ライフル初撃ち
昼前に家に帰るとシーンとしています。
ありゃ?誰も居ないのかなぁ?とコラリアの部屋をノックしたら、「お昼ご飯出来た?」と眠そうな声。
どういう事です?「用意が出来たら呼んでね!」という意味かな?
あのまんまもう一度眠ったらしい。
夕べというか今朝というか、眠ったのが遅かったから、無理も無いか。
それではと、トムと交代でシャワーで塩気を流して、いざ昼食作り。
冷蔵庫を探索するとベーコンの塊を発見。
薄~く切って、弱火でカリカリにして、出た油でスクランブル・エッグを作ってと。
その間にトムはミックスパウダーを溶いて、ワッフル型に流してオーブンに入れてパン屋さん。
オーブンの扉は手で抑えているか、椅子で抑えておかないと、パックンと開いて、折角ふくらんでるのがプシューとしぼんで、団子みたいなワッフルが出来るので要注意。
なんだか知らない菜っ葉を適当に千切って、オリーブを薄切りにしてパラパラ。
トマトを切って適当に飾って、オリーブ油とビネガーをタラリ、塩パラパラ、胡椒をガリガリ。
ついでにフライド・ガーリックもパラパラ。
オーブンの扉を膝で押さえながら、トムがキャンタロープ・メロンをサイの目に切ってボールへ。
「出来たよ!」と呼びに行くと、又もや人を挑発して、興奮させるような格好で出てきた。
「トムも居るよ」と言うと「Wiee!」と叫んで素っ飛んで部屋に逆戻り。
こんどは表にも出れる格好で再登場。
ど~言う事ですか?私を一体どういう位置に置いてるんでしょう?
「ワッ、ステキ!あなたたちって、きっと良い旦那さんになれるわよ!」
結構エラソウな口を利きますね、トムも私も貴女より2つも年上なんですけどね。
それはいいとして、コーヒーを入れてなかった。
マメを10数粒取り出して小さなフライパンで空炒り。
カッティング・ボードの上に置いて、麺棒でガンと潰して、ヤカンに入れて水を入れてコンロにかけて一丁上がり。
これは何処風の入れ方か知らないけれど、このウチで習った。
麦茶みたいな薄いコーヒーで結構お気に入りです。
お腹がふくれると、平和な気持になりますね。
「跡片付けはまかして!」とコラリアがいうので、ありがたくトムと射撃場へ出発。
2、30分ほど走って着いたのは、自転車置き場みたいな屋根があるだけの、200Mほど向うに高い土手がある広っぱ。
誰も居ないのかと思ったら、バスの残骸のオフィスに、でっぷりしたオジサンが座り込んでラジオを聞いてます。
トムが25¢渡すと同心円の的を描いた厚紙を6枚くれました。
ウイークディの昼間は半額だそうです。
A4くらいの紙に、縦に4個の同心円が3列並んでいて、真中の列の中二コは太い線で楕円に囲って有ります。
これは照準合わせに使うのかな?
小さな的ですね、こんなのが見えるのかしら?と心配していると、一番端っこの一角は土手が直ぐ近くに有ります。
太めの鉄筋みたいな支柱に取り付けられた、額縁のような枠に的の厚紙をを固定して、準備完了。
たかだか、15、6Mくらいの距離です。
何や!こんな近くで撃つのか、それにしても的が小さすぎませんか?
VW から毛布とライフルを2丁運んできて、先ずは組み立て。
簡単に組み立てられるんですね!
何処かから私の分を借りてきてくれたのかと思ったら、2丁有るんですって。
トムが使うのは元お父さんの銃で、私に貸してくれるのがトムのだそうです。
親子で射撃に来ていたので、全部二揃い有るのだそうです。
Remington 40X という単発の競技用。
小型のレンガ位の木のブロックにドリルで穴を沢山開けたものが弾差し。
真中に四角いくぼみがあって、その両側に20コずつ穴が開いています。
箱から出した弾を並べて差します。
ちっちゃな弾ですね、直径が5mmくらい。
「こんな物で一体何を撃つ気?」
「紙の的だけさ。生き物を撃ちたいとは思わないなぁ。」
トムはまず大丈夫でしょうが、何かの拍子で生き物を撃ちたくなる奴が居るかも知れません。
いくらちっちゃな弾でも「痛テッ!」ではすまないと思います。
トムが先ずお手本を見せてくれます。
寝転がって、脚を開いて、ワッ!合図も何も無しで発射したらびっくりしますよ!
