「ホレス シルバー アンド ザ ジャズメッセンジャーズ」はそんなホレスの自己のクインテット活動のスタートを飾った記念碑的作品であって、ジャズの歴史に燦然と輝く超がつく傑作である。
1954年~55年というジャズの歴史上で最も重要な時期に録音された1枚である本作は、一般的に「The Preachar」と「Doodlin'」という2大ファンキーチューンを残した人気盤として、そのユニークでファッショナブルなジャケットと共に今もファンに親しまれている。
そのため今ではファンキージャズの代表作として紹介されているケースが多い本作。しかしこの2曲だけではない全ての楽曲がファンキーという範囲をはるかに超越した、とてつもない聴き応えに満ち溢れた名曲にして名演のオンパレードであるのは心ある音楽ファンなら既に感じてはいる事実であろう。たまらなくカッコいい「Creepin' In」はここから始まるホレスの作曲スタイルが既に確立されているし、幻想的な「To Whom It May Cncern」の生々しいまでのファンクネスには身震いをおぼえるほど。
とにかく楽曲的には60年近い歳月を経た今をもってしても全てが斬新であり、それをアート ブレイキー以下ケニー ドーハム、ハンク モブレイ、ダグ ワトキンスという現代では現れ得ないくらいの個性と実力を持った強者共が、これでもかという怪演をくりひろげる。アート ブレイキーは今さら挙げるまでもないが、本作のケニー ドーハムは彼の他の傑作のどれよりも郡を抜いた力演で我々を悶絶させてくれる。
捨て曲なしという言い方があるが、本作に限ってはそんな表現もまだまだ生優しい。世界遺産にも登録したい、奇跡の歴史的音楽芸術作品がこの「ホレス シルバー アンド ザ ジャズメッセンジャーズ」だ。言葉が無い。
僕が本作を初めて聴いたのは19歳の時だ。ド肝を抜かされたうえ、僕のジャズ人生を決定させた厚生年金会館大ホールで行われたアート ブレイキー & ザ ジャズメッセンジャーズのコンサートを観た直後だった。ブレイキーを通してホレスの名前を覚えて、すぐに中古レコードで見つけて購入した。多分自分が聴いたブルーノートの2枚目だが、確か1枚目がブレイキーもホレスも入った「ソニー ロリンズ Vol.2」だったと思うので、強烈に名前を覚えたのはこちらだったかも。この辺のいきさつは何ぶん30年近くも前の事なのでかなり曖昧なのだが、とにかく僕はジャズを聴き出したと同時にホレスのカッコ良さにまいってしまったのは間違いない。以降僕は本作を中心にして聴くジャズを選んでいくことになる。今考えるとあのとき中古レコードで本作を購入したのは、自分がジャズのおかげで楽しい人生を歩んだことを考えると正解だったし、運が良かった。
2012年、この運が自分にとってとんでもない運命に結びつく事になる。思いつきとはいえ、僕が育った神戸元町に自分の店を持つことになったのだ。しかも集めたジャズレコードをみんなで聴く店を作ると決めた。そうなると一も二もなく屋号を決めなくては始まらない。そしてそれは30年にわたりジャズを聴いてきた僕ならではのものにしなくてはならないと思った。
「ホレス シルバーだ。ホレス シルバーに関する屋号にしよう」。こう頭に浮かぶのに全く時間はかからなかった。
そこで考えた案は3つ。「Preachar」「Doodlin'」「Room 608」。これは3つとも「ホレス シルバー アンド ザ ジャズメッセンジャーズ」に収録されている楽曲の名前だ。好きなホレスのアルバムは本作以外にもそれこそ五万とある。にもかかわらず、自然と浮かんだのが3つ共本作に収録されたものであったという事を考えると、いかに自分が本作に強い影響をうけ、人生まで共にしようかというくらい愛しているのかを悟った。結局ゴロが良いのと、あくまでも自分が好きという理由でDoodlin'に決定。
更に、同時に看板は絵描きの同級生にあのカッコよくキメたホレスのスタイリッシュなポーズを描いてもらおうと決めた。結果出来上がった看板に至っては、たまらなくカッコいい最高のものになったのではないかな?と思っている。看板に中身がついて行かないではないか。とにかくDoodlin'の自慢の看板だ。
そして店内には1989年に大阪は道頓堀の「セント ジェームズ」でのライヴの時に、本人に書いていただいた本作のサイン入りジャケットを壁にかかげてDoodlin’は完成した。
ホレスがいないとジャズファンの僕はいない。もちろんDoodlin'という店もない。
2014年6月18日。ホレス シルバー逝去。ショックといえばショックだが、86という歳を考えると、やはり来るべき時が来たな、という感じだった。それよりここまで自分を貫いて本当のファンを裏切らなかったホレスの人生にただただ感謝だ。ジャズ界が誇る天才にして、ファッションリーダー、ホレス シルバーに会えて本当に良かった。ありがとう!!!!大好きだ!。
という訳であまりにも想う事の多いホレスだけに今は適切な言葉が思い浮かばない。何を言っても言葉足らずにないそうな気がして。
だからここはDoodlin'として、行動で感謝の意を表そうと思う。Doodlin'はホレスが亡くなった第1報が入った当日から3日間、まさにホレスの入ったレコードのみを流し、追悼を行った。しかしまだ足りない。
この木曜日はホレスが亡くなって49日目にあたる日だった。ホレスはアメリカ人だから四十九日と聞いても何も関係はない。しかしホレスを愛する僕にとってはこれも節目。
そこで明日8月10日の日曜日はもっと大々的にホレスを追悼する夜とします。この日は僕と一緒にメッセンジャーズのコンサートに行き、一緒にホレスの魅力のとりこになったジャズレコードコレクターの同級生に、普段聴く機会のない70年代のホレス作品やシルベルトの作品を大量に持参してもらい、恐らく朝までホレス一辺倒でお送りいたします。
70年代ホレスといえば nシリーズとか、とにかくヤバいですから。お近くの方はぜひ聴きに来てください。
遠い方は同じ夜に好きなホレスのレコードを流して共に感謝の気持ちを表そうではありませんか。






