2021年にリマスターされ高画質で再公開された、
黒沢清監督、初期の殺人鬼もの16ミリ映画。
「地獄の警備員」
1992年の作品。97分。
バブル期、商社の社屋ビル内で、
殺人で逮捕歴のある元力士の警備員が、
静かで不気味な殺人を繰り返すスラッシャー。
新人の女子社員が他の社員数人と共に、
真夜中のビル内で狂った警備員と対決する。
久野真紀子演じるヒロイン、気が強めのOLさんが可愛い。
無表情で容赦無く人を殺す、松重豊演じる怪力の警備員の不気味さ、
これに尽きる作品。
大手企業の立派な社屋高層ビルが舞台なのに、
バックヤードに地下室や配電盤室等、暗く寂れた空間が広がる。
そこに人知れず死体が放置されている異様さが良いです。
都会の死角。
当時流行りの特殊メイクによる派手な殺人描写などはほぼ無し。
元力士の大男が、
有無を言わさぬ怪力で、人を殴り殺す、捻り殺す。
表情一つ変えずに。
それが異様で怖い。
この作品には派手で残酷な直接描写など必要無い、
とまでは言わないけど、
無くても今ある画だけで十分恐怖の醸造に成功している!
黒沢監督、流石の演出力!
全編覆う異様な空気感。
当時流行りのスプラッター的な派手さは無いけど、
とても味わい深い殺人鬼映画です。
溢れ出す血だけで十分衝撃的だった殺人描写。
あとついでに、絵画取引きの部署が舞台なので、
バブルの頃の企業の景気良い感じが懐かしい。
シャガール八十億なら安い、
とか、
三千万円以下の手頃な絵画を集めろとか、
今じゃ考えられないバブリーな商談が飛び交います。
当時これが普通だったんだから今の日本はほんとに没落したなあ。
松重さんはこれが映画デビュー。
あの顔、あの感じは善人にも悪人にも見えて面白い。
他、長谷川初範、大杉漣、諏訪太郎、内藤剛志ら、
今見ると超豪華キャスト。
その後の日本映画界を支える俳優陣が皆若々しいです。
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