今だ現役、ご存知ジュニア マンス。その素晴らしさは以前も「アット ザ ヴィレッジバンガード」で紹介した通り。この人こそ日本でいう人間国宝みたいな称号を与えてあげなければいけないのではないか、と僕は真剣に考えてしまうのであります。
さて、そんなマンさんが初めてレコード会社と契約したのが、リバーサイドとその付属レーベルであるジャズランド。本作はその輝かしき第1作にあたるもので、1960年の録音。
調べてみると1928年にシカゴでお生まれになったマンさんはこの時32歳。ジャズプレイヤーとしては心身共に最高にノリまくれる歳ではあるのだけれど、初契約(初リーダーはヴァーヴ)としては、その実力と才能からすれば遅すぎる感が無きにしもあらず。
ただし、この原因は評価が遅れたからといったものではく、逆に評価されすぎたからだったのではないかと思う。
というのはマンさんの場合、生地シカゴにおいて19歳でジーン アモンズのグループでプロとしての演奏活動を始めるや、ニューヨークに出てからはレスター ヤング、ソニー スティット、キャノンボール アダレイ、ディジー ガレスピーと錚々たる人気プレイヤーの元で働いている。マンさんの実力からして、これらはすべてリーダー達から望まれての参加であっただろうし、人気スターだけにその仕事の数も尋常な数では無かったのではないか?恐らく同じ所に滞在してる時間なんて無かっただろう。
これでは自分のリーダーアルバムなんて制作してる余裕なんてある訳はない。ピアニストの場合、実力の割にリーダーアルバムが少ないプレイヤーを度々目にする。以前紹介したギルド マホネスやリチャード ワイアンズなんかもそうだろう。しかしだからといって彼らをすぐに過小評価と結びつけるのは早合点で、実際にはこの様に信頼され、大御所にひっぱられ続けた結果、自分の活動が出来なかった人もいたと考えなければいけないんじゃないかと思う。
そんなマンさんだが、それでもこうして1つのレーベルからリーダーアルバムを制作して行ける機会を与えられたのは、我々ジャズファンからすれば嬉しい限りだ。
紹介する「THE SOULFUL PIANO OF~」はタイトルからして、これからマンさんを売っていくぜ、という姿勢が表れたものだが、そのわりにはマンさん自身や、ミルト ジャクソンなどのジャズマンオリジナルが中心だし、エリントン ナンバーにしても「MAIN STEW」なんて通しか知らない曲を取り上げている。唯一の有名曲でも「SWEETS AND LOVELY」止まり。はっきりいって地味だ。これは恐らくレーベルよりもマンさんの考えた選曲なのだろう。
しかしその分、本作はこれまでのありとあらゆるジャズピアノのスタイルを網羅したというマンさんの魅力が120%発揮されている作品であるのは間違いない。本作こそ良作の見本の様な出来映えであり、またその姿勢があくまでもミュージシャンの意向を尊重するジャズランドらしく好感がもてる。淡いブルーを基調としたハイセンスなジャケットデザインも良いね。
ジャズランド並びにリバーサイドは、結局マンさんのリーダーアルバムを、僕の知る限り6枚制作した。そのうち5枚がピアノトリオ作だ。レーベルがいかにピアニストとしてのマンさんに力を入れていたかが伺える。「ヴィレッジヴァンガード」の項でもふれたが、それらは皆、ソウルフルだけにとどまらず、ピアノトリオの理想型を感じるものばかり。作品としての完成度の高さが半端ではないのだ(もう1枚は「ハリウッド ソウル」で、正直???な作品)。
ただし、その5枚には同じメンバーで録音されたものは無い。マンさんはリバーサイド時代、やはり並行してジョニー グリフィン&エディ ロックジョウ デイヴィスなどとも活動している。恐らく自分のトリオを結成する余裕は無かったのだろう。もしレギュラーグループでアルバムを発表していればリバーサイドにおけるスリーサウンズのような存在になっていたかも知れないし、オスカー ピーターソン トリオやビル エヴァンス トリオの様にもっとポピュラーな人気を獲得していたかも知れないと思えば少し残念な気がする。
といってもこれらがこのレーベルのマンさんの作品の評価を落とす一因には全くならないのは当然。なぜならいつでもどこでも誰とでもマンさんは変わらず素晴らしいからだ。
