J.J ジョンソン、スライド ハンプトン、フレディー ハバード、ジェームズ スポールディングなど錚々たるスターを排出したジャズ シティーとはいえ、やはり田舎町であることには変わらなかったであろうインディアナポリスから、一気にニューヨークで注目のまとになったウェス。女性ならさしずめシンデレラ物語でありますが、男性の場合は何と呼んだらいいものか。
紹介する本作は、それから3年が経過した1962年に録音されたもので、同郷のメル ラインのオルガンとリバーサイドのハウスドラマー的存在であったジミー コブを従えたトリオ作。ただことわっておくが、「ボスギター」なんてたいそうなタイトルが付けられている割には、しっとりとしていて、かなりおとなし目の地味な印象を与える内容である。
その原因の一つが、このメル ラインという人のオルガンが、普段このブログに登場するコテコテでノリ出したら止まらないという強引なタイプのプレイヤーとは正反対なスタイルを持っているからだろう。音もあまり大きくは出していない。あまりオルガンジャズのイメージが無いリバーサイドだが、やはりレーベルのイメージに沿ったオルガンプレイヤーであったという事か。
これに合わせたのかジミー コブのドラムもまた控え目に聴こえてくるし、ウェス本人も売りである超絶技巧を少し自粛している感もあるというもの。
ただ、この3人の息の合い方は正に絶妙で、その結果地味ながらも洗練されてセンスの良さに溢れた独特のオルガン サウンドを誕生させるのに成功している。もう田舎者とは呼ばせないぜ、という意識のあらわれか。スーツもきまってます(顔はちどりのダイゴに似ているが)。
さらに付け加えるべきは、この特徴を強調させたかの様な録音で、三者のバランスと音圧がブルーノートとプレステッジで数々のオルガンジャズの録音を手がけたルディ ヴァン ゲルダーのものとは明らかに趣きが違うという点であろう。あくまでもハモンドオルガンの持つ迫力と破壊力を押し出したヴァン ゲルダーに対し、このレイ フォーラーという人の音は、恐らく三人のインタープレイを意識したものなのではないか。ビル エヴァンス トリオでもインタープレイを強調させて成功したリバーサイドらしい作品になったとも言える。
面白いのはその結果として、ここに聴かれる音の随所に、これよりまだ20年も先の音が聴き取る事が出来るということ。僕はギターにもギタリストにも特別に詳しい訳ではないので、いつくらいからのどういう派の音という指摘が出来ないのだが、いわゆるフュージョンが生まれて以降のギタリストのレコードで多く聴かれる音が1962年の地点で生まれているように思うのだ。ウェスがクリード テイラーと組んで新しい境地を切り開いたのはもっと後の話。でもその予兆はこの地点で十分に感じる事が出来るといえるのではないか?
この音のアイデアを持っていたのは果たしてウェスなのだろうか、それともメル ラインなのか、録音担当のレイ フォーラーなのか、リバーサイドなのかは僕には判らない。ひょっとしてただの偶然かも知れない。
ただウェスとメル ラインはインディアナポリス時代から共に活動していた仲だ。とすると今のオシャレなギターサウンドが作られたのはインディアナポリスの田舎からだったというのは考えられないだろうか。









