新説『マジすか学園4』
#3843『アイドルに転職は難しい193 せなたんの素性』
「SF翼のない白雪姫(12/33話)」
<ブラックシープス>
白雪姫・みーおん(AKB48 向井地美音)
アツリーヌ(前田敦子)
さーなん(髙寺沙菜)
小林由依
今泉佑唯
守屋 茜
志田愛佳
平手友梨奈
長濱ねる
リョウ (北川綾巴)
カチドキ(堀 未央奈)
長沢菜々香
渡辺梨加
音 葉(町 音葉)
ユ キ(矢作有紀奈)
モ エ(矢作萌夏)
<うどん はた屋>
よこにゃん(SKE48 北川愛乃)
はたごん(SKE48 髙畑結希)
ちかこ(SKE48 松本慈子)
優莉奈(AKB48 行天優莉奈)
<カプセル販売員>
舞 香(=LOVE 佐々木舞香)
<謎の女の子>
せなたん(∴ヒロイン転生 星乃宮せな)
「睡眠圧縮カプセル」に続く第2弾「明晰夢誘発カプセル」を買うため、早朝から売り場に並んだ、さーなん、ねる、モエ、白雪姫、アツリーヌの5人。カプセルを盗もうとしたせなたんを助け、帰りは一緒だ。
一行が寮に戻ると、真っ先に茜が指摘してくるので、白雪姫が務めを果たそうとする。隠しだてするとあとでトラブルの元になりかねないので、全てを話すと決めている。
『みんな、この子のことは知ってるよね。最近ライブを観に来てくれる子で、名前はせなたんって言うの。実は今日私たちがカプセルを買いに行った時、せなたんがカプセルを盗もうとして捕まりかけたんだけど、代わりに金貨を払って助けてあげた。金貨はこの5人で分担して払ったから。それでお腹が空いて困ってるってことだったから、一緒にご飯を食べようって招待したの』
白雪姫が予想していた通り、気が強い茜と愛佳やリョウだけでなく、誰からも文句が出ない。かつて自分とアツリーヌが、この寮で奴隷のように虐げられた生活をしていた茜たちと知り合い、さーなんの力を借りて助け出しただけに、せなたんに対して優しく接してくれるだろうと想像していた通りだ。せなたんの薄汚れた服装からも、大体のことが分かるはずだ。
すぐにせなたんの座る場所が用意されたあとは、留守番していた者たちの興味がカプセルに移る。そこで舞香から直接詳しい説明を聞いたモエとアツリーヌがみんなに教え始め、ところどころでねるが補足した。
カプセルの効果がきちんと伝わったところで、昼の食事当番が席を立ち、準備に取り掛かった。メニューは昨夜作っておいたクリームシチューなので、温めるだけですぐに出来上がりだ。それをコッペパンと食べることになった。楽しみにしていたカプセルだが、さすがに昼間のうちから眠る気にはなれず、夜になって暗くなるまでのお楽しみにしようとの結論に至った。
昼食後2時間程経って、今日の路上ライブに出る6人が寮を出ることになった。その中の茜に『せなたんも一緒に行く?』と聞かれ、嬉しそうに頷くせなたんだった。
夕方前になってライブ班の6人が寮に戻ったが、その中にせなたんがいることにモエは少し驚いたが、すぐにこの意味を理解し、自分からせなたんに声を掛けてみる。
『せなたん。もうすぐ夕ご飯の時間だけど、一緒に食べてったらどう?』
せなたんが恥ずかしそうに『はい。いただきます』と言い、ペコリとお辞儀した。
路上ライブで集まる金貨は、生活費を白雪姫とアツリーヌが管理しているが、残った分は16人全員で均等に分けている。幸い路上ライブは人気を維持しているし、自分たちで畑を耕しているので食べることには困っていないため、誰からも不満の声は上がらない。
クリームシチューは昼で空になってしまったので、夕食当番が今夜のメニューであるロールキャベツ作りに取り掛かったのを見て、せなたんは自分から申し出て手伝い始めた。もっともせなたんはまともに料理をした経験がないのか、ほとんど役に立たないままロールキャベツが出来上がり、夕ご飯の時間になった。
それを食べ終わる頃、白雪姫がここまで聞けずにいたことを、はっきりと確かめる。
『せなたんはこの近くに住んでるの?』
まだ食べ終わらないせなたんが、手の動きを止めて答える。
『はい。割とこの近くです』
『割とこの近くって、どの辺?』
『街に帰る途中くらいですけど…』
詳しい場所を言うつもりはないのだなと判断した白雪姫が、別のことを聞く。
『もう暗いけど、1人で帰れる?』
『はい。帰れます』
『家族は誰がいるの?』
『家族ですか。お兄ちゃんと暮らしています』
『えっ、そうなの…。ここに来ているって連絡してないよね。大丈夫!?』
『うーん。お兄ちゃんはお仕事で今日は帰ってないですから、別に構いません』
『そうなんだ…』
せなたんの言うことが本当なのかなと疑う白雪姫だが、本人が詳しいことをあまり喋りたくないようなので、これ以上、問い詰めることはやめておく。人には知られたくないことがたくさんあるし、裕福な暮らしをしていなさそうなせなたんだけに尚更だ。するとせなたんが食べ終わり、みんなと後片付けを始めた。
◇続く