新説『マジすか学園4』
#3975『そのアイドル、天然につき125 成美の主張』
ゆうゆからの報告で、山荘の広間が紛糾している。消えた遺体の処遇について、ねるの上からの発言に茜が怒り出さないか、北川はヒヤヒヤする。さらに大胆な発言に出るのは梨加だ。
『遺体が消えちゃったんでしょ。それにゆうゆの話だと、6人の女性たちって実際はみんな幼稚園児の時に亡くなった人たちで、家族だけでなく学校や職場で出会った人たちの記憶にも残っていないみたいだから、きっと存在しない訳じゃない。だったらもうこのまま放っておけばいいんじゃないの。逆にそれしか方法がないと思うけど』
梨加が随分と断定的なことを言ってくるなと思う北川だか、さらに菜々香が後押ししてくる。
『あとは本部の人たちが、ゆうゆの話を信じるかどうかだよね。私たちはこの場にいて雰囲気を経験したから信じる気持ちになってるけど、これをあとから説明して信じてもらえるかどうかって話よ。もしかしたら信じてもらえないどころか、私たちが嘘を言ってるとか、ゆうゆの妄想に騙されてるとかって言いそうじゃない。そんなことになったらどうするの!?』
返答を促された形になったので、茜が重い口を開く。
『梨加と菜々香が言うことはもっともな話だと思うけど、ともかく私たちは任された仕事をきちんとやり遂げたんだから、それをそのまま上に報告すればいいだけの話で、もし否定されたら仕方ないじゃない。引き下がるしかないわ。上の判断には逆らえないんだし』
茜の意見に誰もが黙ってしまうが、沈黙を破るのは意外にも成美だ。
『それじゃあ、ゆうゆが苦しい思いまでして過去に戻って見てきたことは、どうなるんですか!?さっきは信じてくれるようなことを言ったじゃないですか!それなのに上の判断には逆らえないってどういうことですか!事実をきちんと伝えるのが、現場で働く刑事の使命なんじゃないですか!』
刑事ドラマの影響を受けたかのような成美の言い分に対抗するのが、愛佳の役目だ。生徒会長だとゆうゆが言っていただけのことはあるなと思う。
『言いたいことは分かるわ。私たちだって、ゆうゆの話はきちんと全部伝えるに決まってる。ねると平手という立ち会い人がいて、記録を残してもらってるんだから。聞かなかったけど、どうせ会話を録音してるんでしょ。肝心なのは、こんな話を本部が信じるかどうかってことなのよ。きっと信じないと思う。頭が固い人たちばかりだから。そうなったら、私たちにはこの話を信じさせる力がないってことなのよ。形に残る証拠という物がないんだし、クローゼットのメッセージだって絶対的な証拠にはならないのよ』
成美が言い返す。
『どうしてですか!ゆうゆが過去に戻ったから分かった話なんですよ。刑事のみなさんも確かめたじゃないですか!』
『そりゃあ確認して事実だと思ったわ。でもこの場にいなかった人たちに説明して、信じてもらえないかもしれないって話じゃないの!』
『ということは、刑事のみなさんが、上の人たちに信用してもらってないってことですよね!』
成美が果敢に言い返してくるので、場の空気が益々険悪になってしまう。それでも成美の意見が正論なので、茜と愛佳は説得力のある反論が出来ずにいる。
◇続く