ドレスアップ
自分たちだけかと思ったら、変な日本人が仲間に入ったので、ちょっと調子が狂ってるみたいです。
外国人という観念がまだないんでしょうか、一番下の John がしきりに話し掛けてきます。
幸い「犬好き?」「うん」「僕も!」てな他愛の無い会話ですので気楽です。
机から犬の写真を持って来ました。
デカイむく犬ですね。
「会いたい?」
ん?どういう事かな?「うん」
ニコッと笑うと階段を下りて行きました。
しばらくすると、奥さんの声に追い駆けられるように、途方も無く大きなモップの塊のような犬とJohn がもつれ合うように部屋に飛び込んできました。
私は犬に押し倒されて顔中レロレロ舐められてしまいました。
ひとしきり舐め終わると、大きな舌からヨダレをポタポタ落として、人に寄っかかって満足そうにしています。
「シャッグっていうの」
「名前?」
「そう」
Mike が「本当の名前は Bernard というんだ。シャッグは John が勝手に付けただけさ」と抗議しましたが、当の John は知らん顔。
試しに日本語で「オイ!」と呼んでもイソイソとやってくるので、犬にしてみれば名前なんて何でもいいのかも知れませんね。
耳の後ろを掻いてやると、グ~フと満足気。
この犬を洗うのは大仕事でしょうね。
John は兄たちに何か叱られていますが、知らん顔で犬の首を抱いています。
奥さんが首輪と紐を持って来ました。
John と私に挟まれて大人しい犬を見ると、ニコッとして「仲がいいのね、良かった!(Uh! Good friends. How good!)」
日本人が怖がるといけないので別の部屋に隔離されてたみたいです。
John が立ち上がると、犬の耳を引っ張って、止める間もなく部屋を出てゆきました。
向かいの部屋から絶叫が・・。
そりゃぁ、あんなのに急に飛び込んでこられたら驚きますよ。
声に追われるように John と犬がアタフタと帰ってきました。
この犬、図体がデカイ割りには気弱みたいです。
軽く首を撫でてやると、今度は手をベトベトにしてくれました。
バンダナが犬のヨダレでもうビチョビチョです。
他の子供達のところへあんまり行かないのは、普段邪険にされているのかな?
緊張が解けたのか、子供達が順繰りに何やかやを見せてくれだしました。
何処の国でも、子供は宝物をもってるんですねぇ。
一番上の Kim は如何にも賢そう。
彼が見せてくれたのは 石の矢じりのコレクション!
このあたりで「子供の頃」に集めたそうです。
へ~こんな物が見付かるのか!と感心していると、まんざらでもない様子で、おもむろに取り出したのは何か蹲った動物らしき物を彫った石。
「アキオロジーが好きなんだ」
アキオロジー??、辞書、辞書!
archeology=考古学?生まれて初めて見る単語ですね。
「食事の用意をしなさ~い!」としたから声が掛かると、子供達が着替えだしました。
「どうしたの?」
「夕食だから着替えるの!」
ヘェッ?1番チビもネクタイを締めています。
これは大変!慌ててバスルームで顔と手を洗って、ハンガーにかけて持ってきたスーツに着替え。
ダイニングに行くと大きなテーブルにご主人と奥さんがついています。
三人の学生は普段着で降りてきて仰天。
「何か知らないけれど、ちゃんとした服装をするみたい」と言うとアタフタと戻って着替えてきました。
その間ご主人と奥さんは何も目に入らなかったように平然としています。
John が隣に座れと言うから座ると、シャッグがちゃっかり椅子の間に寝そべって、おかげで私のズボンは犬の毛だらけ。
子供達と奥さんが立って行って料理を運んできました。
John がコーンをお皿に入れてくれました。
何も言わなくても、それぞれの役割が決まってるようです。
全員が席につくと、ご主人が厳粛な声でお祈りを唱えだしました。
日本人と犬以外は小声で一緒にお祈りを唱えています。
最期のアーメンだけ少し遅れて参加出来ました。
映画みたいですねぇ。
こういうのはアメリカでは経験しませんでした。
そして、ステーキ!
家庭で出てきたのは初めてです。
そういうと、他の学生は「一体何を食べていたの?」と不思議そうに聞きます。
三日に一回はステーキだったので、珍しくもなんとも無いんですって。
そう言えば私、何を食べていたんでしょうね?
