決戦の暇であと3日。姉弟はまだ芦ノ湖にいた。


修行修行言っていたが、特につらいことをするでもなかった。遊んでるようにも思えた。
心配になったが猿飛は
「コレでいいんだ。」
としか言わなかった。


明日には東京に帰る彼らに、猿飛は最後の言葉を投げかけていた。

「いままで服部も黙っていただろうけど・・・」

猿飛はいままでになく思い表情で話し始めた。

「お前らはあの王と同じ星の生物だ。」
「え・・・?」

猿飛はココから先は何も聞かずに最後まで聞けと彼らに言った。

「アレは10年ほど前のことだった。この星は今のように戦争も何もない、平和な時代にさしかかった時期にあたる。
地球が平和平和と言っているが、宇宙のはるか彼方ではまだまだ争いの絶えない場所があちらこちらにあった。
地球の中でも最強と歌われていたオレと服部は他の仲間と一緒に、そのはるか彼方の争いをなんとかしようと地球を飛び出した。
が、他の星の文明は地球をも圧倒する文明で栄えていた。それと同時に、地球とはレベルの違う争いも行われていた・・・」

夏と入ってもここは山中。寒い夜空に焚き火を囲む3人。体を震わせながら、話を続けた。

「そして”マラード星”。つまりあの王やお前らの故郷の星に着いた。そこでも他の星を巻き込んだ戦争は繰り広げられていたが、とてもじゃないけど俺らには止められなかった!
あきらめようと、その星から離れようとしたとき。二人の子供にあった。そう、お前ら姉弟だ。」

姉弟は体の震えがとまった。猿飛の話を集中しながら、かみしめながら聞いている。

「オレはお前らを助けようとした!乗ってきた宇宙船に二人を抱えて乗り込もうとした瞬間、あの王がやってきた!
『お前は何をやっている・・・?』王は問いかけてきた。オレはとっさに地球からの戦争見物と答えた。自分の語彙の少なさには泣きそうになったよ・・・
それで殺される!と思った瞬間、王は『ほう・・・私はこの星の者だけを滅ぼすんだ。邪魔だから早く消えてくれ。』と言って来た。助かった!と思うと同時に、将来的に地球が目をつけられるのを恐れていた。
あそこで地球の名をださなければ・・・と思ったが、そうするとお前らはここに存在しなかったかもしれないからな。まぁ実際もう地球に来ちまったからな。はい話終了。」

「私たちがその王と同じマラード星人ってのが信じられない・・・」

チカは言った。

「うーんそうだな・・・じゃあ周りの友達と自分が違う点があるとは思わなかった?」
「うーん・・・あ、ある!私たちは全く瞬きをしない!」

そう!彼らは全く瞬きをしないのだ!夏場は特に目が乾燥しきってしまい、常に目薬をさしていないと外にも出られないほど!

「瞬きをしないのは、マラード星がとても湿度が高いからだ。そこで先祖マラード星人は瞬きという運動を捨てることができたんだろう。いやもともと無かったかもしれないな。」


そうこうしている間に夜が明けてきた・・・決戦の刻は刻一刻と近づいてい
芦ノ湖を出発してからはや1日半、姉弟は東京まで戻っていた。
たった小学5年生の少年と中学2年生の少女が、なぜこんなにあるのかはわからない。が、彼らが小さい頃から体力はものすごくあったという。

そして園長から猿飛のクナイと、また食費や水分補給のためのお金を貰いそそくさとひまわり園をあとにした・・・いところだったが、さすがの彼らも子供。ひまわり園で仮眠をとることに・・・

「う・・・足が・・・」
「大丈夫トシ?」

1日半走りっぱなしで足はもはや使い物にならないほど乳酸に埋め尽くされていたのだ。トシも心配するチカも。


仮眠を終え、ひまわり園をあとにした姉弟。タイムリミットまであと丸1日。

彼らは死力を尽くした!まさに怪獣に追われ、火事場のバカ力によってすばらしいスピードを出していたのだ!
「コレなら時間までに芦ノ湖に・・・」そう思った矢先であった。


「グッ・・・」
トシが転倒!足は想像以上に疲れを蓄え、さらに筋肉は張りっぱなし、そしていままでこれほどの長距離を走ったことがないのが原因と思われる初心者病”シンスプリント”!!それらが重なり合い、まさにトシの足はハムのような状態に陥っていた!!
絶体絶命の大ピンチ!時間はあと1時間15分!

