新説『マジすか学園4』
#3844『アイドルに転職は難しい194 カプセルの効果』
「SF翼のない白雪姫(13/33話)」
<ブラックシープス>
白雪姫・みーおん(AKB48 向井地美音)
アツリーヌ(前田敦子)
さーなん(髙寺沙菜)
小林由依
今泉佑唯
守屋 茜
志田愛佳
平手友梨奈
長濱ねる
リョウ (北川綾巴)
カチドキ(堀 未央奈)
長沢菜々香
渡辺梨加
音 葉(町 音葉)
ユ キ(矢作有紀奈)
モ エ(矢作萌夏)
<うどん はた屋>
よこにゃん(SKE48 北川愛乃)
はたごん(SKE48 髙畑結希)
ちかこ(SKE48 松本慈子)
優莉奈(AKB48 行天優莉奈)
<カプセル販売員>
舞 香(=LOVE 佐々木舞香)
<謎の女の子>
せなたん(∴ヒロイン転生 星乃宮せな)
「明晰夢誘発カプセル」を買う際に出会ったせなたんを、白雪姫たちは寮に招いた。
昼食を食べ、路上ライブに同行し、夕食も食べ終わったせなたんがようやく帰ろうとした時、モエが声を掛ける。
『せなたん。モエの余ってる服があるんだけど、良かったらもらってくれる?』
昼夜とほとんど遠慮を見せることなくテーブルについたせなたんが、一体どんな返事をするのだろうとみんなが注目する中、『そうですか。じゃあ、もらっていきたいです』と小さな声で答えた。モエが『ちょっと待ってて』と言い残し、自分の部屋に走る。
そんな様子を見て、今泉が思い出す。200年前の戦禍で命を失ったモエが、まだ実体のない霊として自分たちの前に姿を見せ始めた頃は、今のせなたんよりも貧しそうな服をいつも着ていた。その後どういう訳か生きている人間と同じように進化し、今は稼いだ金貨で新しい服を買い集めることを楽しみにしている。そんなモエが、せなたんに服を譲りたいと言い出した気持ちが、今泉にはよく分かる。
しばらくして何着か上下セットの服を持ってきたモエだが、せなたんには大き過ぎたので、代わってせなたんに1番背丈が近い白雪姫が服を譲ることになった。白雪姫が着ている上品な服を、せなたんはとても嬉しそうに受け取った。
その後せなたんは、ブラックシープスの中で唯一、寮暮らしではなく父親と暮らしている音葉と一緒に寮を出た。
それから数時間後、いよいよ待望の「明晰夢誘発カプセル」を服用することになった。今度のカプセルは黄色と白で、みんなで一斉に飲んでから眠りについた。
その翌朝、朝食の前にみんなが顔を合わせると同時に、カプセルの効果について話し始めた。驚くべきことに全員が明晰夢を見ることに成功した。ただしその数分後に目が覚めてしまうなど、自在に操るところまでは行かなかった。それでも明晰夢が実現したことだけでもかなり興味深く、この日から連夜のようにカプセルを飲み続けた。
その結果、舞香が説明していたように、日を追うごとに夢の中で自由に動き回れるようになり、さらには夢の展開も思うままに進められるようになった。そしてもう1つ連日のように続いた出来事は、せなたんが寮にやって来ることだ。白雪姫にもらった服を着て午前中に現れるせなたんは、昼食をみんなと一緒に食べる。その食べっぷりを見ると、朝食を抜いてここに来ているのではないかとみんなは思ったが、誰もそのことを口にしなかった。
せなたんは路上ライブにも同行し、夕食にもありついたあと、暗くなってから音葉と一緒に帰ることが続いた。それでもせなたんは寮の掃除や畑仕事を手伝ったり、路上ライブでの裏方や金貨回収も真面目に取り組んでくれるので、誰からも苦情や文句が出ないどころか、ムードメーカー的な存在になった。
そんな中、回数を重ねて明晰夢を自在に操れるようになると、街の人たちを含めて誰もがカプセルの虜になった。ブラックシープスのみんなも、初めのうちは昨夜見た夢の中での行動を自慢げに語り合ったりしていたが、何日も経つうちに誰も広言しなくなり、自分1人で見る夢の世界に没頭し始めた。なぜなら現実よりも、思うままになる夢の世界の方が数段楽しいからだ。
そんなことが1か月以上も続くうちに、睡眠圧縮カプセルであれだけ賑わった街の様子が一変した。街の人たちが外に出ての娯楽よりも、カプセルの代金以外はタダで楽しめる夢の世界に引きずり込まれたからだ。必要最低限の日常生活は続けているものの、街の様子も人々の活気も完全に衰退してしまった。
◇続く