「Pass me the salt, Please」
「Excuse my hand」などと上品な事。
いままでの腕まくりしてガヤガヤと食べていたのとは大違い。
ところが皆さんは、こういうのも何度か経験済みだそうです。
今日来たばかりなのに、早くもロジャーの家が恋しくなってきたぞ。
ダイニングのすぐ横にプールが有ります。
この季節に暖炉で電気ヒーターが点いていて、丁度良いくらいの気温ですから、きっと水は冷たいでしょうね。
一体いつ頃が水泳の季節なんでしょう?
「水は冷たいだろ?」と隣の Mike に訊いたら、何を勘違いしたのか、お父さんに「食事が済んだら、一緒に泳いでも良いか」と訊いてます。
「違う違う!」と言おうとしたら「1時間だけ」とお許しが出てしまった。
温水だと良いけど、まさかねぇ。
すぐに入ろうと騒ぐのをお母さんが「駄目!」
テーブルの片付け、食器洗いのお手伝い、子供の仕事が決まってるんですね。
聞き慣れた自動車の音がしたと思うと、金髪の娘さんがやって来ました。
Sue といって、ブリティッシュ・コロンビア大学で日本語を勉強してるんですって。
「VW に乗ってるの?」
「よく判ったわね?」
「友達が乗ってるんです。たまには運転させてもらうけど良い車ですね」
「そう、私大好きなの。友達はウルサイって言うけどね」
子供達とは顔見知りらしくて「一緒に泳ごう!」と誘われています。
奥さんが水着を出してきました。
仕方が無いので私も着替えて、足の先を水につけると、オヤ?思ったほど冷たくも無い。
昼間の日光で温まっているのかな?
ピチャピチャと水を掛かると、濡れた肌に風が冷たい。
いっそ水の中の方がましかと、ドボンと入ったら腰くらいまでしか深さが無い。
冷たくなかったのは上の方だけ。
これは氷水ですよ!
子供達は歓声を上げて飛び込んでるけど、寒くないのかなぁ。
Sue も水に入って気持ち良さそうに泳ぎ出しました。
あまり大きくないから、泳ぐと言っても、縁を思いっきり蹴ると、それだけで反対側に行き着いてしまうんです。
皆で水を掛け合っていると、シャッグがバッシャ~ンとプールに入ってきた!
中々器用に泳ぎます。
「もう上がりなさい」と声が掛かると人も犬も一斉に水から上がりました。
しつけが良く出来ていますね。
バスタオルを渡されて、犬を拭くのが大仕事。
いくら拭いても、ブルブルとすると水が飛び散るんです。
なんとか、水気を取ってやると、スタスタと暖炉の前に行って。敷物みたいに寝そべりました。
Sue はかなり日本語が話せます。
少なくとも私の英語とでは、較べるのも失礼なくらい。
7人で英語と日本語ゴッタ混ぜのお話をしていると、お呼びが掛かりました。
私もどちらかというと、犬や子供と遊んでる方が楽しいんですよ。
夜もふけて、お休みなさい。
エッ、何で犬が先に立って階段を上がって行くんですか?
John のベッドの横がシャッグの定位置なんですって!
John は Chris に頼んでベッドと交替してもらって、寝袋で寝る事に。
そして John は私と並んで寝るんだそうです。
と言う事は、私の隣では犬がフガフガいいながら寝るんですか?
案の定、犬が間に割り込んできました。
変な夢を見るのと違うかなぁ・・。
2003/05/24:初出
2022/05/17:再録
41-Canada-03-U.S.A.1964-No.41(7/30)へ
U.S.A.64-menuへ
トムが25¢渡すと同心円の的を描いた厚紙を6枚くれました。
双眼鏡で覗くと、ホ~ッ見事に丸に命中してますね。
Montery の少し南の Carmel の海岸でもう一度海を眺めて、潮風を心ゆくまで楽しみました。
看板はあるものの、こんなガソリンタンクが道端にポンと置いてあるだけ。
そう言えば、昨日別れ際に「明日は魚採りに行こう」と言ってましたね。
そこで、網を振りかざして海の中に入って、網を逆さまに砂に立てて頑張ってると、波が引くときに魚が入るんだそうです。