しかし、猿飛ルールでは「どちらか一人でも帰ってくること」だ。そのことを思い出したトシはチカに、先に行くように言った。
しかしチカは
「アンタを置いていくわけないじゃない・・・さ、肩につかまって」
地球は絶体絶命の危機に陥っているのにこの姉弟愛!人間のものとは思われぬほどのクールな心でチカは肩にトシを抱え、一緒にゴールを目指した。


芦ノ湖の猿飛の小屋では、猿飛が今か今かと待ち望んでいた。
霧が視界を阻んでいる。しかし、その前方には二人の子供の姿が!

「せーの、ゴール!!」二人は声を合わした。
しかし猿飛は苦い表情を浮かべていた。

「約3時間半オーバー・・・」
「・・・」

地球の未来はなくなった・・・と思いきや・・・

「合格!!」
「え・・・?」

希望の光が見えてきた。

「どちらか一人でも帰ってくることが出来たらと言ったが、どんなに早くても二人で帰ってこなければ不合格にするつもりだった。逆に言えば、どんなに遅くても二人で帰ってくれば合格にするつもりだった。」
「と、いうことは・・・」
「これから修行がんばろう!」
「やったーーー!!」


猿飛との修行が始まった・・・が・・・?
姉弟は"猿飛"さんを探していた。

そして3日後・・・芦ノ湖から見える山という山を探し回り、小屋のような、否小屋とも呼べないようなひどいものがあった。
そしてその中には人が!

「えと・・・、アナタが猿飛さん?」
「いかにも」

猿飛さんであった!
姉弟は最初の修行をクリアしたのである!

「と、言いたいところだが。」
「?」

猿飛は人の心を読む能力がある。

「3日で見つかったのはなかなかの速さだな。そうかお前の能力だな。人の気を察知できる能力があるんだな。」
ポンとトシの頭のなでた。


「じゃ、さっそく修行に入ろうよ!」
「いやそういうわけにはいかん。お前ら芦ノ湖までどうやってきた?」
「え・・・電車だけど・・・」
「ハァー・・・お前らそれで"王"に勝とうとしてるの?」
「え?」
「だってあれだろ?そのアスタリスクなんとかとかいうやつを使ってで電車乗り回してたんだろ?そんな怠けた態度でアイツが倒せるとでも?」
「いや、たしかに電車は乗っていたけど。このアスタリスクウォッチは絶対に使わない!電車賃は園長先生から貰ったんだ!」

トシは思わず発狂した。

「なぜだ?それを使えばなんでも・・・」
「違う!そりゃなんでも手に入るかもしれない!でも!あいつらの言いなりになるなんて絶対に!いやなんだ!」

猿飛はこの齢10の男の子の言葉に心を打たれた。


「なるほど・・・それほどの強い心の持ち主ならもしかしたら王を倒せるかも知れんな。」
「・・・、じゃあ修行してよ」
「うーん、そうだなぁ・・・じゃあ走って東京のひまわり園を往復して戻って来い!」
「えぇええええええ!?」
「そんな驚くこともないじゃないか。箱根駅伝と大体同じ距離だって。まぁ今回は大甘でどちらか一人でも3日以内に帰ってこれたら修行をつけてやるよ。」
「えぇええええええ!?」
「まぁお前らのことだ、途中で帰ってきたりするかもしれん。だから服部・・・お前らの園長に渡してある俺のクナイを持ってきてくれ。」
「・・・やらなきゃだめ?」
「まぁやらなかったら王を倒すどころか触れること、いや近づくことも出来ないだろうな」
「・・・わかった」


姉弟は今、スタートラインに立った。