かに「ドッツファミリー」と呼んでいるのですが、これまでインスタグラムではご紹介しきれなかったドッツファミリーとの素敵なエピソードなどを投稿していけたらいいなと思います。
今回は、この「ドッツファミリーストーリー」にふさわしい幕開けのおはなしをしましょう。
さかのぼること今から6年前の2016年の11月
まだドッツなんてできていなくて、ただの一般市民だったころです。
とある場所のふれあいまつりに参加しました。名古屋市某所で開かれたとても小さな地域のお祭りです。ちょうどハロウィンだったので、可愛い仮装をした子どもたちから元気なご年配の方まで、ステージや模擬店を楽しんでいました。
楽しく参加してお土産もたくさんもらった帰り道、車を停めてあった駐車場へむかいました。
すると、ちいさな子猫が人の流れを波縫うようにひょこひょこ歩いていました。周りには今にも動き出しそうな車もありました。
可愛いなと顔を見てバイバイと手を振ると、なんとついてくるではありませんか。
駐車場の係をしていた男性に勇気を出して聞いてみると、
・ここは今日だけ借りている臨時駐車場で、もともと建設会社の敷地である
・おまつり会場の近くに、何匹かの猫が暮らしている草むらがある
・この子猫だけ歩行者について一緒にここまで来てしまった
・何度もそのやぶに戻したが、毎回出てきてしまう とのことでした。
こんなところにいたら危ないなと思いながらも、どうすることもできないまま、車の鍵を開けて乗ろうとすると、なんとその子猫も一緒に入ってきてしまいました!
さすがに困り果てて、一度は外に出しましたが、それでもずっと足元を離れずに甘えてくる子猫を見ながら、考え込んでしまいました。
「あー!ねこちゃんだ。かわいい。」と言いながら、あちこちから子どもたちか近寄ってきて、そこで一気に覚悟が決まりました。
「あの、この子を連れて帰ってもいいですか?」
駐車場係のお兄さんはびっくりしていましたが、このままやぶに戻し続けるだけなのでと連れて帰ることを了承してくれました。
「さあ、今度は家に着くまで降りないでね。」と、子猫を車に乗せて自宅へと連れて帰ることになりましたが、まさか出先のふれあいまつりで子猫に出会うとも思ってもいなかったですし、その子を連れて帰ることになるなんて、思ってもいませんでした。
ただ、当時住んでいた賃貸のアパートは「ねこちゃん不可」でした。
では、なぜ保護に踏み切ったかというと、完全に実家をあてにしていました。
実家では数年前から猫と暮らしていました。その子は「あやちゃん」という三毛猫で、ある日突然実家の勝手口に現れて、そのままそこから離れなくなったそうです。
数週間そこに居続けて、天候が悪化するタイミングで保護したようです。
そんな経緯があったので、「子猫一匹なら大丈夫なんじゃないか。」と完全に見切り発車で保護をして、すぐさま実家に連絡しました。
すると、数週間程度なら預かれるけど、あやちゃんは猫嫌いだからうちで飼うこともそれ以上預かることもできないと言われました。
そこからは、もう疾風のごとく次々と動き出しました。
まずは隣県の実家まで行き、子猫と子猫の飼育に必要なものを渡し、今度は名古屋に帰ってきて、猫を飼ってくれる人をどうやって探したらいいかを調べて、「ペットのおうち」で募集をかけてみることにしました。
サイトには可愛い保護動物たちが群雄割拠で、同じ地域から何千何万も募集投稿がありました。ここからうちの子猫を選んでくれる人なんているのかと、漠然と不安に陥ったことを今でもよく覚えています。
実家から言われた「数週間」で本当に子猫の譲り先が見つかるのかという不安をかかえながら、毎時間サイトの新着メッセージを確認する日々が続きました。
すると、ある日「応募がありました。」と通知が来ました。
よく見てみると、実家から数十分の場所でした。
募集地域として、愛知県以外にも岐阜県、三重県を入れていて、この三県ならどんなに遠くても、いい人だったら送り届けようと心に決めていたのですが、灯台下暗しというか、まさかのご近所でした。
募集をしているときに、「面会してから後日譲渡にしたほうがいいです。」などと、コメントでたくさんの人から助言をいただいていたので、まずはお見合いをしました。
これまでにもねこちゃんと暮らしていたご夫婦で、小さな美容室を営んでいました。
どんな人なのか不安でしたが、お会いしたときにこのおうちに託そうと思うことができたのが決め手でした。当時は何の判断基準もなく、数時間ゆっくり子猫との面会を交えて談笑するなかで、そう思えたというのが、決め手でした。
そして、ずっと気になっていたことを聞きました。
「あんなにたくさんの募集があったのに、どうしてこの子なんですか?」と聞くと、「うふふふ、一目惚れよ。」とあっけなく言われました。
戸惑っていると、それを察してくださったのか、「耳もね、ピーンとしてて可愛いでしょ?顔もくりっとしてて可愛いしね。」と、おっしゃってくれましたが、正直素人目では他の子との違いが分かりませんでした。それどころか、この子より可愛い子だっていっぱいいたのに。
でも、そうやって軽く言われたことが、何だかこちらの心まで軽くしてもらった気分になって、「じゃあ、また来週連れてきますね。」と晴れやかな気持ちで、次の約束をすることができました。
一週間後、めでたく「おうちの子」として迎えてもらえました。
そして、お友だちがいたほうが楽しいよねということで、そのおうちの地元の保護団体から、同じ月齢の子猫を譲り受ける予定があることも教えてもらいました。
それからちょうど6年が経過しました。
はじめてのねこの譲渡はこんなストーリーですが、私たちはこのとき、数年後再び子猫を保護することになるなんて知る由もありませんでした。それが断崖絶壁で衰弱している子猫だとも、もちろん知らず笑
そして、そこから「団体設立」をするなんて、夢にも思っていないでしょうね。