予想していなかった音がしますね。
バァン、とかドキュ~ンというのかと思ったら、ヴァシッと言う風な音です。
双眼鏡で覗くと、ホ~ッ見事に丸に命中してますね。
トムに双眼鏡を渡すと、しばらく見ていて、照準のところをカチカチと調整してます。
ちゃんと命中しているのに何で調整するんでしょう。
丸に当たっただけではなくて、ど真ん中に命中しないと駄目なんだそうです。
1番中心の円は鉛筆の直径くらいしかありません。
ニ発目、左の一番上、今度ど真ん中に命中。
一呼吸置いて三発目左の二番目、一寸右上、それでも円の中。
火薬の匂いというのは割合に良い匂いですね。
一息入れて操作を教えてもらって、さてやってみるか!
針の穴みたいな所から覗いたけれど、はて、的は何処にあるのか?
やっと的を見つけたのは良いけれど、アレレ、何だか銃口がフラフラして照準が定まりません。
いったん立ち上がって、体勢を整えて、よし今度はマシかな?
中々引き金が落とせません、息を止めていると苦しくなってきた・・。
深呼吸して、慎重に狙って、グワン!側で聞いていたときより凄い音です。
トムを見ると「Missed the mark・・」
「え?」
「弾痕無し(No mark on the target)」
何?紙にも当たってないんですか?
徹底的に外れ?これは空気銃とは全然違うなぁ。
ビビッりながら引き金引いて、落ちる瞬間に思わず目をつぶってしまうのがイカンのですね。
やっと4発目で紙に当たった。
トムは自分の的に戻って、撃ち出しました。
横から的を眺めたら、凄いなぁ、全部ほぼ真中に当たってる。
よーし、とやったら、真中は外したものの、残り6発はともかく丸に当てる事が出来た。
的紙を交換。
二時間半ほどで24発入りの箱を3箱空にして終了。
的を片付けてcartridge(薬莢)を拾い集めて、全部自分でするんですね。
それから銃の掃除が結構時間が掛かるのかと思ったら、この弾に使ってある火薬は腐食性が無いんだそうで、2,3ヶ月に一回掃除すれば良いそうです。(多分そういっていたんだと思います)
「しかし、こんな人気(ヒトケ)の無い射撃場であのオジサン良く生活できるなぁ?」
と思ったら、ライフル・アソシエーションというのが有って、そこが雇ってるんですって。
そうでしょうね。
半日の間、我々しか居ませんでしたから、売上げ25¢。
バスに1回乗ったらお終いですよ。
休日や夜は何と機関銃を撃ちに来る人も有るんだそうです。
的も我々が使ったのは1番安物。
Plywood(ベニヤ)のは何倍もするそうです。
移動する標的を使うと料金はグンと高くなるんですって。
移動する標的?てどんなのでしょうか?
会員じゃないとこの施設(?)は使えないそうです。
トムはお父さんが会員だったので、10才の時からライフルを撃ってるんですて。
男の子への、クリスマスプレゼントの定番らしいんですが、物騒ですね。
ちなみに、空気銃は丸っきりオモチャ扱い、何の許可も規制も無いそうです。
連発式の空気銃もあるらしいですね。
「そんなのを子供に持たせたら危ないなぁ」と言ったら、廻りの大人がちゃんと扱い方を教えるから、滅多に事故はないそうです。
「子供の頃から扱いに慣れさせておく方が安全だ」というんです。
けど、やっぱり間違いとか、物の弾みというのがあるからね、危ないような気がするなぁ。
持ってないのが一番安全だと思いますよ。
それはそうと、「初めてにしては立派!」と誉めてくれたけど、少し不本意ですね。
寝て肘をついてアレですから、立って撃ったら何処に弾が飛んでゆくやら。
「初めて撃って紙にあてれば大したものさ。何回かやれば、直ぐにもっと当たるようになるよ。又来ようね」
たしかに夜店の射的よりは面白いなぁ。
けど、物騒な国ですね。
2003/05/13:初出
2022/05/15:再録