部長は、今も止めることなく、スタンドの力を放ち続け
キノコ化の波動を受け止め続けている
大粒の汗が、部長の顔をつたう
凄まじい気力を使っているのであろう
いっさい 声をかけることをさせないほどの集中だ
たまねぎさんは、なんさんから カナリヤの鳥かごとホウキを受け取る
ミコシさんは、凄い速さで九字を切り始めた
「臨・兵・闘・者・皆・・・・」
なんさんは、ゆっくりと深く大きな息をはくと
呪文を詠唱しはじめた
すると
なんさんの体のシルエットが蜃気楼のように
2重に
3重に
4重に
ぶれたかと思うと
「魔法 分身!」
と叫ぶとともに なんさんの体から、四人のなんさんが現れ
なんさんを囲んだ
「おおおおっ!!」
す、すっごい!
リアルなんさんを合わせた、5人のなんさんは、同時にさらなる呪文を唱え始めた
ミコシさんの術が先に完成する
ミコシさんの指から、神通力の墨の軌跡が噴きだし
凄まじい速さで、なにか巨大な形を描きだす
「冥諧画術!」
「睥睨せよ!滅殺の極み! 御死子(おしし)!!」
ミコシさんの描きだしたものは
指先からどんどんと、姿を形作り
突如
発現した
それは
巨大な
とてつもなく巨大な
白い虎であった

それと同時に、なんさんの呪文も完成する
たまねぎさんが、タイミングを取り
叫ぶ
「じゃあ、いくよ!」
「よおーい!」
「ドン!!」
なんさんが、魔力を放つ
「次元転移! 反物質 発射!!」
リアルなんさんの指先から、見えない何かが天井に向けて発射された
約1秒後
ズドォォォォォーーーーーーーーン!!
この世の終わりか?と思えるほどの
轟音が轟いたあと
M王武道館の天井に ぽっかりと穴が開いた
何かが爆発したのは、わかったが・・・
爆発の威力が凄すぎて、砕けた破片は、粉みじんになるまで空中で分解されてしまい
その下にいたキノコ人間達に降りそそぐことさえなかった
反物質・・・
たしか・・・
ソフトボールで1個分ほどの ソレが、この世に生成された場合
地球1個まるごと ふっとぶ!・・・という
アレか?
こわい・・・なんさん こわすぎるう
凄まじすぎる 戦闘開始の号砲に
一万人のキノコ人間は、完全に出鼻をくじかれ ビタリと止まる
そこをねらって
ミコシさんが叫ぶ
「ゆけっ!御死子!!けちらせ!!」
「ガウオオオオオオオオオ!!」
強大な白い虎は、耳をつんざくほどの雄たけびをあげ
キノコの海めがけて 飛び込んだ
「ガアアアアア!!」
御死子が前足を一振りするだけで
キノコ人間が数十人ふきとぶ
あっという間に
キノコの海を
紅海を割って歩いて渡ったという、モーゼのように
ミコシさんの御死子が駆け抜けていく
なんさんの威嚇と
ミコシさんの突撃により
一万人のキノコ軍団は、いっきにその戦意を消失させた
だが、魔法戦隊「なん’s」は止まらない
分身の四人のなんさんが
さらにダメ押しの魔法をとなえた
「竜巻!」
「プロミネンス!」
「ショックウェーブ!」
「絶対零度!」
それぞれのなんさんが
それぞれの魔力を放出する
建物内に いきなり巨大な竜巻があらわれ
数百人のキノコの一団を、まるごと空にまいあげる
地面から真っ赤な火柱がたちのぼり、その熱波でキノコたちは、ちりじりに逃げ惑う
天井には、にわかに黒い雲が湧きおこり
何本もの稲妻がふりそそぐ
稲妻が着弾した地面のそばにいたキノコ達は、黒焦げになってバタバタと倒れていく
さらにその雲から 巨大な氷の塊が
何百、何千と降り注ぐ
ホール内のキノコ人間は
惨憺たるありさまで
倒れ、もがき、逃げ惑う
「な・・・なんという・・・」
味方ながら、恐ろしすぎる攻撃に
ボクチンは、おさえきれず
チョロっと
ちびりながら・・・
つづく